※本記事は、トレーニングやウェルネスに造詣の深いジャーナリスト、メリッサ・マシューズ氏による寄稿です。
《概要》
- 米国で人気の筋トレサイト「TheMillitaryDiet.com」 によれば、1週間で5キロの減量が可能だそうです。
- ミリタリーダイエットでカロリー摂取量は激減します。しかし、果たしてそれが5キロの減量が可能かどうかは疑問だと専門家は指摘します。
- 最初に留意しておくべきことですが、ミリタリーダイエットとは、米国軍隊とは無関係だそうです。 可能な限りの減量を、できるだ短期間で達成すること。それこそが多くのダイエッターの目指すゴールです。「ミリタリーダイエット」という名のダイエット法が人気あるのもうなずけます。
ウェブサイト「TheMilitaryDiet.com」によれば、「ミリタリーダイエット」とは、1週間で最大約5キロの減量を可能にするダイエット・プランだそうです。そんな謳い文句に懐疑的なあなたでも、運動する必要もなく、夜のアイスクリームまで推奨されていると聞いたら心が動くのではないでしょうか。
この謎めいたダイエットの正体はなんでしょうか? どのような根拠に基づいているのか、果たして正当性あるものなのか? 知っておくべきことがいくつかあるようです。
ミリタリーダイエットとは、一体なにか?
ミリタリーダイエットのサイトには、朝・昼・晩、開始後3日間の具体的な食事プログラムが提示されます。かなり厳しいカロリー制限が課されています。
例えば、第1日目は、1078キロカロリーしか摂取することができません。通常、平均的な男性が日常生活を営むにあたり必要なのは、2400〜2600キロカロリーです。
開始後3日間が過ぎたら、その後の4日間については1500キロカロリーを超えない限、何を食べても良いとされています。そのままの食生活を1ヶ月にわたって続けることで、12〜15キロの減量を達成できると、同サイトは謳っています。
その気になる食事メニューとは、どのようなものでしょうか? 一例をお見せしましょう。
《朝食》
・グレープフルーツ、半分
・トースト、1枚
《昼食》
・トースト、1枚
・ブラックコーヒー
《夕食》
・グリーンピース、1カップ
・バナナ、半分
・りんご(小)、1個
・アイスクリーム、1カップ
「ミリタリーダイエット」という名の由来
正直に言いましょうか? さっぱり分かりません。「TheMillitaryDiet.com」には様々な情報が掲載されています。
例えばFAQ、ブログ、ベジタリアンのための食事プラン…、ところが執筆者や専門家、もしくはサイト運営者の名前はどこにも見当たりません。まるで軍隊と関係あるかのようなタイトルが付けられていますが、そのような関係についてはサイトのどこを見回しても記されていません。現在、本サイト「メンズヘルスUS版」から同サイトに対し質問状を送り、情報開示を求めているところです。返答があればお知らせします。
ところでこの「ミリタリーダイエット」が、かつては様々な別名義で同様の活動をおこなっていたことを、私たちは突き止めています。
「クリーブランドクリニック・ダイエット」、「マヨクリニック・ダイエット」、「カイザー・ダイエット」、そして「バーミンガムホスピタル・ダイエット」などが使用されてきました。CNN.comによれば、それらいずれの組織においても、このようなダイエットは推奨されていないようです。
テキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校の准教授を務めているローランド・パケット氏は、「ミリタリーダイエット」はいかなる軍事組織とも無関係だと言います。2004年から2006年までアメリカ軍特殊部隊グリーンベレーに所属していたパケット氏は、軍が士官候補生に対し特定のダイエットを推奨することは無いと明言しています。
「常に激しい運動をおこなう組織に所属していましたから、私もその間はなんでも食べました」と、パケット氏は振り返ります。彼によれば、朝食として一般的だったのはパンケーキ、フレンチトースト、グレービーソースをかけたビスケット(大手チェーン「KFC」などにあるスコーン状のもの)などですが、この「ミリタリーダイエット」にはそのようなメニューは提示されていません。
またペンタゴンのスポークスウーマンであるカーラ・グリーソン少将も、同様の見解を示しています。
アメリカ合衆国国防総省は、「兵士向け栄養ガイド(Warfighter Nutrition Plan)」のリスト以外には、いかなる食事およびダイエットのプランも採用していないと、インタビューに対して答えています。
「ミリタリーダイエット(軍人ダイエット)」は安全で健康的なのでしょうか?
「ミリタリーダイエット」のようなカロリー制限を主体としたダイエットは、短期間においては、さほど健康に悪いわけではありません。
ただし、もしあなたがその状態で仕事にでなければならないのだとすれば、おそらく「立ち眩み」や「頭痛」、「疲労感」を経験することになるでしょう。
テキサス大学の准教授パケット氏によれば、「『ミリタリーダイエット』がほかの減量法と比べて優れている点など、何一つありません」と断言しています。
例えば特定の種類の食料を完全に制限しまう「ケトン式ダイエット」などと異なり、「ミリタリーダイエット」のメニューには少量ながらも数種のタンパク質、繊維質、そして脂肪分などが含まれています。特に健康的というわけでもなく、むしろごく一般的な食事と変わるところがないとパケット氏は指摘を加えます。さらに言えば、例えば初日の朝食にある「トースト」ですが、これが全粒粉のトーストなのか、それとも白パンのトーストであるのかなども示されておりません。
「このメニューだけをみて健康に良いか否かを判断することは簡単ではありません」とパケット氏は答えています。
1週間で5キロの減量は、本当に可能か?
「ミリタリーダイエット」での減量は可能かもしれませんが、5キロは現実的ではありませんし、またその効果が長続きするとも思えません。私たちの知る専門家によれば、それは体内の水分の減少による体重減に過ぎないというのです。
ヒューストン・メソジスト・ホスピタルでダイエット指導に当たるクリステン・キザーさんの見るところ、「ミリタリーダイエット」のウェブサイトに書かれている情報は正確ではありません。同ダイエットの食事プランに従うことで脂肪の燃焼が促進されるということなど無いというのです。
「そこに書かれているのは、どれもまやかしでしかありません。食材の特別な組み合わせが減量を助け、ホットドックやアイスクリームなどの不健康な食事を可能にするなど、でたらめです」彼女はそう指摘します。
健康問題に関する専門家の多くが週あたり0.5〜1キロの減量を推奨したうえで、それでさえも難しい場合もあると言っていると、キザーさんは付け加えます。遺伝的要素から元の体重まで、実に幅広い要素が減量には影響するのです。
つまり、万人に対し、同じやり方で同じだけの減量を可能にする方法など存在しないのです。
減量に正解はあるのか?
ダイエットを成功させた人、もしくはその道のプロ、いずれも同じことを言うはずです。「痩せるのには時間がかかります。減量とは先の長いゲームなのです」と、パケット氏も言っています。
ニューヨーク大学ランゴン校で医学的体重管理を専門とするホリー・ロフトン博士は、日々のカロリー摂取を把握するための食事日記をつけることを薦めています。それにより、例えば夕食時のパンを3切れから2切れに減らすなどと言った具体的な取り組みが可能になるのです。
加工食品やお菓子類、そして飲料を調整することで、徐々にその取り組みを始めれば良いとロフトン博士は助言します。もちろんのこと、健康的なダイエットに必要なのはじゅうぶんな野菜と、繊維質の豊富な果物、それからタンパク質の摂取です。
簡単に言ってしまうと、「ミリタリー・ダイエット」のような低カロリー摂取によるダイエット法は、短期間で多少の減量を実現するには効果的かもしれませんが、長い目で見れば無意味なことです。
「流行りのダイエットで減量することは可能ですが、それよりもリバウンドを心配したほうが良いでしょう」と言うのヒューストン・メソジスト・ホスピタルでダイエット指導に当たるクリステン・キザーさん。「耳の痛い話ではありますが、家族や社会的なサポートこそが、変化を持続させる最善の道なのです」と彼女は言います。
結論
結論として、パケット氏もキザーさんも、「ミリタリー・ダイエット」については、効果よりも害のほうが多いだろうということで合意しました。「すでに不健康な食生活を送っている何百万人ものアメリカ人にとって、このダイエットがさらなる悪影響を及ぼすと思いますか?」という問いに関して、キザーさんは「YES」と最後に答えてくれました。
Source /Men’s Health US