ランニング中などに膝のすぐ外側に痛みを感じたことはありませんか? このようなときには、膝の怪我を疑ってしまうところですが、実際は「腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)」という靭帯の硬さが原因の可能性もあります。
いきなり難しい言葉を使ってすみません。遅ればせながら、「腸脛靭帯」とは何でしょうか。
メイヨークリニックのスポーツ医学科で理学療法および、リハビリテーション部門の責任者を務めるエドワード・ラスコウスキ医師によれば、「骨盤の横からから大腿(だいたい)の外側を通って、膝の外側までつながっている密な繊維結合組織」を指すということです。
この靱帯は太ももを安定させ、腰椎や股関節、大腿骨、膝の機能とうまく連携させる役割となっています。
ウィスコンシン州マディソンのフィジカルコーチおよび理学療法士であるジョン・ラズン氏は、腸脛靭帯の機能について「股関節の屈曲や外旋(=がいせん、上腕や大腿を、位置を変えずに、体の外側に向かって回転させる動き)、外転をサポートし、全体的な動きにより股関節と膝の関係に安定をもたらし、うまく制御できるようにするものです」と説明します。
腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)が痛む理由は?
腸脛靭帯の痛みは、はっきりとした形で現れます。
「この痛みはランニング中の着地など衝撃がかかるときに、ひどく、焼けるような痛みをともなうこともあります。ときに、驚くほど鋭い痛みが持続することもあります」と、ラスコウスキ医師。
腸脛靭帯の痛みの潜在的原因はいくつかあり、ラスコウスキ医師は「腸脛靭帯の痛みは、この靱帯が大腿骨(だいたいこつ)の外側と摩擦を生じ、炎症を起こすことで発生します」としています。大腿骨の隆起部と靱帯が擦れ合う状態で膝の屈伸が繰り返されることで、膝の外側に痛みが発生するのです。
腸脛靭帯の痛みは、しばしばランニングによって引き起こされます。
「傾斜した道のランニング、下り坂のランニング、特に長距離のランニングなどは腸脛靭帯の痛みにつながります」と、ラスコウスキ医師は加えて説明します。とはいえ、この靱帯の痛みを引き起こすのはランニングだけではありません。
「これまでの臨床現場での経験を振り返ると、この靱帯の運動パターンの少なさ、股関節の可動性やコントロール能力の低さ、足首の可動性の低さ、低振幅の動きの繰り返しによる使い過ぎでの故障などが痛みの原因となっていた例があります」とラズン氏は続けて語ってくれました。
基本的にはランニングなどのフォームが悪い場合、腸脛靭帯の痛みを発症するリスクは向上するそうです。
腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)の痛みを解消する方法
まずは適切なストレッチから始めましょう。
ラスコウスキ医師によれば、腸脛靭帯には以下のストレッチがいいそうです。
- 左足を足首部分で、右足の前でクロスさせつま先をつく。
- 左腕を頭の上から、右側へと伸ばしていく。
- お尻の左側が伸びているのを感じられたら、そのまま30秒キープ。
- その後、反対側で繰り返す
「ストレッチの他にも、腸脛靭帯のマッサージをして血行を促進し、緩めるためにはフォームローラーも役立ちます」とラスコウスキ医師。ですが、もっとも重要なのはストレッチではありません。お尻の筋肉を鍛えることが脚を安定させ、膝の内転を防ぐことに役立つのです。
ラスコウスキ医師は、お尻の筋肉を鍛えるトレーニングとして、レジスタンスバンドを使ったヒップアブダクションウォークをおすすめしています。
ヒップアブダクションウォークは、股関節の外転筋にアプローチするものです。このエクササイズは、日常生活での使われるときと同じように外転筋が股関節のスタビライザーとして作用するよう鍛えるものです。エクササイズ中は膝をわずかに曲げ、お尻や太ももの外側に負荷を感じつつ、スムーズかつ意識的にステップを踏みましょう。
まずは、フォームが崩れ始めるまで左右にステップを踏みます。その後、前後のステップに切り替えます。
「筋力トレーニングは、週に2、3回行うべきです。鍛える筋肉群ごとにオフの日を設けるようにしましょう。4~6週間で徐々に改善がみられるでしょう」と、ラスコウスキ医師は最後に説明してくれました。
腸脛靭帯の痛みを防ぎたいなら、ランニング距離を急激に伸ばすのもやめておきましょう。ラスコウスキ医師によれば、伸ばしていく場合も伸ばす距離は1週間ごとに10%以下にしておくべきだと言っています。
Source / Men’s Health US
※この翻訳は抄訳です。