ツイッターを読んでいると、短時間で様々な感情を呼び起こされるものです。しかし、人間の脳はこのような情報の過負荷を処理するようにはできていません。

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 ツイッター中毒の方は要必見です!

 ツイッターユーザーはしばしば、「ツイッターのし過ぎで頭がおかしくなった」というようなジョークを言います。

 オンライン上にいる時間が長くなる、それどころか、オンライン上ばかりいるようになると、「自分が正気かどうか」わからなくなるようなことがないでしょうか。人間の脳は単純に、互いに相容れない大量の情報を絶え間なく処理するようにはできていないのです。 

 このことに思いに至ったのは、米軍に両親を殺されたイラクのティーンエイジャーについての衝撃的な話を読んだときのことです。

 この話は、こぼれたインクのように私の心に染み込み、復讐について語る彼女の様子は頭から離れませんでした。しかし、この話を読んですぐに、私はツイッターに戻ると今度は、「間抜けな若手共和党員の自撮りがオンラインでからかわれている」という話題を見つけました。そうして、自然にこの話題に引き込まれたのです。 

 しかし、その後しばらく、「戦争の恐怖」と「間抜けな保守派の大学生」という2つの対照的なコンセプトは、私の頭のなかで優位を争うように浮かびあがりました。

 もちろん、こんなことは日常的にソーシャルメディアで起こっていることです。そこでは、一貫性のない情報同士が積み重なり合い、理論的に処理できそうな情報の塊となります。あなたも今すぐ自分のフィードを見てみれば、私の言っている意味がわかることでしょう。

 性的暴力、アメフトのハイライト、犬の写真、銃乱射事件、その他あらゆる話題が際限なく出てくるはずです。こういった大量の情報に向き合うことは、ボルヘスの『アレフ』を真剣に読み込もうとするようなものです。パニックにでも陥りそうで、こんな気持ちからは逃れたいと思うのが普通でしょう。しかし残念ながら、実際は多く人々が毎日のように自発的にツイッター上の大量の情報に向き合ってしまうのです。では、感情的負荷のシーソーとも言えるこのような行為が、長期的に見れば人々にどのような影響を与えるかについて、まだまだ究明されていないようです。 

 私が話を聞いた数人の心理学者によれば、そのような研究はこれまで行なわれていないとの答え。ソーシャルメディアについては、人々の注意持続時間や自尊心、睡眠の質に悪影響を与えることを示す研究はあります。しかし、その他の影響については、心理学ではまだ十分にわかっていないのです。 

「情報の過負荷」という考え自体は、ことさら新しいものではありません。また、ツイッターに限ったものでもありません。ケーブルテレビのニュースを見続けることや新聞をざっと読むようなことさえ、これまでには情報過負荷になる行為として、やり玉に挙げられてきました。心理学者で作家のナンシー・ムラモール医師は、こういったメディアとソーシャルメディアとの違いについて、「ソーシャルメディアは体験をより受動的なものにします」と語っています。 

 
「ケーブルニュースの場合、視聴者には選択肢があります。情報量に圧倒されたり退屈したりしたときは、いつでもチャンネルを変えることができるのです。ですが、ソーシャルメディアは制御ができません」とムラモール氏。

「私たちのこれまでの感情的コミュニケーションのあり方が、極端に拡張されたようなものです」と話すのは、ウィスコンシン大学マディソン校コミュニケーション学科の名誉教授であるジョアン・カンター氏です。 

「(これまでのメディアでは)私たちが一つの話題に集中しているとき、まったく関係のない話題が割り込んでくるというようなことはあまりありませんでした。たとえば深刻な話題から、すぐに面白おかしい話題が出てくるというようなことはなかったんです。しかし、ツイッターはこれを根本から変えてしまいました」とカンター氏。 

 どんなに大胆なニュース番組を観て、感情を刺激されたとしても、ツイッターを10分間見ただけで呼び起こされる多様な感情的刺激には遠くおよびません。ソーシャルメディアのとめどない情報の波に触れることは、脳震盪を起こすような打撃を頭に連発されるようなものです。あらゆる情報が平面的になり、何も記憶に残らなくなります。 

「相反するようなさまざまな感情を次々に抱けば、一つ一つの感情を最大限に感じることができなくなっていきます」と、カンター氏は話します。 

「起こったばかりの銃乱射事件に恐怖を感じたかと思えば、可愛い子猫のコンテンツに癒され、今度は嫌悪感を覚えるような社会正義の問題に向き合う。人間の脳はこのように様々な感情を短時間で連続して処理できるようなものではなく、そのように進化してきてもいないのです」とカンター氏。

 重要なことは情報の過負荷に 疲労感を覚えたときに自ら気づくこと

 人は現実世界で恐怖を感じる状況に直面したとき…。たとえるなら、ジャングルでライオンに遭遇したときを思い浮かべてください。目をつぶったり、「気持ちを切り替えよう」と思ったところで、この恐怖の感情がすぐに消すことはできません。脳は恐れや苦しみなどの感情を処理する必要があるでしょう。 

「メディアが支配する現在の世界では、感情を正常に処理するタイミングが狂わされてしまうのです」と、カンター氏は話します。 

「感情が十分に高まり、これに対処するために役立つ何らかの行為を起こす機会が得られないのです。私たちはあらゆる恐怖に対して容易に鈍感になってしまいます」とも語っています。 

 常に多くの情報が過ぎ去っていくツイッターには、それ自体がこの感情的負荷の問題の回避策になっているというポジティブな面もあります。

 オンライン上では読みたくないニュースを飛ばし、心地よいニュースばかり読むこともできますし、そうしているからといってあなたの人格に問題があるということはありません。嫌なニュースを読み飛ばすことは、それほど感情移入しなかったということです。また、悲惨な話から距離を置く必要があるとき、気軽なコンテンツの存在はありがたいものです。 
 

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Photograph / Getty Images

「ぞっとするような話を真剣に読み、くよくよ悩むことは健康的ではありません。ときには、こういった話から距離を置くことができるのは良いことです。自分の健全な感情やメンタルヘルスのために、ポジティブなコンテンツで気を紛らせるのは大事です」とカンター氏。 

 当然ながら大量の情報を処理し、これらにどのような感情的反応をするかについては、一人ひとりが異なっています。重要なのは情報の過負荷に疲労感を覚えたときに自ら気づき、必要に応じて距離を置くことです。スクリーンを見ない時間を決めたり(たとえば「就寝前には携帯を見ない」など)、集中しなければならないときには通知を切るといったことも有効でしょう。どちらも口で言うのは簡単ですが、実際にするとなると難しいものです。特に、ソーシャルメディアアプリは常に人々を依存させようとするものですから…。しかし、何かが問題になった可能性に気づくことは、どんな依存症状においても常に解決のファーストステップです。また、フィードをスクロールしていくときには、自分にとって重要な情報のみを真剣に受け止めるよう努めましょう。ムラモール氏はこれを「意識的な視聴(conscious viewing)」と呼んでいます。 

「それが広告掲示板や雑誌、ツイート、フェイスブックの投稿であれ、自分が見ているものについて意識的にならなければなりません。傍観者になってはいけないのです」と、ムラモール氏は語ります。 

「『これは私にどんな影響を与えているんだろう』、『思いやりやユーモアを刺激するものだろうか』、『この話題に自分はどのように反応するだろうか』というように、意識的にコンテンツに向き合えば、主体的に情報をコントロールできるでしょう」とムラモール氏はアドバイスをくれました。 

 皆さんが、いつもツイツイ(笑)、ツイッターにアクセスしてしまうことに悩んでいるのなら、意識的にアクセスしない時間を作ること…それが最善策ではないではないでしょうか。ぜひ、お試しください。


By Luke O'Neil on November 10, 2017
Photos by Esquire UK
ESQUIRE UK 原文(English)

TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。


編集者:山野井 俊