ランボルギーニがつくり出すクルマはすべて、ミッドシップエンジンのスーパーカーというわけではありません。

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 ですが、その印象を強く訴え、それを顧客の脳裏に刷り込むことは、ブランドを定義づける上でとても大切なこととなります。

 1971年に発表された、初の2人乗りミッドシップエンジン車である「ランボルギーニ・カウンタック」は、くさび形のデザインでランボルギーニらしさに溢れていました。では、家族で乗れる背の高いSUVはどうでしょう? いかにデザインを思考錯誤したといても…ランボルギーニらしいSUVなんてできるのでしょうか? でも、実際にランボルギーニはそれをやってのけたのです。

 ――ランボルギーニのデザインチーム「Centro Stile」を率いる43歳のドイツ人デザイナーMitja Borkert(ミィティア・ボルケルト)氏により、ランボルギーニ初のSUV「ウルス」 をデザインしたのでした。そして現在、世界から注目を集めているのです。 

 そこで私たちは、アメリカのデトロイトで行われたモーターショーへと向かいました。そして、彼のその素晴らしい仕事ぶりをのぞくことができたのです!

>>>ランボルギーニ初のSUV「ウルス」、そのデザイナーの思考を知るにはこちらへ!

「ウルス」のデザインソース 01

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上は1976年のマルチェロ・ガンディーニ氏のプロトタイプスケッチ。下は「カウンタック」をベースにボルケルト氏が描いた「ウルス」のスケッチの1つ。LAMBORGHINI

 ボルケルト氏は、カロッツェリア・ベルトーネの元チーフデザイナーでスーパーカーブームの中でも主役の一台であったランボルギーニ「カウンタック」やWRCで大活躍したランチア「ストラトス」など多数のヒット作を生み出したつデザイナー、マルチェロ・ガンディーニ氏のデザインを意識しながら「ウルス」をデザインしました。

 なかでもガンディーニ氏が、1971年ごろにデザインに着手し始めた「カウンタック」のデザインに対しボルケルト氏は敬意を表しながら、この「ウルス」のデザインをスケッチ。そして、哲学さえも設計に落とし込んでいます。 

 その仕上がりを見れば、ボルケルト氏がランボルギーニの初期の歴史だけに固執したのではなく、1960年代から1970年代にかけてのイタリアで流行っていたデザインの潮流に関しても参考にしていることがわかります。

「ウルス」のデザインソース 02

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「ランボルギーニは、究極のデザインバランスを好みます。いまでは誰もが知っている「カウンタック」も…。それはいまだに宇宙船のようなイメージをもたれるのではないでしょか。その宇宙船のような外見こそが、ランボルギーニにとって大切にしているイメージなのです」と、ボルケルト氏は語っています。

「ウルス」のデザインソース 03

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「カウンタック」、特に初期の「LP400 "Periscopico"」バージョンをご覧になれば、その車高の低さと幅の広さに思わず戸惑ってしますことでしょう。そこには、想像を絶するほど最高の技術で作り上げたドアストップが存在しています。

 ボルケルト氏とともに彼のチームは、この仕組みを「ウルス」でも再現しようとしていたと言っています。さらには、「高さ5フィート4インチ(162.5cm)以下、車幅6.5フィート(198cm)以上という、SUV市場でも画期的なスペックに仕上げることができたことに関しても誇りに思っている」とも語っています。

「ウルス」のデザインソース 04

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 他にも、「カウンタック」からインスピレーションを得た部分は多く、「ウルス」における様々なカ所からそれを見つけ出すことができるでしょう。

 たとえば、「ウルス」の最も議論が必要になるであろうリアフェンダー部分は、「カウンタック」の崩れたような台形のリアホイールアーチからインスピレーションを受けています。 

 そのリアフェンダーは、「ウルス」のドアを横切るような六角形のキャラクターラインを作り出すのに役立ち、「カウンタック」ドアの形に似せています。

「ウルス」のデザインソース 05

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 ランボルギーニの最新型SUV「ウルス」。同社によって初のSUVである「LM002」とは、いくつかの類似点があります。そして、それは意図的なものでした。

「ウルス」のデザインソース 06

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「私が若いデザイナーだったとき、『LM002』には本当に感銘を受けました。それは、圧倒的に他のクルマと一線を画していたからです」と、ボルケルト氏は加えて語ってくれました。

「ウルス」のデザインソース 07

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VIA LAMBOCARS.COM

「ウルス」のフロントフードとホイールアーチの両方は、ゴツゴツとした「LM002」に影響を受けています。ですが、スポーティな意図を反映し、よりダイナミックに再構築したそうです。

 悲しいかな「ウルス」では機能していないフロントフェンダーの三角形の通気口も、「LM002」から影響を受けたものです。

「ウルス」のデザインソース 08

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「ウルス」の内部には、「LM002」における別の共通点もあります。

 ボルケルト氏と彼のチームは、「LM002」の上昇するセンターコンソールを「ウルス」の中にアルミニウム製の羽で再現しました。これでドライバーはまるでパイロットになったかのような気分に。男心をくすぐる心憎い仕様が設けられています。

「ランボルギーニを運転するとき、ドライバーはマシンの一部となるべきなのです。クルマとの見事な一体感を全身で味わうことこそ、ランボルギーニのオーナーの特権なのです」と、ボルケルトは語ります。

「ウルス」のデザインソース 09

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「ウルス」の設計においてデザインチームが参考にしたのは、「カウンタック」と「LM002」の細かいディテールだけではありませんでした。ボルケルト氏には、インスピレーションを受けるさまざまなデザインや手がかりが他にもあったとのこと。

「小さくて些細なこと、つまりディテールにこだわることこそ重要だと考えています。たとえば『カウンタック』から始まり、『ウラッコ』にもあるフロントボンネットおよびリアボンネットにあるダイヤゴナルラインもそうです。そういうディテールに対するデザインのこだわりから、私たちはインスピレーションを受け取るのです。あなたが『ウルス』を間近で見たなら、きっと、もっとその背景が明確に理解できるはずです」とのことです。

「ウルス」のデザインソース 10

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「ウルス」の内部には「LM002」にはない、ヘキサゴン(六角形)を基調としたデザインタッチも施されています。

 このデザインは「ミウラ」で最初に表現され、続いて1967年に発表された「Marzal(マルツァル)で壮大なコンセプトとともに登場し、多くのファンを熱狂させました。いまとなっては、ランボルギー二を象徴するデザインの一部となっています。

 ヘキサゴン(六角形)のデザインモチーフに関連するものとして、現代のランボルギーニのほぼすべてに言えることが、Y(イプシロン)シェイプで仕上げられていることです。すべてのデザインが、鋭いエッジで構成されているように感じることでしょう。

「ウルス」で言うなら、ヘッドライトとテールライトが最も顕著な例となります。今日の「Aventador(アヴェンタドール)」とHuracan(ウラカン)にも「ウルス」同様、そのデザイン性を垣間見ることができます。

「ウルス」のデザインソース 11

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「私から言わせていただくことができるなら…、このクルマがあなたにとって必要なクルマである理由は、とてもシンプルです」とボルケルト氏は言います。

「すべてのプロダクツというものは、外見に予期せぬ新たなデザイン性を求めるものです。が…ランボルギーニの場合は違います。ランボルギーニでは常時、ランボルギーニの言語で綴らているかが問題になります…」と、加えて語ってくれたボルケルト氏でした。

 デトロイトのモーターショーで世に公開された『ウルス』ですが、ここで『ウルス』に対してランボルギー二らしくない第一印象をもった方も少なくなかったかと思います。

 ですが、そんな彼らも(筆者である私も含めて)次第に、この『ウルス』がランボルギーニ語で会話していることに気づいていったのです。「これは大げさな言い方かもしれませんが…」と私(筆者)はボルケルト氏に付け加えると、彼は頷いて微笑んでくれたのでした。

「ウルス」のデザインソース 12

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「ウルス」は、1971年に「カウンタック」が登場したときと同じくらい革命的にはなれません…が、これまでのクルマが確立したきた理想の集大成となる車であることは確かでしょう。 

 そしてその意味からも、「ウルス」の誕生はまさに現代の「ランボルギーニの誕生」そのものと言えるのです。


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from Road and Track(原文:English)
BY CHRIS PERKINS JAN 20, 2018
Photograph / LAMBORGHINI
Translation / Mirei Uchihori
※この翻訳は抄訳です。
Edit / Kaz Ogawa, Mirei Uchihori