◇ランニングが健康に与える可能性
ランニングには、大腿四頭筋を太くすることよりも、はるかに優れた恩恵があることを示した研究結果が、実際にいくつもあります。
そして、その恩恵のひとつとして、メンタルヘルス関連の問題と戦う際に、ランニングは効果的なツールになり得ること。さらに、まるでみぞおちにパンチを食らったくらい気分の優れない状況に対処する際にも、ランニングが役に立つ可能性があります。
エディ・クラークソンさんは、そのことを示す生き証人です。
◇【実体験】ランニングを始めて精神的に健康になった
エディさんは大学2年生のとき、ある病に見舞われました。本人は当初、「ひどい寒気と吐き気」くらいに思っていましたが、実はそれが急性骨髄性白血病であることがわかりました。
「ランニングが、自分の病気や将来への見通しに関する不安を和らげるのに役立つ」と知ったエディさんは、そのことに大いに感激。アシックスが展開する「I MOVE ME」キャンペーンに参加することにしました。
エディさんはこのキャンペーンの応援側に回って、体を動かす(走る)ことの動機づけをしていくことに励んでいたようです。
「癌(がん)にかかると、生活がすべて癌に取り囲まれ、癌自体が自分の人生になってしまうのです」と、エディさんは説明しています。
また、「私の場合、癌が再発する確率は五分五分で、文字通りコインをトスするようなものでした。私の心は常にこの数字でいっぱいいっぱいで、前向きな考えはほとんどすべて押し出されてしまっていたのです」と、エディさんは当時を振り返っています。
エディさんは、自由の感覚を取り戻そうとしてランニングに目を向けました。
「ランニングは私に人生についての視野を広げてくれたのです。つまり、私が必要としていた自分を信じるという感覚を与えてくれました。癌の治療後には、私はひどい不安を感じていました。家から一歩も外に出なかったのです。病的な潔癖症となり、友だちとも会いたくなかったんです…。しかし、トレーニングを始めてみると、私の見通しは変化したのです」と。
「私は様々な恐怖症を弱点ではなく、克服すべき課題と捉えるようになりました。ランニングを始めたことで、私はそれ以前とは別のマインドセットをもてるようになり、そして、これがもっとも重要なことだが、私は自信を取り戻すことができました」。
ランニングは、エディさんが癌から回復する上で、とても大きな役割を果たしました。
そして、彼の負けず嫌いな性格が、彼の心のなかの火に油を注ぐことになったのです。エディさんは「とんでもない目標」を設定した上で、それをもっと小さな、手に負える大きさのステップに分解して、大きな夢を実現しようとしました。
「私はいまだにこのやり方で、自分を前に推し進め、自らに課したより大きな課題で成功を収められるように正確を期しています。自分の置かれた現状がどんなものであろうと、最終的なゴールを視覚化できれば、そのゴールに到達できると私は信じています。ランニングは、今後もつねに私の治療法であり続けるでしょう」と、エディさんは話します。
◇汗をかくことが、役に立つことだってある! うつ病に対するランニング効果
読者の皆さんが不安に対処したり、さらにひどい状況も…。ただ息をするのも苦しいほどの状態下の陥ったときのメンタル面にフォーカスが必要となった場合にも、汗をかくことが大いに役立つ可能性があるのです。
ランニングが具体的に、どんな恩恵を人間の脳にもたらす可能性があるのかを皆さんに知ってもらうために、チェルシー心理クリニックの診療部長でコンサルタント・サイコロジストとして働くエレナ・トゥローニ医師に話を聞きました。
【1】 ストレス軽減
もし皆さんが、普段の生活においてストレスに圧倒されている状態なら、おそらく、「ランニングをしてみよう!」なんていう発想は出てこないかもしれません。それでも走ることが、皆さんの新しい味方になってくれる可能性があるのです。
「ストレスや不安は、緊張を感じたり、眠れなくなったり、否定的なことをくどくどと考えたりするなど、様々な身体的症状として表れる場合があります」とトゥローニ医師は言います。そして、「ランニングはリラックするのに役立ち、それを通じて心配や不安、否定的な思考のサイクルを減らすことができるのです」と医師は続けてアドバイスしています。
【2】鬱(うつ)への対処
鬱(うつ)状態になると、感覚が鈍くなり、引きこもりがちになることがあります。そんな状態では、ランニングに出かけるというのは、もっとも魅力的なことには思えないのかもしません。しかし、アシックスのランニングシューズ「GEL-NIMBUS 20」の靴紐を結び、気乗りのしないランニングに出かけることで、鬱への対処がしやすくなることがあるとする研究結果が存在します。
「鬱になったことがある人なら、それが否定的な事柄に特徴づけられた心の状態であることをご存知でしょう。否定的な事柄とは、自分自身についての否定的な考えや、将来に対する否定的な予想、そして世界と関わりたいという気持ちが全体的に失われることなどが挙げられるのではないでしょうか…」と、トゥローニ医師は言います。
「鬱状態の人は引きこもってしまい、あまり体を動かしたがらないのです。感情に反する行動をすることは、このネガティブなサイクルから抜け出すための強力な方法であり、ランニングはこれを達成する上でカギを握る活動になり得るのです。実際に、エアロビのトレーニングが一部の心理セラピーと同じくらい鬱の治療に効果的であることが、これまでの研究で明らかになっています」と、トゥローニ医師は語っています。
【3】 眠りの質の改善
ベッドに入って、眠ろうとしているのになかなか寝つけない…、そんな寝つきの悪さ以上に不満のたまることはありません。
たとえばマーケティング部門で働く同僚が、週末にあった娘の誕生会での出来事を事細かに知らせるメッセージを送ってきたときには、すぐに眠くなるのに…(笑)。いざ眠りたいと構えたときには、なかなか眠くならない…そんなことがよくあるかもしれません。
「不眠というメンタル面の不調を示す重要な症状を緩和する上で、激しい運動はとてもポジティブな影響をもたらします」と、トゥローニ医師は指摘しています。
また、「睡眠は人間の感情面の健康状態がわかるバロメーターとよく言われています。不安な時や鬱状態のときには、眠るのに苦労することがめずらしくないのです。体内時計の働きを調整し、そのことを通じてより長く、しっかりと休息できる眠りを手に入れる上でランニングが役に立つ可能性があるのです」と、トゥローニ医師は続けて説明しています。
【4】マインドフルネスの増進
マインドフルネスという言葉を聞くと、このころでは自動的に無視したくなるかもしれません。
しかし、自分がもっとも居心地の悪い思いをしたときのモンタージュに心を奪われる代わりに、いまという瞬間に心を集中させるこの能力は重要です。
「ランニングは完全な意図をもって、マインドフルに行える活動」とトゥローニ医師は反しており、また、「私たちは役に立たないことを、くよくよ考え、その結果とてもネガティブな気持ちになることも少なくないのですが、そんな自分の体とつながり、自分の体に改めて注意を集中させるのに、ランニングが役立つのです」と最後を締めくくってくれました。
Source / Esquire UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。