キング・シュラッツさん(本名デイブ・シュラッツ)は毎晩、約6万2000人いるインスタグラムのフォロアーの前で(彼にとっては1日に1度の)食事を摂るのが日課となっています。
シュラッツさんの食事は…
―ベーコン・エッグ・チーズ・サンドウィッチ12個と、山のようなポテトフライ…というときもあれば、チーズバーガー・スライダーや、合わせ目が膨れあがったファヒータ(小麦のトルティーヤに乗せて供される、グリルした肉料理の総称)のプレートというときもあります。
シュラッツさんはすべての食事について、そのなかに含まれる栄養価を記し、「#IIFYM」というハッシュタグを付けてインスタグラムで公開しています。そんな彼が一度の食事で摂取するカロリーは、約3700カロリーにもなります。が、それでもシュラッツさんは筋肉質な肉体を維持しています。インスタグラムに投稿した、自分がウエイトリフティングするところを撮した動画のなかで彼は、その肉体を誇らしげに披露していますので要チェックです!
シュラッツさんは1日に1度だけ、それも超ド級の食事を口にすることで有名になりました。
彼はニュージャージー州北部にあるバイオフィット・ソリューションズという会社のオーナーで、同社ではパーソナル・トレーニングのサービスを提供しています。シュラッツさんは、自分がいまの体形を維持していられるのは、毎日2時間も密度の濃いワークアウトをして、食事で摂取したカロリーを燃やしているからだと主張しています。
「私は毎晩食べたいものを食べたいだけ口にしているように見えるかもしれない。だけど、実際にはそうではない。食事で3200カロリーを摂取しても、トレーニングで4000カロリーを燃やしていれば、やせた体形を維持できる」と、シュラッツさんは言います。
それはほとんど手品のようです。この上半身裸の男性があらゆる炭水化物や脂肪分の多い酸を現実から消してしまうところを見てください。シュラッツさんは、ちょうど食べ物の世界におけるハリー・フーディニ(「脱出王」の異名を取った奇術師)といったところかもしれません。(次ページにつづく)
体脂肪が増えない彼の能力に釘付け
シュラッツさんが1日に1度の食事しか摂らないことにしたのは、約2年前のこと。彼はそのときから、ご馳走を撮影した写真をインスタグラムに投稿しつづけています。その後、時が経つにつれて、インスタグラムで彼をフォローする人がどんどん増えていきましたが、彼のフォロアーは誰もが、“好きなだけ食べている”のに体脂肪がまったく増えない彼の明らかな能力に釘付けになっていたのでした。
シュラッツさんのインスタグラムで表現されているこの斬新な表現方法は、彼の人気増大に役立っていることに間違いありません。山積みになったワッフルやソーセージを平らげてしまうパーソナル・トレーナーを目にすることは、そう滅多にあることではありませんからね。
そしてシュラッツさんが口にする食事の多くは、活動的な男性が体重を維持するのに必要とされる1日あたり2000カロリーから3000カロリーという標準的な推奨値をはるかに超えたものですから堪りません。そのためシュラッツさんが実際にインスタグラムで公表しているほど、「たくさんの食事を摂っている」ことに疑問を呈する人たちのコメントもたくさん書き込まれています。
なかなか消えないフォロワーの疑念を払拭するために、シュラッツさんは少し前から、実際に食事の様子をライブストリームで流しはじめていたのでした。(次ページにつづく)
大量の食事を口にしながら体重を減すことは可能
1日に1度しか食事を摂らないという考え自体は、特に目新しいものではありません。
シュラッツさんが口に放り込む途方もない量のハンバーガーやホットドッグ、フライがもしなかったら、彼の食事に関する原則は、決まった時間以外にはカロリーを摂取しない断続的な絶食と、そう違わないものになっていたはずです。(ただし減量が目的の場合、断続的な絶食には日々のカロリー摂取量を計算することと、同程度の効果しかないという証拠もいくつか出されています)
シュラッツさんのインスタグラムへの投稿は、見ずにはいられないほど視覚的な強いインパクトを与えるものです。
しかし、彼のやり方が健康的な食生活を送るための、優れたひな形とは「言えない」こともまた事実です。
まず彼は、「カロリーイン、カロリーアウト("calories in, calories out”)」方式の減量の考え方を採り入れています。この考え方では、口にするカロリー量よりも、燃焼させるカロリー量のほうが多ければ、体重を減らすことが可能ということになります。この点についてスポーツ栄養学の専門家のマリエ・スパーノ氏は、「シュラッツさんの主張のなかには真実がいくらか含まれる」として、次のように述べています。
「燃焼させるカロリー量が摂取するカロリー量を上回っていれば、シュラッツさんがインスタグラムに投稿した写真のなかで見せているように、大量の食事を口にしながら、それでも体重を減すことも可能なのです」と…。(次ページにつづく)
「蓄えられたタンパク質が、後になって筋肉の増強や修復に役立つことはない」
ただし「カロリーイン、カロリーアウト」のやり方が、迷信以上のものでは「ない」ことを示唆する証拠もあるのです。
人が日々の生活で必要とするカロリーの量は、本人の年齢や遺伝子の構成、体重を減らせる能力などの要因により大きく異なります。さらに、カロリー計算が不正確であることもよくあります。また、カロリー計算について私たちが知っていることのなかには、欠陥のある時代遅れの科学に基づいたものもたくさんあるのです。
スポーツ栄養学の専門家スパーノ氏はまた、筋肉をつけるには1日を通じてタンパク質をとり続ける方がはるかに良いとも指摘しています。
「筋肉をつけたり、痛んだ筋肉を修復するプロセスは、食事後3〜5時間にわたって続きます。タンパク質は、まとまった量を体内に蓄積することができないものです。もし、必要以上のタンパク質が体内に入った場合、使われないタンパク質は一定時間胃袋の組織のなかに蓄えられますが、この蓄えられたタンパク質が後になって筋肉の増強や修復に役立つことはほとんどないのです」と、スパーノ氏は言います。
スパーノ氏の話はすべて本当のことです。が、シュラッツさんは自分が1日に1度大量の食事を口にしているのは、健康に関する理由からではなく、そのほうが便利で柔軟に時間を使えるからだと言っています。
「私は普段とても忙しいのです。1日に1度の食事は、1日中ずっと何かを食べているのと同じことなのです」とシュラッツさん。(次ページにつづく)
シュラッツさんの食事法は、血液中のコレステロールを増やす可能性アリ
また、インスタグラムの写真を見る限り、シュラッツさんの食事がおそろしく不健康なものであることも否定しがたいのも事実。
シュラッツさんは糖分を含んだ飲み物や軽食の類いは口にせず、また、必要とされる栄養分はすべて摂っていると言っています。
しかし、『僕が食べる野菜のことはフォロワー皆の目には入っていないと思うけど、僕は普段どの食事でも大量の野菜を食べています。そして、皆がそれに気づかないのは、野菜がチーズの陰に隠れているからなんだ』と、彼は笑いながら話しています。が…、「ベーコン・エッグ・チーズ・サンドイッチ」をどんなにたくさん食べたとしても、それが体にとって素晴らしいことにはなりません。
「ケフィアやヨーグルト、キムチ、ミソのような、繊維をたくさん含でいたり、健康に良い微生物の成長を促す成分が入った食品を十分に食べなければ、腸内の善玉バクテリアが不足するかもしれません。長年にわたってそんな状態が続けば、腸の働きや免疫系に影響が出る可能性があります。シュラッツさんの食事には、血液中のコレステロールを増やす可能性のある食品が大量に含まれており、それは心臓や動脈の健康にとって好ましいことではないのです」と、スパーノ氏は説明します。(次ページにつづく)
人は、大食いする様子を見ることのが好き
一方でスパーノ氏は、「それでも彼のやり方には好ましい点が主にふたつあるのです。それは彼が、エクササイズをしていること。それに健康的な体重と健康的な体脂肪のレベルを維持していることがそれで、これらの要因は心臓の健康にとってとても重要です」と指摘しています。
シュラッツさんは自分の秘密を知りたい人のために、自分が口にする食べ物のカロリーをきちんと計算しています。しかし、これほどたくさんの人たちがインスタグラムで彼をフォローしている理由について私(筆者)が尋ねると、彼は自分のファンのなかには食事に関するちょっとしたコツやテクニックには興味がない人もいると認めています。
「(米国のテレビ番組)『人間 vs 食べ物の戦い』を僕が見るのは、人が大食いする様子を見ることのが好きだからです。そういうのを観ているときは、『どうしてあんなにたくさん食べられるんだろう? あの裏には絶対に何かあるぞ』という感じになり、面白いからです。でも、僕がやっていることについて、フォロワーが実際に気にかけてくれていると思うとうれしいし、とても謙虚な気持ちになります」と、シュラッツさん。
スパーノ氏もその点については同意見です。「健康が目的なら、食事に対するアプローチとしてはもっとずっと優れたものがいくつもあります。しかし、そんなアプローチの多くは、必ずしもインスタグラムのフォロアー集めに役立つとは限らないものですからね」と。スパーノ氏もおそらく、シュラッツさんのファンなのでしょう!
※最後までお読みいただき、ありがとうございました。
King Schratz 01
King Schratz 02
King Schratz 03
実は、このトレーニングを開始する以前は、ちょっぴりボリューミーだったたシュラッツさん。
From Men's Heaith
By Luke Winkie
December 6, 2017
Courtesy of kingschratz
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。
Edit / Hikaru SATO, Kaz OGAWA