減量に苦しんだ人の多くが、「なるほど! こうすればよかったのか!」という瞬間を経験しているはずです。それはカチッと音を立て、世界が切り替わる瞬間です。人の肉体は衰えてゆくものです。よって、ある時を境に、なんらかの手を打たなければなりません。
我等が「アルティメット・メンズヘルス・ガイ」で第2位を獲得したジョッシュ・イングラハム氏は、まさか、自分にもそのような瞬間が訪れるなどとは思ってもいなかったそうです。
イングラハム氏はずっと、自分はそこそこ健康な人間だと思って生きてきました。
オハイオ州クリーブランドで生まれ育ち、テコンドーを習い、黒帯四段にまでなりました。地域2部リーグの野球選手だったこともあります。5キロほどなら苦もなく走ることができます。食生活にも気を遣ってきました。
ところがある一年を過ごした後、イングラハム氏は思いもよらない世界に自分がいることに気づきます。
妻との間に、女の赤ちゃんを授かりました。そして、かつての大学野球の選手にとっては望んでも叶えることなどできない仕事…クリーブランド・インディアンズのエグゼクティブ・シェフという新たな役目にも就きました。ちょうどインディアンズがワールド・シリーズに出場することになる、まさにその年のことです。
夢のような職場での仕事に邁進し、帰宅すれば赤ちゃんをあやす満ち足りた日々のなかで、フィトネスがおろそかになっていったのは事実です。
体重は100キロオーバー
「そのシーズン中はずっと、自分の時間などありませんでした。ワークアウトなんて、おそらく一度もしなかったのではないでしょうか ―― それから、すべてが狂いだしたのです。睡眠時間も足りず、食に気を遣うことも忘れてしまいました。いい加減な食事ばかりしていました」と、イングラハム氏は振り返ります。
体が徐々に重くなってゆくのが、実感できるほどだったそうです。そんな折、90日間の懸賞付きフィットネス・チャレンジへの招待を謳うEメールを受信したそうです。ワークアウトと栄養学の指導付きで、そのうえ賞金まで用意されているということ。そして、「自分の身体能力と運動経験があれば、賞金の獲得だって可能だ」とイングラハム氏は考えたそうです。
早速、冒頭左側にある「ビフォー」の写真を撮って送りました。体重は100キロオーバー、自分で思っているよりも、かなり過酷なワークアウトが求められることになったそうです。
「実は写真を撮ってみるまで、自分に起きた変化に気づいていませんでした…。ショックでした。これが自分の体だとは、とても信じられませんでした」と、イングラハム氏は証言しています。
そして、90日間の妄信的な取り組みから始めたそうです。週5日間、毎日5キロのランニングと体力強化も。すると3カ月後、イングラハム氏は5キロほどの減量を成し遂げたのでした。しかしながら、賞を得るまでには至りませんでした。そして他の受賞者の写真を目にし、ショックを受け、苛立ちすら覚えたそうです。
「なぜ自分は、もっと良い結果を得ることができなかったのか?」と、思い悩んだそうです。そしてもう一度、その90日間のチャレンジに申し込んだのです。自分の取り組みに何が欠けていたのか? 今回の目的は? それを自分自身に確認したかったのです。
再び90日間のチャレンジを遂げたイングラハム氏、彼の「おっさん体型」はもはや過去のものとなりました。そして、以下に挙げる生活の意識改善を行えば、「誰もが岩のような腹筋を得ることができる」と強く信じているのでした。
【1】ワークアウトのスケジュールを守る
自らの体重の増減を観察することによって、それまでの自分の取り組みには数多くの間違いがあったことにイングラハム氏は気づきました。
「充分な休憩をとらなかったことが原因で、ワークアウトの効果を得る前に、燃え尽きてしまっていたのです」と彼は言います。「2度目の90日チャレンジの際には、水曜と土曜をオフに決めました。その効果はありました。オフの翌日には、ワークアウトに対する渇望も芽生えるのです。次のワークアウトが、実に楽しみになるんです」と。
休息日に加え、ランニングの代わりに「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」をメニューに組み込んだそうです。
毎朝目覚めるとガレージへと向かい、バーベルおよびダンベルのリフト、そしてディップスやプルアップのようなボディウエイト・エクササイズをおこないました。そして、レップの回数を決めるのではなく、それぞれ限界まで繰り返すことに決めました。「限界を意識するまで、回数など数えないようにしたのです」と、彼は打ち明けています。
そのワークアウトとは?
ガレージでの一連のワークアウトを終えると、今度は公園へと向かいます。
10メートルほどの間隔で、コーンをふたつセットします。そして10分から20分の「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」を、週3日間おこないました。「たとえばコーン間のダッシュでの往復を、30秒やったら30秒休む、それを10分間続けるというトレーニングです」と、イングラハム氏は言います。
「走る代わりにジャンプに切り替えたり、エクササイズを組み合わせました。ただし、20分以上は絶対に続けません」。
2歳児と責任ある仕事を抱える身として、スケジュール管理の重要さにも気づきました。
「わたしに許されたワークアウトの時間は、早朝だけでした。睡眠時間を1時間削りましたが、それは仕方のないことです。毎朝8時には、すべてを終えていなければなりません。娘の目覚める時間なのです。ワークアウトが終わらないから、『もうちょっと寝ていろ』なんて言えませんからね」。
【2】飲酒制限
新しい運動習慣に慣れるまでは、飲食についてはややおざなりとなっていたようです。
そして慣れてくると、イングラハム氏は食事に注意を向け始めました。「じゅうぶんな量を食べているとは言えませんでした。加工されたでんぷん類、それから炭水化物を制限しました。乳製品もやめました」と、イングラハム氏は振り返っています。
そして、「禁酒」を決意しました。
「アルコール類は常に大好きでした。ワインの魅力に取り憑かれ、ソムリエを目指そうと考えたとこもあるほどです」、彼はそう打ち明けます。「しかしながら、自分の求める結果を得るためには、これは諦めるべきものであると気がついたのです」と。さらに…。
「ただの無駄なカロリーなんですよ。付き合いをいくつか犠牲にしなければならないかもしれませんが、大きな改革を求めるのであれば、100パーセント打ち込まなければなりませんから」とイングラハム氏。
それから食生活の改革が、少しずつ進んだそうです。「一皿すべてを平らげるのではなく、味見程度で満足すべきものだってあるのです」と、言うことです。
【3】自炊
「プロの料理人であり自分の立場を再認識して、自分の口に入るものは自分で可能な限り用意するルールにしました。そして、何を摂っているのかに関して、いままで以上に意識するようにしました」と、イングラハム氏は言います。この意思を強くもてば、レストランでメニューを開くたびに舞い降りる誘惑の天使を、寄せ付けないことにも繋がるのです。
科学的なある研究結果も、意識をさらに強固にする助けにしました。それは1万1千人の男女を対象に、イギリスで行われた調査結果です。そこには次のように示されていたのです。
「1週間のうち5食以上自炊する人は、週3食以下の人に比べて肥満者数は28パーセント少ない。さらに体脂肪については、24パーセント少ない」という結果を、頭に刻みこんだということです。
そうして、割れた腹筋を得ることができたイングラハム氏。それまでは、そこにあったことにすら気づかずにいたそうです。その存在が自覚できたとき、自ら選んだ道が間違っていなかったことを確信したそうです。
そして現在のイングラハム氏は、これまでの人生のなかで最良の日々を過ごすようです。イングラハム氏がエクササイズを開始して、すでに200日以上が経過しました。いま、彼の体重は87キロです。ですが、この習慣を変えるつもりはないそうです。
「まだまだすべきことがあると感じています。だから、ここで切り上げようとは思いません」と、最後に語ってくれました。
From Men's Health
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。