これから、豚肉の価格上昇の可能性についてお話ししましょう。

 しかし、ちょっと唐突かと思われるかもしれません…。ですが、その裏には…他でもない「気候変動」が要因となっているのです。なので、皆さんにも注目してほしいという思いを込めて。

 暖かい場所で育ったホットな豚は脂肪も少なく、幸せな豚とは言えません。人が食して満足のいく食豚にはならないのです。

 オンラインメディア「Scientific American」の記事によれば、「気温上昇が原因で、豚の食欲が減退している」という現象が起こっていることを、科学者らが調査でこのたび明らかにしています。

 このところの気温上昇で、豚の体質が変化したようです。豚の体はたんぱく質をつくるかわりに、免疫能力を強化するようになってしまったとのこと。よって、豚に栄養の豊富な餌を与えたとしても、豚の体は食べたものを消化して筋肉へと変えるようとする働きは鈍り、人が美味しく食せるような肉には育たない…つまり豚は、現在、われわれの食生活に大きな影響を与えるほどの体質変容の傾向が見られるのです。

 さらに困ったことに気温上昇が要因で、豚の体質ばかりでなく、餌にまでも悪影響が出てきています。暑さ疲れした植物に含まれる養分は少なく、結果的にそれを餌にする豚は痩せて小振りになり、体内にたんぱく質を十分蓄積できない子豚になってでしまうのです。

 これは誰にとっても、高くつく問題になります。まず養豚農家は、「豚肉の量を維持するために育てる豚の数を増やすか?」の選択に迫られています。彼らは時間とお金をつぎ込んで、もっと肉づきのいい豚を育てるか、あるいはもっと涼しいシェルター(豚小屋)を作らなくてはならないのです。

 米国の豚肉産業は200億ドル規模(約2兆2800億円)と巨大ですから、気候温暖化に適応する必要があります。しかし、そのためにはどこかから資金を確保しなくてはなりません。

 そうして次は、私たちに影響がおよんでくるわけです。われわれが、そうして丁重に育てられた豚からのベーコンやポーク・テンダーロイン、ハムを食べ続けたいとするならば、その資金の出所は私たちの自身の財布になるわけですから。

暑さのせいで一番大きな被害となるのは、豚であった

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 アメリカで豚肉の生産量は、現在増加中です。なので当面、品不足を心配する必要はありません。

 ただ、この状態は持続可能なものではありません。「地球の温度がこのまま上がり続け、さらに、人々の健康志向が進み、より多くのたんぱく質を求める人たちも増えるでしょう。そうなると…」と、オンラインメディア「Scientific American」では報じています。

 養豚業者の集まりである全米豚肉協会では、この問題について監視を続けています。また、米農務省(USDA)でもこの問題に関する研究に資金を提供しています。豚だけが暑さに弱い家畜というわけではありませんが、暑さのせいでいちばん大きな被害となるのは豚です

 気候変動が途方もない問題であることを示す、あらゆる証拠が出そろっています。

 カリフォルニア州では2018年夏、大規模な山火事が相次いで発生しました。ハリケーンや台風が超大型し、おそろしいスーパーストームに化ける例も出ています。また、米大西洋岸を襲ったハリケーン「フローレンス」が降らせた大量の雨のせいで、ノースカロライナ州では豚の肥え溜(こえだめ=肥料にする糞尿をためておく所)が水浸しになり、そこから流出した汚水が周辺地域の水道に流れ込むという出来事もありました。

 こうした恐るべき脅威が現実に起こっているのです。もうそろそろ、われわれもその持ち前の生存本能をバッチリと目覚めさせないと、どんでもないことが待っているでしょう。その一例が「ベーコンが値上がりする」という話なのです。

 2018年は気候変動が実に激しい年です。それは自然災害のみならず、豚肉の価格変動にまで大きな影響をおよぼす可能性が大であるという事実を、われわれはしっかと噛みしめなければならない時期に来ているのだと思うのです。

Source / ESQUIRE US
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。