ジャーナリストのスコット・カーニー氏は、実はこのことを信じていなかったのです。そう、彼は疑心暗鬼のままフィットネス指導者ウィム・ホフ氏の取材を行ったのでした。すると、彼はその後、自らが気づいていなかった超人的な力に目覚めていることに気がついたのでした…。

 実はこの取材の目的自体、詐欺を暴こうとする調査取材だったのです。そうしてジャーナリストのスコット・カーニー氏は、ポーランドへ旅立ったのでした…。(本文へ続く)

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Courtesy of @sgcarney(Instagram)

ウィム・ホフ氏というオランダのフィットネス指導者の書籍とは!?

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 スコット・カーニー氏がターゲットにしていたのは、ウィム・ホフ氏というオランダのフィットネス指導者で、彼は「自律神経が司る体の機能(免疫システムや代謝など)を制御し、超人的な忍耐力や不屈の精神を手に入れられるよう手助けできる」と主張して、1週間2000ドルのトレーニングコースを販売していました。

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写真、ウィム・ホフ氏。

「それは詐欺では!?」と疑いの目で調査取材に乗り出したのがジャーナリストのカーニー氏だったのです。しかし、彼はホフ氏の詐欺を暴くどころが、自分自身の気持ちが大きく変わることになったのです。また、彼はホフ氏のもとで学んだことを、書籍『What Doesn't Kill Us』にまとめたのです。結果、この本は「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラーリストにも入ったのでした。

 ホフ氏と過ごしたわずか1週間の間に、カーニー氏の体重は3kg落ち、「気温-16度の中で水着1枚でいる」、「3分間も息を止める」といったことができるようになったと言います。

 今回はそんなカーニー氏に著書の内容や、ホフ氏から学んだことなどについて話を聞きました。(次ページへ続く)

書籍『What Doesn't Kill Us』は、何についての本?

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カーニー氏:私たちはこれまで、健康には2つの柱があると考えてきました。それは「食事」と「運動」です。食事は「エネルギーをどのように取り入れるか?」ということで、運動は「エネルギーを体を動かすことによって、どのように使うか?」ということになります。ですが、実際は3つ目の柱があり、それは居住環境なのです。気温や高度、その他の多様な環境的要因を感じることは、人間のエネルギーの使い方や免疫システムの機能に多大な影響を与えます。なかでも、私がウィム・ホフ氏の教えを通して目を向けたのが、寒さに身をさらすことです。このオランダのフィットネスフリークは、極端に寒いとも言える環境を利用し、自らの体をある意味でハックし、体の無意識の機能がうまく働くよう制御してしまいます。最初は彼のことをペテン師だと思ってましたが…。

 しかし、2012年にポーランドに行き、彼の方法を試した結果、自分にも同じようにできたのです。それまでの私は、常夏のロサンゼルスに住み慣れていましたが、それからは-16度の雪が降る中でも水着で暖かく快適にいられるようになりました。これは自らの価値観を変える経験でした。

 
MH:ウィム・ホフ氏のバックグラウンドは、どのようなものですか? 科学者、あるいは医者なのでしょうか?

 
カーニー氏:いいえ、彼は常軌を逸した人物です。預言者とも言えますが、とにかく常識では測れない人なんです。彼は1960年代にアムステルダム近辺で育ち、常に独創的な発想をもっていました。彼が氷水に飛び込み始めたのは10代後半から20代前半の頃で、自分の体がどのように反応するかを見るためだったと言います。この行為を通じて、彼はこれまで無意識のものと考えられてきた人体のさまざまなプロセスを、意識的にコントロールするコツを学んだのです。このコツとは、冷たい水に対する体の先天的な反応を、陸上でも模倣することであり、彼の呼吸法が生まれたのはここからなのです。その後、ホフ氏は長い間奇人のように見られてきましたが、科学やジャーナリズムのコミュニティは彼が特別な何かを見つけたということに少しずつ気づき始めました。不可能と思われていたことを、彼は教えることができました。それも極めて素早く教えることができたのです。(次ページへ続く)

彼から何を、どうのように教えてもらったのですか?

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カーニー氏:彼の方法には、2つの特徴があります。「呼吸の作法」と「寒さに身をさらす」ことです。呼吸の作法は意識的な深い呼吸を行うもので、基本的には「肺からすべての空気を吐き出し、そのままできるだけ長く呼吸を止める」というものです。これを繰り返すことで、驚くほど長い時間息を止めていられるようになります。1週間も訓練すれば、3分間は息を止められるようになる人もしばしばいます。また、2つ目の作法では、冷たい渓流や氷水浴など、寒い環境に自らを置き、自分の震える反応をコントロールするのです。この反応を書き換え、抑えて、体に筋肉の動きではなく代謝活動を通じて自らを温めるよう伝えます。これら2つの訓練を行うことで(同時に行うわけではありませんが)、これまで無意識のものと考えられてきた体の機能を手に入れるきっかけがつかめるはずです。


MH:この訓練は、実生活でどのように役立つのでしょうか? つまり、これを行う理由とは何でしょうか?


カーニー氏:普通なら快適とは感じられない環境で、心地よさを感じられるようになります。圧倒的な耐久力が手に入るんです。たとえば、私は水着と靴だけでキリマンジャロを登りました。これに加え、呼吸の作法を使えば、短時間での嫌気性肉体強化が可能です。深く呼吸をし、肺からすべての空気を吐き出してから腕立て伏せをしてみると…、通常の2倍の回数はできます。この呼吸プログラムを受ける前、私のできる腕立て伏せの回数は20回でしたが、わずか1回の呼吸パターンのセッションを行った後には、息を止めながら40回の腕立て伏せができたんです。つまり、筋肉のアウトプットが2倍になったというわけです。この方法に高強度インターバルトレーニングやその他のエクササイズ法と組み合わせ、パフォーマンスの向上に役立てる人もいるくらいですから…。(次ページへ続く)

他にもメリットはありますか?

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カーニー氏:免疫力の向上に大きな効果があります。ストレスの多い環境で自らを制御することを学ぶことで、不安の解消に役立つだけでなく、PTSDやループス、クローン病、関節炎などの症状緩和にも良い影響があるでしょう。また、体重減少効果もあります。寒い環境で自らを制御することを学べば、代謝が促進され、体が白色脂肪を取り出し、燃やしてエネルギーにするのです。ポーランドでは、私の体重は1週間で3kg落ちました。

 
MH:ウィム氏の方法を日常生活のなかでどのように取り入れていますか?

 
カーニー氏:毎朝起きたら15分間の呼吸プログラムを行います。その後腕立て伏せをし、冷たいシャワーを浴びます。これは彼のメソッドの入門編とも言えるもので、誰もが取り入れることができ、即座に健康上のメリットがもたらされます。私たちが普通はアクセスしようとしない体の内部の機能を制御するきっかけが得られるのです。考えてもみてください。私たちの文明は環境をコントロールすることで、常に一定の状態を保っています。屋内は22度前後に保たれ、自分たちの環境からのストレスはほとんどありません。しかし、人類は常に温度変化のある環境で進化してきました。そして、人間の副交感神経および交感神経のシステムはこれらの変動に対応するようできているのです。これらの生物学的システムは、熊から逃げたり、環境に適応するために使われてきましたが、現在の私たちは不安に対処することに使っているだけです。たとえば、誰もが年金やヘルスケアシステムを心配するように…。このような変化により、人間の生物学的システムは健全に機能を果たしていません。人間はもはやこれらのシステムに調和していないからです。このため、私は自分が環境とどのように作用し合っているかについて、常に意識するようにしています。これは完全な発想の転換です。(次ページへ続く)

読者の皆さんへ、この発想をどのように取り入れるべき提案を!

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カーニー氏:自らの環境と繋がる必要があります。たとえば、これから冬が始まれば、誰もが快適さを求めるものです。私たちは暖かいと感じたいものですから…。まだ外にも出ないうちから、室温を維持できるよう何枚も重ね着をします。 
  

 
 そこで、私が始めたソーシャルメディアキャンペーンが「wear one less layer (#onelesslayer)」です。このキャンペーンのコンセプトは、着る服の枚数を1枚少なくすることで、少し寒さを感じることです。寒さもひとつにエクササイズとして取り扱うのです。とはいっても、凍傷になるほどの寒さを感じる必要はありません。寒さを意識的に感じ、体験することで結果として寒さに適応するのです。そしてまた冬の間中に、寒さへの抵抗力も強まるのです。テクノロジーではなく、体の自然な適応に任せるのが一番です。重ね着の枚数を1枚減らすことは、これを試すためのとてもシンプルな方法となるでしょう。

From Men's Health
By Markham Heid
November 8, 2017

Courtesy of @sgcarney(Instagram)
Translation / Wataru Nakamura ※この翻訳は抄訳です。Edit / Hikaru SATO, Kaz OGAWA