トレーニングの前後に、ウォーミングアップやクールダウンをやるべきであることはもうご存じでしょう。

 ただし、一部の熱狂的な筋トレ愛好者の間では、「ストレッチング」が再び大いなる勢いで注目されています。トレーナーの手を借りるストレッチングは、いまや本物の“フィットネス・トレンド”と言えるです。

 ストレッチを専門とするスタジオや教室、レースへの参加がここ数年間でたくさん登場したおかげで、いまでは日曜アスリートもフィットネス大好き人間も、「Stretch Zone(ストレッチゾーン)」や「Stretchlab(ストレッチラボ)」のようなスタジオに詰めかけ、激しいトレーニングで生じた疲労からの回復に役立つようにと考えられたストレッチに夢中になり、クラス参加やマンツーマンのセッションを受けたりしています。

 たとえば、アメリカの「リンバー(Lymbr)」というスタジオでは、カスタムオーダーのストレッチングをすることで機動力や速度が高まり、スポーツ全般のパフォーマンスが改善すると主張しています(ちなみに、同スタジオのストレッチコースは、30分のセッションで55ドル、60分のセッションで100ドルとなっています)。

 一方、「ストレッチゾーン」では、ストレッチング セッションについて身体に残る筋肉の緊張がほぐれ、リアクションにかかる時間と空間に関する意識が高まることから、運動のパフォーマンスが向上するとしています(なお、同社のウェブサイトには、セッションの料金は出ていません。代わりに、セッションを希望する人は各地にあるスタジオに直接連絡をとるようにと書かれています)。

◇ストレッチにわざわざお金を出すべきか?

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 そこで気になるのは、こうしたストレッチングのプログラムが「当に大騒ぎするほどのものなのか」ということになります。

 そして、もっと重要なのは、「こうしたセッションで料金に見合った効果がほんとうに得られるのかどうか」ということです。

 この問いに対する答えは、人によって異なります。

 普段からジムに通っている健康な人なら、答えはおそらく「ノー」でしょう。しかし、内容の柔軟性に価値を感じ、それにお金を出してもいいという人は、こうしたセッションを受けることでエクササイズをよりきめの細かいものにすることができるのです。

 ストレッチ専門のプログラムで教えているのは、ヨガのような柔軟性を高めるための従来のプログラムよりも深みがあり、より多くの恩恵を得られるストレッチとなると、こうしたプログラムを支持する人たちは主張しています。

 「ヨガの場合、身体を支えている部分が収縮するので、同じようにはリリースできません」と、ストレッチトレーナーのジョン・マックイーンさんは先ごろ「New York Post」にコメントしていました。

 「トレーナーの手を借りながらするストレッチでは、身体のほかの部分も完全に力を抜くことができるが、これはトレーナーがクライアントの筋肉を本人ひとりでは手の届かないところまで導くためです」とマックイーンさんは続けて語ってくれました。

 それに対して、こうしたプログラムを“支持しない人たち”は、ストレッチング専門のプログラムやマンツーマンのセッションに30ドル以上も支払う必要はまったくないと主張します。パーソナルトレーナーを雇っている人なら、きちんとしたストレッチやウォーミンムアップもサービスのなかに含まれているはずだからです。

 皆さんの身体に優しく、そして愛情もこもったケアが必要であるなら、ストレッチほどトレンディではないまでも、その必要を満たす方法はほかにもあります。

 具体的には、理学療法やカイロプラクティック、あるいはマッサージ療法などでも同じ効果が得られることでしょう。

 「受け身のストレッチングに、とくにユニークな点があるわけではない」と、エイリエン・ウィックラーさんは、2017年「New York Times」にそう語っていました。

 ウィックラーさんは、マンハッタンのエクイタブル・センターにある『アスレティック・アンド・スイム・クラブ』のゼネラルマネジャーです。「きちんと訓練を積んだトレーナーなら、ストレッチングはできます。そして、マッサージ・セラピストもストレッチングはできるのです」と。

 ロンデル・キングさんも、人の手を借りるストレッチングの流行に慎重な見方を示しています。

 キングさんは、ニューヨーク大学ランゴーン・スポーツ・パフォーマンス・センターのエクササイズ生理学者です。彼は誰もが人手を借りるストレッチングをする必要があるわけではなく、柔軟な身体の持ち主のなかには、ほかの人にはプラスになり得るストレッチをして、逆に身体を痛めてしまう人の例も実際にあると語っています。

 「こうしたストレッチの効果があるかどうかは、理学療法士による診断や各人の生理機能のなかにある長さと緊張の関係にもよる…」とのこと。

 キングさんはまた、こうしたストレッチングがもたらす長期的な恩恵、とりわけストレッチングをたまにしか受けない人が得られる恩恵に、疑問を呈しています。こうしたストレッチングのプログラムに2、3度参加しただけでは、体の痛みや強ばりの根本的な原因を取り除くには不十分かもしれません。

 「ストレッチングが役立つ分野もあると思いますが、ただし、ストレッチングを必要としているのが、どの部分かを先に特定しておかないといけません。診断を受ける必要は、そこにあるのです」とキングさんは続けます。

静的なストレッチを受けると下半身の筋力が低下する!?

 エクササイズのパフォーマンスや疲労回復に関して、ストレッチングを受けることで目に見える恩恵を得られるかどうかについては、専門家の間でもいまだに意見が分かれているようです。

 『Journal of Strength & Conditioning Research』に掲載されたある研究では、静的なストレッチングを受けると、下半身の筋力が低下する場合が実際にあることが明らかにされました。この研究で調査の対象とされたのは、中程度の激しさのトレーニングをしている少人数の男性でした。

 一方、『Medicine & Science in Sports & Exercise』に発表された別の小規模な研究では、被験者の運動に関するパフォーマンスにストレッチングは、何の影響も及ぼさないと結論づけられていました。

 また『Journal of Athletic Training』に発表された別の研究では、ストレッチングは筋肉痛の軽減につながる可能性があるものの、ケガのリスク軽減には大きな影響はないことが明らかになっています。

◇まとめ・留意点

 こうした話を聞いた上で、それでも皆さんが流行のストレッチングを試してみたいと思うのであれば、どうぞそうしてください ―― ただし、ストレッチングがパフォーマンスを実際に加速させるという保証はないという点を、忘れないでください。

 もし皆さんがすでに活動的で健康的な生活を送っているのなら、おそらくお金を節約するほうがいいでしょう。ひとつ覚えておいていただきたいのは、エクササイズの最中に痛みを感じたら、すぐにエクササイズを中止し、かかりつけの医者に相談すべきということです。

 皆さんにとって、ストレッチングのプログラムが必ずしも悪いわけではありません。ですが、ターゲットを定めた理学療法のセッションやリハビリを受ける代わりに、ストレッチングをするというのはあまりいいとは言えませんので。

◇ 自分でできるストレッチ

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Netflix And Stretch: Kneeling Hip Mobility Exercises
Netflix And Stretch: Kneeling Hip Mobility Exercises thumnail
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 たとえ皆さんが、このトレンドを採り入れることに断固反対でも、自分でできるストレッチは必ずきちんとやるようにしましょう。ジムや自宅のテレビの前でもできる、ルーティンが動画の中にありますので。

Source / Men's Health US
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。