公共の場にウンチを残す彼らの心理的要因を、専門家が解説します。
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Here's Why 'Serial Poopers' Just Can't Stop Pooping in Public
ここ数カ月にわたって、「連続脱糞魔(シリアル・プーパー)」という耳慣れないフレーズに私たちは悩まされてきました。公共の場で排便を行い、人々の目につくところにそれを遺してゆく犯人を指す言葉になります。
よその庭や歩道、そしてドラッグストアの前などに、毎朝のジョギングのついでに脱糞を繰り返す「脱糞魔」…実はつい最近、2017年9月のことです。アメリカにそんな女性が実存し、話題になっていたのです。
最近では南イリノイ大学の学生寮のランドリー内の洗濯機の中に、1度や2度ならず…なんと8度も排便を繰り返していた「便通魔」の報道もあったばかりです。空っぽの洗濯機ではなく、服の入った洗濯中のマシーンのなかに排便はなされていたのですから堪ったものではありません。
このような公衆排便は、肛門がゆるいせいで起こる事態なのでしょうか? それとも、究極の厭世的(えんせいてき=人生に悲観し、生きているのがいやになっているさま)行為なのか? ほぼ間違いなく“後者”であると、在ボストンの臨床心理学者シャロン・チルバン博士は分析しています。
「これは極めて明確な厭世的主張であり、犯罪的破壊行為です」と、博士は言い放ちます。なかには、自分がなにをしているのかを理解できない重度の精神異常や、もしくは公衆トイレにたどり着けなかった酔っぱらいといった例外的なケースがないわけではありません。しかし彼らでさえ、いくらかのプライバシーを求めて、ゴミ捨て場の影に忍び込むなど身を隠そうとします。(次ページへ続く)
「連続脱糞魔」はむしろ、極めて意識的にその行為に及びます。
そして、上記のご近所ランナーのように、自らの正体が明かされることを恐れている風でもないのです。
「これはメッセージなのです」と、チルバン博士は言います。「常軌を逸した行為を通じ、社会などに対する攻撃性を表明しているのです」と…。
公共の場でウンコをするなんて、まさに常軌を逸している以外なにものでもないでしょう。
このような敵愾心(てきがいしん=敵に対して怒りを燃やし、これを倒そうとする闘志)の影に潜む動機とは、いったいどのようなものなのでしょうか?
直接本人の診療をしていない以上、心理学者には推測することしかできません。ですが、そこにはいくつかの際立った要因が挙げることができるそうです。
「たとえば、タイヤを切り裂くとかグラフィティなどの落描き行為、芝生を傷めつけるなどといった破壊的行為の場合、その動機は怒りや妬みです」と、彼女はそう前置きしながらこう言いました。
「もしかしたら近所の庭先に排便する犯人は、他人の暮らしぶりを妬ましく感じているのかもしれません。さらに洗濯機への脱糞行為は、自分が使いたかったタイミングで洗濯機の空きがなかったことへの単純な怒りが原因かもしれません」。(次ページへ続く)
ただし、今回のように連続性のある場合にはどうでしょう。
1度や2度なら、「緊急的に便意を抑えきれなかった」と説明できるかもしれません。しかし、7回も8回もおなじ場所でこのような行為を繰り返すとなると? 「もしかすると、中毒症状を疑わなければなりません」と、チルバン博士は言います。
繰り返せば繰り返すほど、重度の中毒症状に陥っていくのです。
「見つからずにやり遂げることで、さらに衝動が増す可能性があります――ある種の万能感を覚え、被害者はそうされて当然の相手なのだと正当化するようになります。行為を繰り返すたびに罪悪感は失われてゆき、むしろ増長し、報復への渇望が発露するのです」と、彼女は続けてコメントしてくれました。
「アメリカ科学健康協議会(the American Council on Science and Health=ACSH)」は、このような公衆脱糞行為について「排泄障害」の疑いもあるとしています。
「治療を要する精神疾患により、排泄が適切になされないこと」が原因であるという見解です。しかしながら、臨床心理学者のバート・ロッシ博士は、愉快犯的行為である可能性も高いと見ています。(次ページへ続く)
怒りの衝動に導かれたものである可能性
「怒りの衝動に導かれたものという可能性については同意します。でも、それだけでなく、他の要因の関わりも無視できません」、というのがロッシ博士の見解です。
たとえば職場の上司に対して、禁じ得ない怒りを覚えたことが1度や2度あなたにもあるかと思います。その結果として、上司の家の玄関先に脱糞行為を行ったなどという経験についてはいかがでしょうか?
つまり連続脱糞魔には、怒り以外の要因がある可能性が高いということになります。「自己愛性人格障害であるか、または強迫性障害の可能性を無視することはできない」と、ロッシ博士は言います。
「思考障害の可能性も、彼らについては疑わなければなりません。このような行為が、白日のもとに晒されたらどうなるでしょう――つまり、なにかしらの問題を抱えているが、他人はそれに耳を貸してもくれないし、気づいてもくれない――だから、脱糞をすることで注目を集めよう」という仮説を立てています。
そしてもちろん、彼らは白日のもとに晒されることになります。ウンコは実際にかなり強力な代物であり、攻撃性を示すための最も原始的な方法といえるでしょう。(次ページへ続く)
実際に起こった社会問題
2017年9月、実際に海外のメディアで取り上げられた、毎朝のジョギングのついでに脱糞を繰り返す迷惑行為の映像です。