この「ビール醸造所」の歴史は、紀元前500年にさかのぼります。
考古学者たちが、2500年前の古代メソポタミアやバビロニア帝国の時代に遡るイラクの遺跡で、大昔のビールの痕跡を発見しました。
当時の文字は発酵飲料を表していると言います。が、『スミソニアン』誌によれば、この発見はビールの存在を示すものとして「最古の直接証拠」だとのこと。
そして、この痕跡を発見した考古学者たちは現在、人々がこの最古のビールの味を楽しめるよう、当時のレシピを再現したビールを作ろうとしているそうです。長~い年月を経て文明が衰退しても、ビールは美味しいものですから…。
今回の発見を発表したのは、考古学者のエルサ・ペルッチーニ氏率いる研究チーム。
同研究チームは、古代遺跡のビールの残留物を識別するために「ガスクロマトグラフィ」という手法を初めて利用しました。遺跡で見つかった残留物には、考古学者が発掘中に使っていた日焼け止めなどが混じってしまうこともありますが、この手法ではこのように混ざってしまったさまざまな物質も判別することができます。
これによって、土器の中からビールの大麦の残留物と発酵の痕跡が見つかったわけです。
ビール醸造の様子を映した動画はこちら
過去の研究では、4000年前のメソポタミアの醸造所の痕跡など、ビールの存在を示唆するものは見つかっていました。ですが、ペルッチーニ氏の発見した発酵大麦の化合物ほど決定的な痕跡はありませんでした。
当時の人々にとってビールが重要だった1つの理由は、発酵が大麦加工品を長持ちさせ、より多くの栄養成分をもたらしたからです。また、もう1つの理由は簡単です。当時も今も、ビールを飲むという行為は、この上なく楽しいことだったのです。
現在、ペルッチーニ氏と共同研究者のクラウディア・グラッツ氏は、この残留物の分析結果に一致するビールの醸造を行おうとしています。ただしこれまでのところ、その正確なレシピは見つかっておらず、研究チームは実験的に醸造したビールについても飲もうとはしていないそうです。
「ひどい匂いなんです」とM、ペルッチーニ氏は『スミソニアン』誌に語っています。
とはいえ醸造に成功すれば、現代のビール好きや歴史好きが、このビールを味わうために大金を支払うことでしょう。
というのも、古代エジプトの石棺に入っていたドロドロの水でさえ、「1万7000人以上の人が飲みたがった」というニュースもあるくらいですから…。そんなものを飲んだら、酔っ払うどころか死んでしまうでしょうに…。
今後も、世界最古のビールの再現プロジェクトを静かに見守っていきます。
From ESQUIRE US 原文(English)
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。