トランプ陣営のケンブリッジ・アナリティカ社による不適切な個人情報の取得は、Facebookにとって過去最大の情報漏えいとされています。

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 50 Million Facebook Users Had Private Data Stolen By A Trump-Affiliated Firm

 このたびFacebookは、2016年の米大統領選でドナルド・トランプ氏の選挙活動に協力したデータ分析企業のケンブリッジ・アナリティティカ(Cambridge Analytica:以下、CA)のアカウントを停止しました。なぜか? それは同社がFacebookユーザーの個人情報を不適切に取得し、Facebook側に一度は「これを削除した」と報告しながら、実際には保持していたためだとのこと。 

 Facebookは今回の決定について、ブログ記事の中で説明しています。が、その経緯はかなり複雑なものになっています。 

 ここでの説明によれば、CAは数年前、心理学的調査ツールと称したあるFacebookの診断アプリから、ユーザーデータを取得。27万人のユーザーがこのアプリをダウンロードし、診断結果を共有していましたが、そもそもCAにこのアプリのデータにアクセスする権限はなかったそうです。「ニューヨーク・タイムズ」紙の報道によれば、CAは5000万人以上のFacebookユーザーのプロフィールから個人情報を許可なく取得したのでした。これにより、Facebookにとって過去最大のデータ流出という大事件になったわけです。 

 Facebookによれば、CAはその後2015年、このアプリから取得したデータを削除し、削除証明の要求にも応じたといいます。ですが最近になって、CAはすべてのデータを削除していたわけではなかったことが複数の報告から判明したそうです。 

 現在、Facebookはこの件について調査中としながら、ケンブリッジ・アナリティカの親会社であるストラテジック・コミュニケーション・ラボラトリーズ(Strategic Communication Laboratories:以下、SCL)、問題のアプリを作成したケンブリッジ大学心理学教授のアレクサンダー・コーガン氏、同じくこのアプリからユーザーデータを受け取ったとされるユーノイア・テクノロジーズのクリストファー・ワイリー氏のアカウントも停止したと言っています。(次ページへつづく)

ケンブリッジ・アナリティティカを支援する、 アメリカ屈指の大富豪とは?

 CAによるデータの取り扱いに関して、Facebookがアカウントを停止し、珍しくその経緯について説明した理由については、はっきりしていません。 

 Facebookの次席法律顧問であるポール・グリューワル氏の今回のブログ記事のなかで、CAに世間の注目が集まっていることに言及。同社が密かにデータを保持していたことについて、「信頼を裏切る許されない行為」と非難し、「あらゆる違法行為についてすべての関係者が責任を負い、説明の義務を果たすよう、必要に応じて法的措置を取る用意がある」としています。 

 一方、CAの広報担当者は声明のなかであらゆる不正行為を否定。親会社のSCLの選挙部門について、「米国での大規模な研究プロジェクトを請け負うためにコーガン氏を雇ったものの、Facebookのポリシーを違反してデータを取得していたことが判明し、その後、コーガン氏の会社から受け取ったすべてのデータを削除した」としています。また、「コーガン氏のデータは、CAの2016年の選挙業務において一切使用されていない」とも念押ししています。 

 現時点で、この件についての問い合わせにコーガン氏からの返信はなく、ワイリー氏とのコンタクトは取れていません。 

 CAについては、2016年の大統領選における活動がおそらくもっとも有名でしょう。同社は数百万人の米国市民の情報に基づき、有権者をカテゴリー分けできる心理学的プロファイルを作り上げたと主張。当初はテキサス州のテッド・クルーズ上院議員の選挙活動に協力していましたが、後にトランプ陣営に加わっていました。 

 CAを支援しているのは、大富豪で米共和党の献金者であるロバート・マーサー家です。ヘッジファンドマネージャーのマーサー氏は、トランプ氏の選挙活動やその他の保守系の候補者や運動をサポートしてきました。トランプ氏の選挙スタッフは、大統領選におけるCAの役割が取るに足らないものとしており、「テレビ広告のために一時的に利用し、優秀なデータ分析担当者にギャラを支払っただけ」と語っています。 

 ですが、CAについては、2016年の米大統領選へのロシアの干渉疑惑をめぐっても何度か名前が挙がっています。たとえば、トランプ政権の前大統領補佐官(国家安全保障担当)であるマイケル・フリン氏はこの件で有罪を認め、現在ロバート・ミュラー特別検察官の捜査に協力していますが、以前にCAで短期間顧問を務めたという話を2017年8月に明かしていました。SCLはその後、フリン氏の役職が具体化することはなかったとしています。 
 

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写真:大富豪ロバート・マーサーは、これまでトランプ政権をサポートしてきたことで知られています。Photograph / Getty Images 

 
 また、CAのアレクサンダー・ニクスCEOは2017年11月、同社が大統領選中にヒラリー・クリントン氏の選挙戦に関連するEメールを手に入れるため、ウィキリークス創設者であるジュリアン・アサンジ氏に接触したことを明かしていました。 

 ただし、アサンジ氏には断られたといいます。クリントン氏の選挙Eメール…ロシアの諜報員が不正入手したとされることから、ロシアによる選挙干渉疑惑ということでまだまだ注目されています。ちなみにニクス氏は、ロシアによる大統領選への干渉については(もちろん)否定しています。


By Associated Press on March 19, 2018
Photos by Getty Images
ESQUIRE UK 原文(English)

TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。


編集者:山野井 俊