「不妊治療の現場では、腟の中で射精ができない射精障がいの患者が増えています」と話すのは、獨協医科大学埼玉医療センター 泌尿器科講師の小堀善友氏。ケアをするのが遅れるほど重症化しやすいと言われています。そんななか、TENGAヘルスケアは、男性機能をトレーニングすることができる「メンズトレーニングカップ」を開発。今回、その開発に至るまでの経緯や業界初の試みについて、TENGAヘルスケアの代表取締役 鈴木雅則氏と取締役 佐藤雅信氏にお話をうかがいました。

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TENGA Healthcare」写真左から、代表取締役 鈴木雅則氏、取締役 佐藤雅信氏

 
メンズヘルス編集部(以下MH):
まず最初に、TENGAグループのひとつである「TENGAヘルスケア」の会社設立の経緯や概要について教えていただけますでしょうか?

佐藤雅信氏(以下佐藤さん):「株式会社TENGA」を設立したのは2005年で、その当初から「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」という理念があり、その派生として「TENGAメディカル」として医療にも拡げていきたいという思いがありました。それに基づいて2005年から2009年には、ハンディキャップのある人のサポートのため、つまり福祉向けとして活動をし続けていました。例えば、手が不自由な方へのための製品を開発したりしていました。そんな中、2009年に獨協医科大学埼玉医療センター 泌尿器科の小堀善友先生(金沢大学医学部卒)から、「腟内射精障がいの患者の方のリハビリに使用できるのではないか」というお問い合わせをいただきました。そこから、実際に腟内射精障がいの方やED(勃起不全)の患者の方に医療目的としてTENGAの製品を使用いただいて、医学論文として成果を発表していただく経緯になったという背景があります。そういったタイミングのなかで、2016年に培ってきたノウハウを活かして医療・福祉・教育分野の専門家と連携し、性の悩みを改善する製品やサービスを提供する「株式会社TENGAヘルスケア」を設立することとなったのです。

 
MH:「性の快楽」へ追求というよりは、「医療としての活躍」という方に重心を置かれているということですね。

佐藤さん:そうですね。TENGAというと「オナホール、オナカップ」と娯楽要素のイメージが先行すると思うのですが、より健康や医療に向けての貢献に力を入れた会社になります。「性の問題」に対して社会が寛容になり、個人が発信することを躊躇しない社会を目指しています。  

日本初!男性機能のトレーニングツール「メンズトレーニングカップ」について

MH:今回、日本で初めて開発された商品、「メンズトレーニングカップ」について教えてください。

鈴木雅則氏(以下鈴木さん):「メンズトレーニングカップ」シリーズは、遅漏、腟内射精障がいなどの男性機能の悩みを持っている方のために作られたアイテムです。硬さの違う5つのカップを段階的に使用することで、男性機能をトレーニングすることができます。

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「メンズトレーニングカップ」全5種(01 HARD TYPE/02 MEDIUM HARD TYPE/03 REGULAR TYPE/04 MEDIUM SOFT TYPE/05 SOFT TYPE)、サイズ:各69×69×155mm、参考価格:各1000円(税抜き) ●お問い合わせ先/store.tenga.co.jp/thc/ 

 
鈴木雅則氏(以下鈴木さん):第一段階で使用しただくのは、「02 ミディアムハードタイプ(02 MEDIUM HARD TYPE)」から。それで射精できることができたら、02、03…と徐々に弱い刺激のモノに変えていき、最終的に最も刺激の弱い「05 ソフトタイプ(05 SOFT TYPE)」で射精できることを目指します。02でも射精が難しい方は、最も刺激の強い「01 ハードタイプ(01 HARD TYPE)」から使用してみてください。腟内射精障がいの一因としては、たとえばペニスを過剰に強く握る、床に押し付ける“床オナ”等の方法でマスターベーションをすることに慣れている男性は、非常に強い圧迫でしか射精ができなくなってしまうことも。それゆえ、実際にパートナーと性交中に腟内で射精できないということになりかねないのです。

MH:開発するにあたって、苦労したことや、こだわった点はありましたか?

佐藤さん:快楽向けとは違った視点で開発することを非常に意識しました。ペニスへの締め付けを強めすぎず、女性器で得られる刺激に近づけるよう工夫するのが大変でしたね。柔らかくなればなるほど、オイルと樹脂の配合バランスが難しくなるのです。柔らかくするには、オイルの比重を上げるのですが、上げ過ぎるとオイルが溶け出してしまい、商品として成立しなくなってしまいます。そう言った意味で、「柔らかさの追究」ということに非常に苦労しました。今までのTENGAの商品「オナカップ」などは、“膣を模さない”ことを前提に開発していましたが、今回は、“いかに膣に近づけるか”ということが課題だったんです。
   

MH:男性機能の悩みの原因のひとつとして、不適切なマスターベーションが挙げられる可能性を指摘していますが、潜在患者数はどれくらいいるのでしょうか?

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鈴木さん:TENGAヘルスケアの調べによると、腟内射精障がいの潜在患者数は推計で270.2万人と言われています。腟内射精障がいの原因の70.9%は、「不適切なマスターベーション」にあります。不適切なマスターベーションの例としては、「強すぎるグリップ」「特定の体位での射精(脚に力を入れる脚ピンなど)」「プレス法(床や壁に押し付ける床オナ)」などが挙げられます。腟内射精障がいは、長い習慣と癖によって形成されます。そのため長期的な治療が必要な場合がありますが、自分に合った改善方法を見つけてきちんと継続していけば、症状を改善することも期待できるのです。

MH:「不適切なマスターベーション」の根源を調べるために、日本人男性の「オナニー国勢調査」を実施したとうかがいましたが…。

鈴木さん:そうなんです。近年、「少子化」や「セックスレス」といった社会問題を背景に、セックスについての調査結果がメディアに注目されていまが、マスターベーションに関する調査はほとんど皆無という状況でした。そこで日本で初めて(※1)、デリケートな部分に踏み込んだ男性のマスターベーションに関する調査「全国男性自慰行為調査2017」(通称:オナニー国勢調査)を行い、 2017年12月5日(火)にTENGAヘルスケア公式サイト上で結果を発表しました(※2)
 

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鈴木さん:たとえば、普段マスターベーションをする時によく見ているものは、「無料の実写アダルト動画」が全体の79.5%を占める調査結果となりました。また、世代別に見てみると、「有料の実写アダルト動画」の全体平均17.7%に対して30代・40代は24.8%となっており、有料コンテンツのコアユーザーは30~40代男性という結果が出ました。さらに、「妄想のみで行う」は60代が21.5%と比較的高く、「アダルト漫画」は10代が27.5%ときわめて突出した数値が出たのです。

 
※1…「TENGAヘルスケア」調べ、2017年12月5日(火)
※2…調査方法について
インターネットによるアンケート調査 / 調査実施期間:2017年9月25日 - 2017年9月28日
リサーチ会社:楽天リサーチ株式会社
[ 1 ] 事前調査 調査対象:全国の15歳-64歳の男性 / サンプル数:5,279人
[ 2 ] 本調査 調査対象:現在マスターベーションを行う頻度が「2, 3ヵ月に一回程度」以上の男性を、 [ 1 ] 事前調査回答者の中からサンプリング/ サンプル数:2,000人(15歳から5歳刻みで10グループ 各200人)


MH:先ほどお話でありました、腟内射精障がいの一因である「不適切なマスターベーション」は、どの層で多く見られる結果になりまたか?

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鈴木さん:普段行うマスターベーションの方法では、「手を上下にピストンさせ、ペニスを刺激する」というものが圧倒的多数でした。その他の方法も行っている割合は10〜30代が総じて高く、若年層のほうがマスターベーション方法のバリエーションが豊富ということが見て取れます。同時に、「脚をピンと緊張させた状態で行う」(通称:脚ピン)、「布団や畳、床などにこすりつける」(通称:床オナ)といった方法は、10代が特に多く、10人に1人以上が行っています。しかしこれらは、女性器の中で射精できない「腟内射精障害」を引き起こすおそれがある不適切な方法との指摘もあり、注意が必要なのです。  

MH:今回の新製品や調査を基に、今後は、どのような活動を行っていきたいと考えていますか?

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佐藤さん:現代社会が生んだ「性の悩み・問題」というものも多くあるので、今後は学校での「性の教育」ということにも力を入れていきたいと思っています。適切な性の知識がないがために、いろいろな問題が起こってしまいます。そういったことを、早い段階から「何とかできないか」と思って活動していきたいと思っています。

 今回、インタビューをさせていただき、なかなか性に対するオープンな会話が少ない社会において、男性の性への問題から日本の少子化問題、そして10代への性教育を真正面から取り組んでいる「TENGAヘルスケア」。日本社会がいま抱えている問題の解決にいちばん近いところにあり、革新(確信)的な日本企業と言えるでしょう!

 
◇あなたは大丈夫? 
Dr.小堀の「オトコのミカタ」で
腟内射精障害セルフチェックを公開中
http://dr-kobori.com/shasei/self-check/


◇「オナニー国勢調査2017」の結果
https://tengahealthcare.com/special/report/