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2018年2月23日に行われた平昌オリンピックのフィギュアスケート女子フリー。金メダルに輝いたアリーナ・ザギトワ選手(15歳)と銀メダルを獲得したエフゲニア・メドベージェワ選手(18歳)の得点差は、わずか「1.31点」でした。
 

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その明暗を分けたのは彼女たちの演技構成だと伝えられています。その影響で「国際スケート連盟(ISU)」は、2018年6月の総会でルール改正を提案するそうです。 

>>>なぜ「採点ルール」を変えるという議論が上がったのか、採点方法をどう変えるのか、ご紹介します。
 

得点差はわずか「1.31点」

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 平昌オリンピックで「ロシアからの五輪選手(OAR)」のエフゲニア・メドベージェワ選手が、映画『アンナ・カレーニナ』の楽曲に合わせて圧巻の演技を披露すると、観客からは大歓声と拍手が湧き上がりまいsた。それに感極まったメドベージェワ選手は目に涙を浮かべましたが、しばらくすると空気が一変…。

 なんと彼女の得点が、ライバルであるアリーナ・ザギトワ選手と同点の156.65点。つまり、ショートプログラムと合わせた合計は238.26点で、わずか1.31点差でザギトワ選手に敗れたということです。その予想外の結果に、会場がどよめいたことも記憶に新しいかと思います。(次ページに続く)

メドベージェワ選手は2018年1月にケガから復帰したばかり

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 ザギトワ選手が2017年12月に開催されたGPファイナルでシニアシデビューを果たすまで、メドベージェワ選手は世界女王の座に就いていました。しかし、2017年末に右足を故障し、欠場を余儀なくされるとザギトワ選手がGPファイナルで初優勝。そして、メドベージェワ選手の復帰戦となった欧州選手権でも、世界歴代2位の合計238.24点で優勝を飾ったのです。

 欧州選手権で新星ザギトワ選手が首位に立ち、女王メドベージェワ選手が2位に後退すると、海外メディアは「ミシェル・クワン VS タラ・リピンスキー」や、「トーニャ・ハーディング VS ナンシー・ケリガン」のように、2人をライバル関係に仕立てあげるように…。しかし同じコーチのもとでトレーニングを行っているメドベージェワ選手とザギトワ選手は、お互いを「親友」と表現し、ライバル関係であることを否定しています。

 とはいえ、平昌オリンピックでザギトワ選手に敗れたメドベージェワ選手のショックは大きかったようで、元フィギュアスケート選手のジョニー・ウィアー氏いわく、彼女は演技を終えた後、コーチに「私はできる限りのベストを尽くしたつもりなのに.....」と語っていたといいます。(次ページに続く)

ザギトワ選手の演技構成に疑問の声!?

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 平昌オリンピックで優勝したザギトワ選手でしたが、彼女の演技構成に対し疑問の声が上がっているのも事実…。彼女は基礎点が1.1倍になる後半に難易度の高いシャンプを集中させていたからです。フリーのプログラムで彼女は、演技序盤にスピンやステップシークエンス、そして後半に7つ全てのジャンプを披露し、技術点を稼いでいたのです。

 一方のメドベージェワ選手もジャンプを後半に集中させていましたが、冒頭に3回転フリップ−3回転トウループの連続ジャンプを成功させていたため、ザギトワ選手ほどのバッシングを受けることはなかったと言われています。(次ページに続く)
 

しかし演技後半ジャンプはルール違反ではない

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 ボーナス得点を狙ったザギトワ選手の戦略はルール違反ではありません。ただ「フィギュアスケートにおけるバランスのとれた演技構成が失われつつあるのが残念」とジャーナリスト、ジャッキー・ウォン氏は語っています。

 ウォン氏はフィギュアスケートに特化したウェブサイト『Rocker Skating』を運営していて、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」に「フィギュアスケートの世界でもっとも信頼されている批評家」と称された人物でもあるのです。2017年NHK杯国際フィギュアスケート競技大会が開催された時も、彼はバランスのいいプログラムの重要性を訴え、後半にジャンプを詰め込む選手は演技構成点を下げるべきだと主張していました。

 また女子だけでなく、フィギュア男子にも同じような傾向が見られていることも指摘。男子の場合、ジャンプを後半に集中させることはあまりないですが、4回転ジャンプが飛べる・飛べないによって、得点に差がついてしまう。その証拠に、アメリカのネイサン・チェン選手が平昌オリンピックのフリーで4回転ジャンプを5回成功させ、高得点を叩き出したのに対し、アダム・リッポン選手は4回転ジャンプに挑戦しなかったため、フリーの結果は10位でした。(次ページに続く)
 

「ISU」は2018年6月の総会でルール改正を提案する予定

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 ISUは技術要素と芸術性のバランスを重視するため、難易度の高いジャンプの基礎点を下げたり、フィギュアスケートの競技を技術部門と芸術部門の2つに分けることも検討していると米スケート専門メディア「アイスネットワーク」は報じています。

 ISUシングル&ペア・スケーティング委員会の委員長を務めるイタリアのファビオ・ビアンチェッティ氏は「このスポーツの未来、そしてフィギュアスケートの人気を取り戻すため、我々は改正の議論を進めています」とコメント。

 ジャーナリストのジャッキー・ウォン氏もビデオ判定に使用されるカメラが一台しか設置されていないことを問題視し、ボーナス狙いの演技に対してペナルティを科するべきだとアピールしています。ISUが彼の意見も取り入れているかは不明ですが、採点方法の変更は2018-2019年シーズン、つまり2018年の秋までには可決されると言われています。

 金メダルを獲得したザギトワ選手も、銀メダルのメドベージェワ選手も、ミラノで開催される世界フィギュアスケート選手権2018年に参加予定。プレスカンファレンスでメドベージェワ選手は「今回の大会で技術点の大切さを改めて実感しました。次の大会までには技術面を強化したいです」「私の選手生命はまだまだ長いと思います。そしてフィギュアスケートが大好きなのです。その気持ちが変わることはありません」と意気込みを語っていました。

 日本からはどの選手が選出されるのか、そして世界の頂点を制するのはどの選手なのか…。平昌オリンピックは閉幕しても、フィギュアスケートからはまだまだ目が離せません!
 

From Good Housekeeping
Photography / Getty Images
Translation / Reiko Kuwabara