米国では、この1週間が「銃規制に関する議論や米国の過激な銃文化に対抗する取り組みにとってターニングポイントとなった」とする声がすでに上がっています。子どもたちは、大人の指導者たちが銃規制に失敗したことに気づき、自ら立ち上がり、そして行動を起こし始めたのです。

 このような動きは、リック・サントラム氏のような銃過激派の中でも「知性派」からも、短絡的な発言を引き出しましたのでした。

 サントラム氏は全国放送で、「代数の授業中に銃乱射に巻き込まれて死にたくない子どもたちは、心肺蘇生術を習得すべきだ」と発言。悪意と冷淡さに満ちたこの態度は、銃乱射事件があったパークランドの高校の生徒たちを公然と嘲った「NRA TV(全米ライフル協会が運営するテレビ番組)」の司会者に続くもので、彼らの人間性を物語っています。そして、そんな転換点となった1週間の最後に届いたのが、米国で最も古い銃器メーカーの倒産のニュースだったのです。

 1816年にニューヨーク州北部で創業されたレミントン・アウトドアは、2018年3月25日にデラウェア州の破産裁判所に連邦破産法11条の適用を申請。悲しいほどタイミングの良いことに、この申請は2月14日にパークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で発生した銃乱射事件を受けて、1カ月以上遅れていました。「ウォール・ストリート・ジャーナル(以下、WSJ)」紙によれば、レミントンの倒産は長年の経営不振によるもので、同社は破産手続の間も事業を継続する予定であるといいます。

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 レミントンが低迷に陥った理由の1つには、サンディフック小学校での銃乱射事件(2012年12月14日9時35分)があります。

 この事件では、ブッシュマスター(レミントンの子会社)製の自動小銃「AR-15」を持った男が、児童20人と教員6人を射殺。この事件により、一部の投資家がレミントンから資金を引き揚げ、数年後には犠牲者の遺族9組が同社を訴えていました。

 この訴訟については、まもなくコネチカット州最高裁で争われる予定となっており、WSJによれば「レミントンが民間向けの使用に、不適切な武器を製造・販売した責任があるか」について、この裁判で判決が下される見込みだといいます。銃火器業界は、この訴訟を注意深く見守っています。

 しかし、レミントンにとって決定的な一撃となったのは、ドナルド・トランプ大統領の当選による売上の低迷だったようです。

 銃社会の米国では、銃乱射事件や大統領選における民主党候補の勝利の後に、銃火器の販売数が急増する異様な現象があります。銃規制を強化する政策への懸念から、多くの人々が駆け込みで銃を購入するためです。WSJによれば、多くの銃メーカーは大統領選でのヒラリー・クリントンの勝利を予想し、大量の在庫を用意していたということなのです。

銃器メーカーを追い込んだのは
ドナルド・トランプであった

 結果は、トランプ氏の勝利に終わったわけです。

 そしてトランプ大統領誕生後、米国史上最悪の銃乱射事件が起きました。が、この大統領が民間人向けの銃の流通を制限するような規制を行うとは、誰も思っていないようです。結局、ラスベガスでの乱射事件の後にも、政府には「バンプストック(銃の連射装置)」を禁止する動きはありませんでしたから…。こうして、ここ数年で銃の販売数は減少し、レミントンが経営破綻に追い込まれることになったわけです。

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トランプ大統領は銃器メーカーを喜ばせていたように思えるたのですが、実は深刻に苦しめていたのでした。

 銃器メーカーは銃の販売数を伸ばすために、NRAを使って人々の恐怖をかき立て、罪のない人々の死を合理化してきました。ですが、この動機になってきたのも、結果としてレミントン破滅の原因になったのも、無慈悲な資本主義の波なのかもしれません。

 「ロイター」によれば、この傾向は業界全体に及んでいるそうです。

以下、ロイター紙より: 

「信用格付け機関によれば、兵器メーカーの売り上げが低迷している理由には、米政府による銃規制が強まるという懸念が緩和していることがあると言います。ドナルド・トランプ大統領は以前、『武器を所有し、携帯する権利を決して侵害することはない』と語っていました」   

 トランプ氏が2016年11月に選挙で勝利して以来、アメリカン・アウトドア・ブランズの株式市場での価値は半分以下になりました。また、スターム・ルガーの株価も15%低下しました。同時期、S&P500はおよそ30%も上昇しています。また、レミントンと競合するコルト・マニュファクチャリングも、スポーツライフルの販売数低迷と軍との契約を失ったことで一度は倒産し、2016年に復活していました。

 この他にも、レミントン倒産の要因には、PEファンドのサーベラス・キャピタルが2007年に同社を買収したときに計上された負債もあります。とはいえ、共和党が過半数を占める現在の米国議会において、銃規制を強化する動きが進みそうにないのと同様に、同社が完全なる廃業となることはほぼないでしょう。

Source / ESQUIRE US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。