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特定の食品を禁じない!「つまらない食生活ほど健康的」なのか確かめてみよう
流行りのダイエット法に流されないことで、健康的な生活を手に入れました。
※本記事の筆者であるポール・キタ氏は、米国『メンズヘルス』誌の食と栄養を担当する編集者です。彼の新刊『A Man, A Pan, A Plan』には、健康的で簡単に、今すぐ作れる料理のレシピが数多く紹介されています。
私(筆者のキタ氏)がいつ、この決断に踏み切ったのかは思い出せませんが…当初はかなり軽い気持ちで踏み切った…ということだけは記憶しています。
高校~大学時代を通じて、私の体重はだいたいずっと65キロ前後。言ってみれば痩せ型でした。プリングルスのBBQ(バーべキュー)味や「Yoo! hoo(=米国で人気のワッフル菓子の銘柄)といった菓子をむさぼり、Keystoneライト(ビールの銘柄=キーストーン)を何本も胃に流し込むような暴飲暴食をしていたにも関わらず、あのころはまだ、活火山のように若々しかった肉体が活発な新陳代謝ですべてを燃やし尽くしてくれていたようです。
しかし、大学卒業後になって体の脂肪燃焼能力が衰えはじめると、メンテナンスが必要になってきました。「おまえ、膨張してない?」と、周囲から言われるようになってしまったのです。
それはちょうど、「パレオダイエット」が話題になり始めたころでした。チーズやオートミール、ピーナッツバターを欠いた食生活など私には想像もできず、やってみようとは思えませんでした。それに、たしか原始人は寿命も短く、病原菌だらけの人生をおくっていたのではなかったのでしたっけ?
また、「アトキンス・ダイエット」も流行りはじめていました。それから、「サウスビーチダイエット」も現れました。ヨーク公爵夫人(セーラ・マーガレット・ファーガソン)は喧(やかま)しくウェイトウォッチャーの宣伝をしていましたが、あれは何だったんでしょうか…金欠ですか? そんなあれこれに乗っかった人々の姿は「ダイエットに取り組む」のではなく、「ダイエットについて話すのが好きなだけ」というふうに私の目には映りました。
From Men's Health
BY PAUL KITA
NOV 2, 2018
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。
Edit / Lumiere SATO, Kaz OGAWA
「ダイエット(diet)」の潜在的な意味を考察
「ダイエット(diet)」という単語の中に、「ダイ(die)=死という一語が潜んでいるのは偶然ではない」と、私(筆者キタ氏)は考えています。ダイエット開始から3週間も経てば、パンツのサイズが変わろうが変わるまいが関係なく、チーズやオートミール、ピーナッツバターなどが恋しくなって、まさに死にたい気分にさせられるのですから…。
加えて、私自身の発見を述べさせてもらえば、それらのダイエット法はどれも短期的な効果しか期待ができないものばかりなのです。
25種類の減量プログラムを対象におこなわれた2017年の調査によれば、「商業主義的な減量プログラムに取り組む人々の多くが、謳われている結果が出るよりも前に、それらのプログラムを継続することに困難に覚える」という、私の所感とまさに一致する結果が出ています。私も減量の研究者になれば良かったかもしれません。
ということで、私は別の方法を探すことにしました。当『メンズヘルス』誌の編集者として取材してきた数々の栄養学や食、人体やダイエットなどの専門家や科学者たちから得てきた知見を改めてさらい直し、自分自身の食生活を独自に改善することにしたのです。その結果をご報告します。
食生活をどのように改善したか?
なによりもまず、本物の食材を摂ることを私は決意しました。単一の成分からなる食材を優先するのです。
チキン、ビーフ、サーモン、ロメインレタス、トマト、ピーナッツ、ミルク、ロブスター、卵、バター、アボカド、ブルーベリーなどなど、その理由はお分かりですよね。そういう私も、かつては「グアーガム(=グアー豆のいわゆる胚乳から得られる水溶性の天然多糖類。CAS登録番号は9000-30-0)」や、「カラギーナン(=直鎖含硫黄多糖類の一種の陰イオン性高分子化合物。CAS登録番号 9000-07-1)」など、奇妙な名前の化合物が混ざっている加工食品を喜んで食べていたのですから…。
しかし、今ではきっぱり、もう偽りのない食材だけを摂ることに決めたのです。このことが発端となり、次へと繋がっていったと言えるでしょう…。そして、特定の食材を悪者にしないことを決めました。
トレンディーなダイエットは、特定の食材や栄養素を悪魔のように忌み嫌います。低脂肪を目指すダイエットに取り組もうとすれば、「スナックウェルズ(Snackwell’s=減量用に売られる低カロリークッキー)」のようなモノを口に押し込まなければならなくなります。本物のクッキーに手を出すことを、神が禁じてしまうからです。
「ケトン体ダイエット」では、炭水化物はまるで道行く人に暴力をふるう悪党どものように嫌われます。デイヴ・アスプリー氏(Dave Asprey)の広めている「バレットプルーフ・ダイエット」など試そうと思った日には、コーヒーなど特定のブランドのもの一種類しか買うことを許されなくなってしまうのです。
そのアスプリー氏が読んだという、1832年に書かれたとされる文献にはこう書かれていたそうです。「商用に一般流通するコーヒーに含まれている『マイコトキシン(カビの二次代謝産物として生産される特の総称)』は、あなたを半人半獣へと変身させてしますでしょう。そうして人類を滅亡へと導いていくのです」と…。なので、それをいま実践しているそうです。
「特定の食品を禁じない!」、毎食必ず果物と野菜を十分に食べ、飲酒とデザートを減らす
特定の食品を禁じてしまえば、それをむしろ食べたくなるのが人情というものです。例えば、「コットンキャンディー・ダイエット」なる新しいダイエット法が考案されたとします。コットンキャンディー、つまり綿菓子さえ口に入れなければ、その他はなにを食べても構いません。
さあ、いかがですか? 今すぐにでも、日本ならお祭りの屋台を巡って、あのふわっふわのあま~い砂糖菓子にかぶりつきたくなりませんか?
そんなわけで私はクッキーも食べますし、炭水化物も遠ざけません。マイコトキシンたっぷりのコーヒーでさえ積極的に飲んでいますが、人類はまだ滅亡などしていませんよ、デイヴ・アスプリーさん。
そして最後に行ったのが、「毎食必ず果物と野菜を充分に食べ、飲酒とデザートを減らす」ということです。
これは、さほど難しいことではありません。私は毎朝「クレメンタイン(=小型の柑橘類。マンダリンの一種)」を2個、もしくはバナナ、または焼きトマトを食べるようにしています。昼食にはミックス野菜のサラダを大量に、コールスローやよく熟れたジューシーな桃などと一緒に食べています。夕食はホウレンソウのソテー(オリーブオイル、ニンニクと一緒に中火でソテーし、塩コショウで完成)、ニンジンのサラダ、もしくは小さく角切りにしたサツマイモをローストし、その間にタンパク質のある一品を料理しています。
毎食30グラムのタンパク質(プロテイン)の摂取を心がけていますが、手のひらサイズのチキンや魚など、目分量で問題ありません。繊維質の豊富なケールや全粒粉、そのほか、あれこれと一緒に摂るようにしています。
夕食中もしくは夕食後に1杯のビール、それか食後のひと切れのパイかダークチョコレートといったシンプルなデザート、どちらかを選びます。体が甘いものを欲していなければ、紅茶を一杯。そうです、紅茶です。
最大のチャレンジ
バカンス…、ビュッフェに美味しそうな料理の並べられたパーティー。レッドロブスターの食べ放題のエビ。でも、ちょっと考えてみましょう?
物事の本質を見失わないようにするのです。健康的な食生活という長期的な取り組みに、オフシーズンがあっても良いのではないでしょうか!? 「Whole30(ホール30)」(記事『流行りの「Whole30」ダイエットで食べてよい10品』参照)のようなダイエット法は、実に厳密な目標設定や段階的プラン、もしくは「フェーズ」などと言ったものを食生活に求めるものです。
それらのダイエット法の厳しさは、時代とともに激しくなっていくようです。「食事制限の期間こそが、ダイエッターの内なる変化をもたらすのだ」と口やかましく言うのです。
私に言わせれば、そんなものは拷問と一緒です。なぜ、食の楽しみを奪われなければならないのでしょうか?
意識的な食生活によりもたらされた成功
大学卒業後には、一度80キロ近くを記録した体重。ですが、以降は70キロ前後という健康体重を維持しています。大きな病気にもなっていません。妻と子の相手をするのに必要なエネルギーも、常に充分にあります。そして私は、なにより幸せなのです。食べることも大好きです。
「これがダメ、あれがダメ」と言って周囲の人々をしらけさせたり、レストランのウエイターを困らせたりする必要はありません。健康食品を扱う専門店に通って、なんだか妙な気分にさせられる必要もありません。食事にはポイント(点数)など必要ありませんし、そのそも私は計算が苦手です。さらにデイヴ・アスプリー氏の売上に貢献する必要もないわけです。
そんな私ですが、罪悪感など全くありません。なによりも食べるのが大好きなんで…あ、これはもう言いましたっけ?
意識的な食生活から私が学んだいくつかのこと
「食とは喜びであるべきです」とは言っても、「今日はストレスまみれだったから駐車場の車の中で、5ドル分のピザを食べちゃうよ」というようなその場限りの喜びと混同してはいけません。「後悔のない食事こそが喜びである」と、私は伝えたいのです。
ウェイトウォッチャーのポイントをオーバーしてしまったとか、うっかり気づかずにパレオ式じゃないピーナッツバターを口に入れてしまったとか、寿司を食べるのにあのデイヴ・アスプリー氏が推す「ブレインオクタン・オイル」をかけるのを忘れてしまったとか…そんなことで自分を責める必要などないということです。
10年の間、意識的な食生活を続けた末に私が辿り着いた結論をここでお伝えしているのです。
あなたの取り組むダイエット法によって、高いストレスがもたらされたり、ただでさえ多忙な日常がさらに忙しさを増したりする…というのであれば、それは良い食生活とは言えません。カロリーや炭水化物、塩分の量などろミリ単位で量りながら生活しているのだとしたら、いずれ頭がおかしくなり、食べることの喜びも忘れ去り、体重のアップとダウンの狭間で流行のダイエット法にお金を吸い取られながら、人生の負のスパイラルに落ち込んでいくことになるに違いないのです…。
ダイエットを声高に謳う企業にとって、あなたは金蔓でしかないかもしれません。
もっとも効果のあるダイエットは、おしゃれでもセクシーでもありません。セレブたちの推薦コメントもありません。対価を支払う必要のある教材もありません。ぶっちゃけ、マーケティング戦略などというものさえないのです。健康的な食品を選び、選り好みせず、きちんと意識的に食べることこそが最高のダイエットなのです。
「アトキンスダイエット」、「ゾーンダイエット」、「Whole30(ホール30)」、「サウスビーチダイエット」、「低脂肪ダイエット」、「糖質制限ダイエット」、「パレオダイエット」、「バレットプルーフダイエット」、「ケトン体ダイエット(ケトジェニックダイエット)」などなど…、次々と現れては消えてゆく新たなるダイエットの流行よりも、はるかに長続きする方法なのです。
さて、今夜の夕食には、なにを食べましょうか?