HIVについて、「自分には十分な知識がある」と思っていませんか? いやその前に、最近ではあまり騒がれていないので、「もう関係ないでしょ!」と高をくくっていたりしていませんか? もしかするとあなたは、間違った自信をもってしまっているかもしれません。
というのも、学術誌『BMCパブリックヘルス』に掲載された研究によれば、「HIVの感染やAIDSについて調査を受けた2000人の一般人のうち、ほぼ半分が誤った知識をもっていた」という結果が発表されています。さらに付け加えるなら、その間違った知識をもっていたのは女性よりも、男性が多かったそうです。
というわけで今回の記事では、このウィルスに関する正確な知識を改めて身につけてもらいたいと思います。
◇そもそも、HIVが危険なのは何故なのでしょうか?
端的に言えば、それはこのウィルスが免疫システムを破壊してしまうからです。米メイヨー・クリニックの感染症専門家であるステイシー・リッザ医師によれば、「HIVは『CD4T』と呼ばれる特別な免疫細胞を殺してしまう」と言います。
「この細胞は、一定数より減少すると様々な感染症やがんにかかりやすくなってしまうのです」とリッザ医師は説明します。治療しないまま放置した場合、HIVはAIDSとして発症します。この病気についても、誰もがかかる可能性はいまだにあるものですので、あらゆる人が正確な知識をもっておくべきなのです。
それでは、ここからはHIVの感染リスクについて知っておくべきことを6つ解説します。
【1】HIVは誰もがかかる可能性がある。
米国で新たにHIVと診断された人の大部分は、ゲイやバイセクシャルの男性です。が、このウィルスには性別や年齢、性的指向に関わらず、どんな人でも感染する可能性があります。
「残念ながらHIVは、現在もゲイやバイセクシャルの男性によくみられ、この母集団でHIVリスクは依然高い水準にあるのは事実なのですが、基本的にHIVのリスクは誰にでもあるのです」と、リッザ医師は説明します。
このためリッザ医師は、性交時には常にコンドームを使用するようすすめています。また、パートナーを特定の一人に限定し、避妊具の使用をやめるときには、お互いにHIVの検査を受けるようにとアドバイスしています。さらに、その結果を見せ合うべきだとも…。
【2】症状が出ていないからといって、HIVに感染していないとは言えない
「HIVリスクの高い生活を送っているけど体調が良好だから大丈夫」と思っていませんか?
ですが実際、HIVに感染していても症状が出ない人はたくさんいます。
「HIVに感染したほとんどの人はまず、インフルエンザや風邪のようなウィルス性疾患に似た症状を経験します。ですが中には、まったく何も感じない人もいます。HIVの感染に気づいていないまま数年、ときには数十年も何も気づかず生活している人もいるのです」とリッザ医師。
だからこそ、検査を受けることが本当に重要なんです。
「米国疾病予防管理センター(CDC)」では13歳〜64歳のすべての人を対照に、「一生に1度はHIVの検査を受ける」よう推奨しており、性的にアクティブなゲイやバイセクシャルの男性については、「より頻繁に検査を受けるべき」としています。具体的には、リスク要因がある生活をしている人であれば、年に1回は受けるべきだということです。
【3】予防薬でリスクを下げるための対策を取ることができる
HIVに感染するリスクが高いという人…たとえば「HIV感染者と交際中である」という人は、「PrEP(pre-exposure prophylaxis暴露前予防投与)」と呼ばれる方法で感染リスクを大幅に下げることができます。
「PrEP」とは、毎日2種類のHIVの薬(たとえば抗HIV薬「テノホビル・エムトリシタビン合剤(ツルバダ配合錠)」など)を錠剤として飲むことで、HIVの体内での増殖を防ぐ方法です。この薬は定期的にとることで効果を発揮し、性行為でHIVに感染するリスクを90%以上も下げてくれるとのことです。
CDCでは、自分に「PrEP」を行うべきリスク要因があるかをチェックすることもできます。
【4】包皮切除(割礼)はHIVのリスクを下げる
少し医学的な話になりますが、HIVが細胞に入り込む上では、「CD4レセプター」と「ケモカインレセプターCCR5」または「CXCR4」という2つの特別な受容体が必要となります。そして、人体の数十兆もの細胞のうち、この受容体をもつのは、一部の細胞だけ。この1つが樹状細胞と呼ばれる細胞なのです。
「ペニスの包皮には、特に樹状細胞が密集しています。このため、包皮が残っているということはHIVが感染しやすい細胞をより多くもっているということなのです」とリッザ医師。包皮切除を行っておらず、HIVにかかるリスクがより高い男性を多く含むのは、発展途上国のヘテロセクシャル(異性愛者)男性の母集団だとのことです。
【5】他の性感染症をもっている場合、HIV感染のリスクが高まる
他の性感染症(淋病、クラミジア、梅毒、HPVあるいはヘルペスなど)をもっている人は、HIVウィルスに接触したときに感染しやすくなります。また、自分がHIVをもっている場合にはパートナーへの感染のリスクが高まるとのことです。
リッザ医師によれば、粘膜や皮膚の損傷はちょっとしたものでもウィルスが入り込みやすくなってしまうそうです。目に見える傷や症状がなかったとしても、性感染症は炎症を悪化させ、HIVの標的になる細胞の数を増やしてしまうとのこと。
また、あなたがHIVをもっている場合は、精液やその他の体液内のHIV濃度が高まり、他の人に感染させてしまうリスクが高まりそうです。
【6】セックス以外でもHIVは感染する
HIVの感染ルートは、膣性交または肛門性交がもっとも一般的です。同じスプーンやトイレットペーパーを使ったり、握手、キスなどの接触だけではHIVは感染することはありません。HIVは粘膜(腸管、膣、口腔内など)および血管に達するような皮膚の傷(針刺し事故等)からであり、傷のない皮膚からは感染しないことがわかっています。
とはいえ、感染する可能性があるのは前出の行為だけではありません。リスクはより低いとはいえますが、タトゥーや注射針の共有、オーラルセックス、母乳などでも感染する恐れはあるのです。
「性行為でもっとも感染リスクが高いのは肛門性交で、次に膣性交、最後にオーラルセックスとなります」と、リッザ医師は説明します。米疾病予防管理センターによれば、「米国ではタトゥーの施術でHIVが感染した症例はない」と言います。とはいえ、予防策を実施することは重要となります。
「タトゥーを入れるときには、一度使った染料や針などの使い回し避け、すべてのチューブを毎回オートクレーブ処理しているタトゥーパーラーを選ぶべきです」と、リッザ医師は忠告しています。
Source / Men's Health
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。