2017年で34歳になるマーク・マディルソンはカナダ・トロント在住のパーソナル・トレーナーで、彼のインスタグラムを見ていると、彼のことをプロのアスリートと思わず勘違いしそうになってしまう。彫像のような肉体、厳しいワークアウト、ガッツリとした食事などを写した画像が並んでいるからだが、そんなマディルソンも6年前には現在の姿からは想像しがたい体型の持ち主だった。
当時20代の終わりにさしかかっていたマディルソンは、以前ほど運動しなくなっていた。友人たちとスポーツを楽しむよりも、恋人との関係を楽しむことが多くなっていたからだった。自分の体重が徐々に増えていることは自覚していたが、彼は手を尽くしてそのことを忘れようとした。体重計の針が260ポンド(約130キロ)を指した時でさえ、彼はこの体重を正当化した。彼のまわりには肥満体でない人などひとりもいないと思えたからだ。
しかしマディルソンは、自分の体に関する厄介な兆候を無視するのに苦労した。ひとつの理由は、それまで着ていた服が体に合わなくなったこと。それ以外にも、糖尿病や心臓病といった肥満が原因の病気で亡くなった人が家族にふたりもいたという理由もあった。
そうした兆候に気付きながら、それでもマディルソンは食事に関する悪癖をやめることができなかった。つまり、深夜に鶏の手羽先や脂っこいハンバーガーを口にしたり、1日に何個もドーナツを食べるといったことをやめられなかったのだ。しかし2011年12月、友人がたまたま撮影した自分の上半身の裸の写真を見て、マディルソンはさすがにこれではいけないと覚悟を決めた。
「バケーション中に撮られたあの写真を見て、『これが自分だなんてあり得ない』と思ったんです。あれが減量の必要に気付いた瞬間でした。自分の姿を写したあの最もラフな画像を目にしたとき、私は生活を変える必要があると思ったのです」(上掲の減量前とその後を比較した写真をもう一度見てほしい)。
あの写真、そして家族の病歴が動機付けとなり、マディルソンはまったく運動しない人間から一気に猛烈なエクササイズ・マニアへ早変わりした。年が改まると、彼はまず30日間の猶予期間を自分に与えて減量に邁進した。2012年の1月には週に5日ジムに通い続けた。
マディルソンはこの時、1種類につき12回から15回のエクササイズを5種類行い、それを4セット繰り返すという激しいメニューを試してみた。「最初は体を引き締まった状態に戻そうとしたんです」と彼は説明する。「自分のやり方が正しいことを確かめたかった」。最初の1カ月の間、彼はダンベルをつかったカールやスクワット、懸垂といったエクササイズを重点的にこなした。また、心肺機能を高めるためにほぼ毎日急な斜面を歩いて登るといったこともした。
30日後、肉体改造の進捗ぶりを確認したマディルソンは、その結果にがっかりしてしまった。毎日運動したのにもかかわらず、期待したほどの変化が見られなかったからだ。「あの結果にはとてもがっかりさせられました。20代前半の頃にはとても効果のあった運動がまったく効かなかったのですから」と、彼は当時のことを思い出してそう言う。
この時エクササイズの効果がなかった原因は、マディルソンの食生活にあった。毎日運動するようになった後も、彼は相変わらず多量の糖分を含む加工食品を食べ続けていた。彼は、自分の体に期待した変化が現れない理由を調べていくなかで、食生活が及ぼす影響がいかに大きいかを理解し始めた。
「食事の内容を劇的に変える必要があることに気付きました。それで糖分を摂るのを止めて、無添加の食品だけを摂取することにしたんです。また、自分で食べ物を料理する必要があることもわかりましたね。それで料理を覚えることにしました」
忍耐力と努力の結晶! マークの美しい肉体・・・。
マディルソンはさっそく仕事に取りかかった。彼は料理を覚えるために無数のレシピにあたり、チュートリアル動画も見始めた。ファストフードのドライブスルーでフィレオフィッシュやチキンサンドを注文するのではなく、代わりに自宅で鶏の胸肉や魚の切り身を使った料理を調理しはじめた。
この食事の変更が、マディルソンの肉体改造に大きな進歩をもたらした
食事を変えて3カ月で、彼はお腹のあたりがはっきり変化していることに気付き始めた。まわりの人が彼の大きな変化に本当に気付いたのは、カナダにも遅い春がやってきて、皆が厚いジャケットやコートを着なくなった頃のことだった。
「友達はショックを受けていましたよ。私があれだけの肉体改造をたった数カ月でやったことが信じられなかったのです」
当時のマディルソンは環境研究の学位を取ろうと大学に通っていた。だが、健康関連の情報を眺めながら何時間も過ごすことを繰り返しているうちに、この分野で仕事をすることを考え始めた。夏の間もマディルソンは新たに身につけた生活スタイルを通して、自分の肉体改造に役立ちそうな新しい方法を常に探し続けた。そんなとき、頭のなかである考えが閃いた。
「あるとき、自分が見つけたあらゆる情報と恋に落ちてしまいました」と彼はいう。彼は運動生理学と栄養学の授業を受け始め、そしていまではフルタイムのパーソナル・トレーナーとして仕事をしている。
マディルソンはあの時以来、過去の姿に戻ったことは一度もない。現在は205ポンド(約93キロ)前後の体重を維持しているが、2017年7月に撮った上掲の写真の「肉体改造後」を見ると、彼がどんな姿をしているのかがわかる。以前のような生活習慣に逆戻りすることへの誘惑が魅力的に感じられたとしても、いまの状態に大満足なマディルソンがその誘惑に負けることはない。
「アルコールを口にするのは2年前にやめたのですが、あの時にはちょっと大変な思いをしました。私は西インド諸島の出身で、あそこでは飲酒が文化の一部ですから。一番きつかったのは、お酒を飲まないことに対するまわりの人たちからのプレッシャーと戦うことですが、私は意思の力が強いことが自分の最大の長所と常々口にしているので、断酒をやめようと考えたことは一度もありません」
そういうマディルソンは、2016年11月に食事の習慣をさらに改め、ビーガン(完全菜食主義)に切り替えた。ビーガンが大いに気に入った彼は現在、肉類をまったく口にしない食生活を続けている。
「肉を食べなくなってから、食事のあとに身体が重いと感じることがなくなり、これまで以上に生き生きとした感じが得られるようになりました。だからビーガンを続けることに決めたんです」。
現在のマディルソンにはお気に入りのエクササイズがいくつかあり、運動が自分の成功に役立ったと考えている
彼の冷蔵庫の中は現在、画像のようになっている。
彼は負荷の高いインターバルトレーニングをルーチンに採り入れているが、なかでもトレッドミルを使ったダッシュはとくにお気に入りのようだ。具体的には、20分間に全力疾走と休憩を30秒ずつ繰り返すというメニューなどを普段からよくこなしている。
また、彼はスクワットや懸垂のような基本的な動きの幅を拡げることで、フィットネスの結果を劇的に改善できるとも述べている。「マシンを使ったラットプルダウンをメニューに加えたことで、チンアップ(斜め懸垂)やプルアップ(懸垂)の幅が広がった」という。ランジ(下半身のトレーニング)やプランク(またはフロントブリッジ、体幹トレーニング)も彼にとって必須のメニューだ。マディルソンはトレーニングを通じてランニングにのめり込んだ結果、2016年にはシカゴマラソンにも出場。現在も週平均30マイル(約48キロ)のランニングをこなしている。
マディルソンは、ほぼすべての時間をジムで過ごし、30分間隔で一日中クライアントの間を跳び回っていることから、30分という時間を最大限に活用する達人に自然となった。そんな彼は次のようなアドバイスを私たちに与えてくれた。
「もし30分しか時間がなければ、自分なら5種類のエクササイズをこなします。スクワット・スラスター(バーベルを使ったスクワット、重量挙げ)、レネゲード・ロウ(ダンベルを使った腕立て伏せ)、ウォーキング・ランジ、サイド・プランク・クランチ(横向きでの腹筋)、ハムストリング・スラストのようなものを選んで、ひとつにつき20回ずつのトレーニングをできるだけ数多くこなすようにします。私の場合は普通、ダンベルを使いながらこうしたトレーニングをやりますね。ダンベルの重さはマックスのだいたい60%程度。そうすることで、キツいものと素早くやれるものをミックスしてやることになります」
マディルソンがジムでのトレーニングと同じくらい好きなのは世界中を旅することで、最近もグレナダ、バルバドス、韓国、トリニダード、バリといった各地を訪れた。彼のインスタグラムには、大半を占めるワークアウト関連の投稿に混じって、旅行中に撮した素晴らしい写真も載っている。彼は旅行に出かけることでメンタル面をリセットしているともいっている。「フィットネスでは肉体面と同じくらいメンタル面も重要です。私にとっては旅行がメンタル面を充電する機会になっているのです」
大成功したマディルソンの肉体改造は いつから始ったのか思い出してほしい
マディルソンは旅行の際にもトレーニングシューズやレジスタンス・バンド(トレーニング用ゴムバンド)を携帯し、時にはTRXを持って出ることもある。また「ウォーキング・ランジやスクワットで負荷を上げる重りとして、石ころや岩を使ったこともあります」とも述べていた。
「トレーニングするスペースがあまりないのなら、マウンテン・クライマー、バイク・キック、ランジ、スクワット、サイド・プランク・ホールズ、椅子に足を乗せての腕立て伏せなどをやるでしょうね」
もし余裕があれば、ランニングにも出かける。初めての土地で知らない世界を探索するためだ。
(屋外でできるルーチン・トレーニングについては、公園のベンチを使ったワークアウトの方法を紹介している動画が参考になるだろう)
これほど大成功したマディルソンの肉体改造も、もともとは30歳を前にした多くの男性と同じところからのスタートだったことを思い出そう。
「肉体改造の旅に乗り出す人に対して、私は『これはあなた自身のためだけにやることです』と言うようにしています。自分をゴールへと導びく内なる声に耳を傾けなくてはいけません。友人や家族から目標達成の妨げになるプレッシャーがかかるかもしれませんが、そういったものはすべて無視しましょう」
マディルソンがクライアントに必ず伝えていることがある。彼のモットーである「どんなに年をとった人でも、人生で最高の体型になることは可能です」(=ベストな体型をつくるのに遅すぎることはない)というのがそれだ。
「私たちのこの人生は、一度しかありません。だったら、自分の体をできるかぎり良い状態にしない手はないのです」
Curtsey of @marcmadilson(via Instagram)
Curtsey of @marcmadilson(via Instagram)