モスボール(再使用することを考慮して、兵器などの劣化を防ぐため開口部を防水加工し保管するためのもの)を取り払ってください。この冷戦時代の遺物に、新しいミッションができました。それはオハイオ州クリーブランドで、50席のビストロ・ラウンジになることです。 

 このボーイング 「KC-97G ストラトタンカー」の歴史は、第二次世界大戦直後にまで遡ります。米国は、音速以下で飛行が可能なジェット推進戦略爆撃機(B-47)を製造していました。過去に実行されることはありませんでしたが、B-47の使命はただひとつ、原子力爆弾をソビエト連邦に投下することでした。そして、こちらの「KC-97G」は、その機のための空中給油機として製造されたのでした。 

「KC-97」は有用なタンカーでしたが、弱点もありました。

 B-47のパイロットにとって、スピードが不満の元でした。なぜなら、「KC-97」は最高400mph(約644kmh)まで出せないのに対し、爆撃機の方は通常、600mph(約966kmh)程度で飛行していたからです。とはいえ「KC-97」は、1970年代半ばまでその役目を果たし続けたのです。

◆ 最後まで生き残った航空機のひとつ「KC-97」

 オハイオ州クリーブランド、インターナショナル エクスポジション センター(I-Xセンター)の上級副社長であるリサ・ヴォー氏は、こうした古い戦闘機を使用した新しい計画を立てていました。

 ヴォー氏はクリーブランドの航空機ディーラーに、「2020年までに、航空機をこれまでにないI-Xセンターのレストランに作り変えるのが目標なの。航空機ファンから若くて好奇心旺盛な子どもたちの親まで、レストランにはオハイオ州北東部やそれ以外の場所から人々が集まると思います」と語りました。 

 特にこの「KC-97」は、最後まで生き残った航空機のひとつで、オハイオ・ナショナル・ガードのために1978年まで飛行し続けました。ナショナルガードが「C-130 ハーキュリーズ」のような、より汎用性のある航空機に変更しようとした際、この特別なストラトタンカーはアリゾナ州ツーソンの近く、デビスモンサン空軍基地にある廃機体置き場に送られました。 

 湿度も低く、降水量もあまりないデビスモンサン空軍基地は、再び使用するときのために、古い機体を最善の状態で維持するのに自然な選択だったのです。 

 I-Xセンターでは、半ば退職したNASCARのメカニック陣でグループを作成し、機体の修復作業に取り掛かりました。保存されていた給油機を分解してからオハイオ州まで車で運び、組み立てをし直したのです。プロジェクトへの参加を求められた元A.J.フォイト・レーシングチームのクルーチーフだったウィリアム・(テックス)・パウエル氏は、航空機ディーラーに対して「いいよ、おもしろそうだ。僕はやるよ。」と話したそうです。 

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Boeing KC-97 Stratofreighter
Boeing KC-97 Stratofreighter thumnail
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「KC-97G」の重量は約8万2500ポンド(約37421.4キログラム)あり、半世紀以上前のボーイング・エンジニア陣の努力の結晶です。パウエルは次のように語っています。

「機械の加工技術や設備は、現代のメルセデス・ベンツやBMWに匹敵するよ。非常に正確で非常に高品質。機体に触れるのが楽しくて仕方ない…」

◆戦闘機のコックピットをのぞいてみよう!

 チームはひとつだけ、奇妙な点を見つけました。頭のない黒焦げのメタル製事故実験用人形が、機体の近くにあったのです。なんとなく恐ろしいものを感じながら、エンジニアたちはその頭のない人形をコックピットに乗せ、クリーブランドまで連れて行きました。 

 クレーンやフォークリフトを駆使し、3週間半かけたころ、クルーはやっと機体を再度組み立てることができました。タンカー部分はむき出しになりましたが、機体そのものはほとんど無傷でした。I-Xセンターのメカニックであるロッコ・べヴェラクア氏は、「エンジンを再調整したら、今でも飛ぶと思うよ」と話しました。

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KC-97G Cockpit With Friends
KC-97G Cockpit With Friends thumnail
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 新しい場所で一新された古い給油機は、これから建造物やセキュリティ基準を満たすための改造作業に入ります。もちろん、家族連れが週末に訪れたくなるような場所への変革も含まれています。

 それにはNASCARのクルーチーフが提供できる能力とは、全く異なるスキルが必要となってくるでしょう。ですが、パウエル氏はまったく気にしていません。彼は、機体で作業している間、「いろいろな人が、軍用機にまつわる個人的な思い出話をしにきてくれました。彼らの関心は非常に高いのです。本当に驚きました」と、航空機ディーラーに話していたそうです。  

 そのほとんどを表舞台に立つことなく過ごしてきた「KC-97G ストラトタンカー」を、皆さんはもうすぐ間近で見ることができるでしょう。機体に触ることだってできるのです。まさに、期待に胸膨らむわけです(笑)。

From ESQUIRE US
Translation / Trans Mart
※この翻訳は抄訳です。