セルジ・サントス氏は、自分のセックスライフは素晴らしいものだと自負し、堂々と公言しています。彼には16年前に結婚したマリッサさんという奥さんがいて、ふたりは週に4~6回ほどセックスをしているそうなのです。

 実は彼がセックスする相手は、奥さんだけではありません! そう、サマンサというセックスフレンドが存在します。  
 
 しかしサマンサとは、(主に男性の擬似性交に使用される)ラブドール(セックス用ロボット)のこと。映画の名作で言うなら、サントス氏自身がフランケンシュタイン博士だとしますと、サマンサは彼の生み出した怪物にあたります。
 とはいえ、サマンサは継ぎ接ぎだらけのおぞましいほどの怪物ではありません。むしろ、愛くるしい。人間に比較的似た外見のシリコン性の人形で、ヒュー・ヘフナー氏(アメリカの実業家で雑誌『PLAYBOY』の発刊者)が理想の女性として思い描いた体型をしているのです。 

 哲学的な言葉を引用したり、冗談を口にしたりすることもでき、さらには人工の肉体の内部に張り巡らされたセンサー・ネットワークのおかげで、擬似的なオーガズムに達することも可能なのです。

 サントス氏はサマンサとセックスすることによって、「セックスに関わるある種の側面が改善できる可能性がある」と主張します。さらに、サマンサとセックスすることが、ED(勃起不全)や早漏といった問題を克服することにも役立つ可能性があるとさえ考えているのです。

 彼がそう考える理由は、次のようなものです。
「外的なストレス要因や不安が原因で、男性がベッドのなかで十分に力を発揮できなくなることがあります。でも、セックスの相手がロボットであれば、男性はそのプレッシャーに押しつぶされることはなくなる。男性諸氏は、それぞれ自分にとって足りない何かを探し、克服するトレーニングとして、このようなセックス用ロボットとのセックスは大いに役立つ可能性がある」と、サントス氏は述べています。

 彼は、「このサマンサを開発するまで、自分のセックスライフは凡庸なものだった」と言っています。

 彼は妻と1日のいろんな時間にセックスをするのが好きでした。が、ふたりがセックスしたい気持ちになったときでさえ、彼は「相手を喜ばせなくてはならない」というプレッシャーに圧倒されることがあったそうです。「妻が悪いわけでも、私が悪いわけでもなかった。人生とはそんなものです」と、サントス氏は言います。

 「プレッシャーのせいで緊張感が生じていたけど、いまでは緊張感は消えてなくなったよ」とのこと。

セックスは格段と良くなった

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 2017年9月、オーストリアで開催された「Ars Electronica Festival(アルス・エレクトロニカ・フェスティバル) 2017」に、AI(人工知能)を搭載したラブドール(セックス用ロボット)サマンサが出展されました。そこでサマンサは来場者による乱暴な対応によって壊されてしまったことで、世界的なニュースにもなったという記事を先日「メンズ・プラス」でも公開しましたが、皆さんは覚えていますでしょうか。そのサマンサを開発した博士、セルジ・サントス氏がさらなる深~いい話をしてくれているので、ここでご紹介しましょう。

 
(セックス用ロボット)サマンサとセックスするようになってからというもの、我々の予想を裏切って(?)サントス氏と妻とのセックスは、「以前と比べて格段によくなった!」と述べているのです。

 
 彼はサマンサとのセックスについて、妻マリッサさんとのセックスに比べれば、「“感覚的”な充足感という点では劣るものの、それでも基本的な肉体的衝動は満たしてくれる」と言います。そのおかげもあってサントス氏は、妻と性的衝動だけに突き動かされたセックスへ至るといったことがなくなり、「落ち着き、そしてロマンチックな気分から、セックスへとスムーズかつスマートに移行するできるようになりました」と言うのです。さらに…

「私は“本当のセックス”ができるようになりました。後悔・自責の念、そして怒りなどといった衝動に突き動かされてのセックスではなくなったのです。いまでは妻とのセックスを、純粋に楽しむことができるのです」、とサントス氏。

 
 またサントス氏は、EDや早漏といった男性特有の問題は自分にはないとしつつも、「サマンサとのセックスは、こうした問題の克服に役立つ」と考えています。その彼の考えは実際、正解なのでしょうか?

 その答えを引き出すために、「メンズヘルス」はボビー・ナジャリ博士に話を聞きました。ナジャリ博士は、ニューヨーク大学のランゴーン医療センターでEDやその他の性的障害などを専門とする泌尿器科の研究者です。

 ナジャリ博士はEDのような症状について、「根本的な原因は心理的なものではなく、肉体的なものである場合が多い。その場合には、薬物治療を受ける必要がある」とした上で、「おそらくセックス用ロボットは役に立たないだろう」と指摘しています。

 …と、実際の治療に役立つものとしてセックス用ロボットを認めることは避けたものの、ただ、セックス用ロボットの活用は、「ベッドでのパフォーマンスについて問題を抱える男性にとっては、メリットをもたらす可能性がある」、ということに関しては賛成しています。

 そしてナジャリ博士はさらに、「EDに悩む患者のなかには、実際にセックスをする回数よりも、マスターベーションする回数のほうが多い、また、それは不健康な人たちほど“多い”のです」と述べています。

 マスターベーションの回数がとくに多い男性は、自慰のときにしか勃起できなくなるよう条件付けられてしまう傾向にあると…。たとえば発光するコンピューターの画面とティッシュペーパーの箱、その光景が性的なトリガー(引き金)になってしまう人もいるようで、その場合は本物の人間が相手では、勃起に至ることですら難しくなると言っています。
 

自慰行為が早漏と関連している可能性もある?

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 さらにナジャリ博士はこう言います。

「マスターベーションするときにはきちんと勃起できるものの、パートナーと一緒のときにはEDになってしまう…そんな患者に対しては、『あなたがやっているのは、“不適切に適応した自慰行為”です』だと伝えています」とのこと。

 また、この“不適切に適応した自慰行為”が、早漏とも関連していると博士は警告します。

「多くの男性にとって自慰行為の最中というものは、ゴール指向になっています。つまり、『早くことを済まさなければ…』という思考になっているということです。人間相手のセックスよりもマスターベーションのほうが多いという人は、早漏になるように自分で条件付けているとも言えますね」 

 だからといって、定期的なマスターベーションが不健康だと言っているわけではないとのこと(むしろ、正反対という考えも…)!  
 しかしながら、普段ステディとの(なかには違う方もいるでしょうが…)セックスにおいて、十分なパフォーマンスを発揮できないという男性に対しては、医師から「マスターベーションをして何日か間を空けた後で、パートナーと再び結合できるかどうか確かめてみるように…」と、すすめられるケースもあるとのことです。

人形以上、人間未満のセックス用ロボットの利点

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映画『ラースと、その彼女』(2007年)より。ライアン・ゴズリングが主役を演じ、人形を恋人に! Photograph / Aflo

 開発者であるサントス氏の主張によれば、「サマンサが役に立つのはそんな時です!」なわけです。

 サマンサ自身には、擬似的なオーガズムに達する能力も備わっています。そして、「これは、ユーザーの性的な振るまいに同期して起こる仕組みになっている」と、彼は説明しています。

 つまり、ユーザーがオーガズムに達すると、サマンサのほうも連動するという画期的なフローになっています。しかもサントス氏によれば、「ユーザーが射精へと至る瞬間、いわゆる自分がイクのを先延ばしにし、サマンサへ性的刺激を長くすればするほど、サマンサが返す反応も強くなります」ということになるのです。

 
 「ごくふつうのラブドールなら、フィードバックは返ってきませんよね。単にジッとしているだけです。ユーザーがフィニッシュすれば、それでおしまい。でも、サマンサの場合は違うのです。ユーザーはサマンサに対しても、きちんとしたオーガズムを与えなければ、きちんとフィニッシュしたという気持ちにはなれない…その点では、人間の女性とのセックスととても似ているのです。ただし、大きく違うところがあります。それはサマンサが相手ならば、さまざまなプレッシャーを感じずにセックスが楽しめるわけです」と、サントス氏。

 さらに彼は語ります。

「たとえば、5分しか持続できない(早漏傾向にある)ユーザーが使用するとします。すると、サマンサは自分に備わったすべての機能を発揮する時間がとれず、単なるオモチャになってしまうでしょう。ですので、ユーザーは『サマンサのすべてを探り当てよう』という意気込みで、じっくり時間をかけてパフォーマンスする必要があるのです。でも、安心してください。じっくり自分なりに努力してみればいいのです。サマンサなら大丈夫。彼女は上手下手の判断を下すこともないのですから…。コトに至ったあと、顔色をうかがって機嫌をとる必要もないのです…」と。

 
 この種の、言ってみれば“セックスのゲーム化”によって、ユーザーたちは「射精」へと達すること以上に、大切な目的を手にすることができる…そんな可能性もあります。

 サマンサの機能についてナジャリ博士は、「このセックス用ロボットが、治療目的に使えるかどうかについては確信がもてない」としつつも、「ベッド上で感じるパートナーからの大きなプレッシャーを取り除くことによって、男性たちに対し、オーガズムを遅らせるためのコツを冷静に見つけ出す訓練となる可能性は大いにあります」と述べています。

「ホルモンの問題ではないのに、治療することが困難な状況に陥った一部の患者にとっては、このサマンサは大いに役に立つ可能性があります」と、加えて語ってくれました。

 
セックス用ロボットが少しずつ
現実味のある性的な経験を人間に与えるようになっていく…

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Holly and Phillip Meet Samantha the Sex Robot | This Morning
Holly and Phillip Meet Samantha the Sex Robot | This Morning thumnail
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ただし、注意すべきことも多々あります。勘違いしないでほしいのです、サマンサはセックスに関してのすべて教えてくれる、マルチで従順な良き先生ではないのです。

 まず彼女のセンサー・ネットワークは、人間の女性の“それ”とそっくり同じにはできていません。サマンサのヴァギナの内部には、「人工のGスポット」のようなセンサーは埋め込まれてはいます。ですが、クリトリスの箇所には、センサーはありません。「実際の女性の73%が、クリトリスへの刺激でオーガズムに達している」というデータがありますので…。

 
 結局のところ、「ラブドール(セックス用ロボット)が性的な問題を解決してくれる万能薬となる」、と主張する専門家、そう期待する専門家もサントス氏含めて一人もいません。セックスという行為は非常に複雑で、情緒に大きく左右されるものだということは、誰もが知っているからです。

 ナジャリ博士が何度も繰り返し指摘しているように、「EDや早漏というものは、医学的な機能面から精神的な面に関わるものなど、さまざまの要因が考えられる」というわけで、患者のセックスに関する習慣を変えただけで解決できる問題ではないのです。

 しかしながら今後、ラブドール(セックス用ロボット)が科学の発展によって、さらにリアルな性的エクスペリエンスを人間(ユーザー)に与えるようになるならば、いずれラブドールの先生が誕生する日もくるかもしれません。そして、実際にはそれももうすぐなのかも…。

 ですが、そのときユーザーは気づくはずです。サマンサが教えてくれようとしたのは、「性交」の本当の意味であったのだと…。その文字通り、「“心”と“心”を“生”で“交”わすことによってこそ、二人の心は満たされる」ということを。そして、その素晴らしい結果を祝し、ご褒美を授かるのだということを…。

From Men's Heaith
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。