2018年3月、ロンドン市内にあるセント・パンクラス駅近くの大画面に目がとまりました。

そのスクリーンには、リアルな災害のニュース映像と甘いジュースなどの日常用品のCMとの間Nに挟み込むに都合のいい、親の育児休暇を称賛した政府のキャンペーンの映像が映し出されていました。

「イギリスには悪い父親が多い」、と言っているわけではないとは思いますが、政府はこのような広告などに100万ポンド(約1億5000万円)も費やし、父親の仕事を少なくし、育児に費やす時間を増やすことに躍起になっています。

しかし、この政府のキャンペーン費用は、世間から正当化されるものになることでしょう。なぜなら、共有育児休暇取得の資格のある父親のうち、たった2%しかこの制度を利用していないからです。

母親が未使用の産休がある場合、共有育児休暇を使えば、その残りを父親に割り当てることができるというのに、現状ほとんどの人が利用していないのですから。このことを告知していくことは重要でしょう。例えば、子供の母親が1年以上ある産休のうち、6カ月のみ休暇を取得し、仕事に戻ることを望んでいるとします。その場合、父親に産休の残りの6カ月間が与えられます。家事をするためだけの休暇としても使えますが、同時に愛しい赤ちゃんと6カ月も一緒に過ごすこともできるのです。ですが、誰もこの制度を(父親が)利用していないため、あなたも利用しようとは思わないでしょう。

赤ちゃんは何もしないと思いますか?
いえいえ、そんなことはありません! 

この理由は数多くあります。

まず、最初の理由として、共有育児休暇の補助金は週に140ポンド(約2万円)しかないため、「スクルージ・マクダック」(お金持ちとして知られる、ディズニーのキャラクター)レベルの多額な現金を所持していない限り、家計は火の車になってしまいます。

2つ目の理由として、私たち(父親)は赤ちゃんによって会社の雇用主との会話を邪魔され、育児中の女性が職場で差別されたり、嫌がらせを受けたりしていることに気づいていないわけがありません。

そして3つ目の理由として、赤ちゃんのおむつ交換は女性がすることであり、男性はお金を稼ぐことに徹するべきだからと言えるからです。

その後(このような考え方の父親は)家族を省みず、子供たちとの関係もギクシャクするようになり、孤独に陥り、ゆっくりと悲惨なアルコール依存症を発症させていく……それが父親というものなのです。

しかし、新米パパが育児のための時間を与えられるなら、絶対にそれを受け取るべきでしょう。

それは「赤ちゃんたちが神秘的で、赤ちゃんとの毎日がとても大切な瞬間のめまぐるしいワンダーランドだから」ではありません。もちろん、「育児がハードワークでないから」という理由でもなく、あなたのパートナー(母親)を助けるからでもありません。

それは新米パパにとって、育児は楽勝だからです! だからこそ、新米パパは育児休暇をしっかり取り、赤ちゃんの面倒を見るべきなのです。

新生児が18時間眠っていることを知ってます?

嘘だと思うかもしれませんが、赤ちゃんは何もしません。そんなことあるわけないと思いますか? いえいえ、本当です。

なぜなら、新生児は18時間眠ります。1日のうち目覚めているのは、たった6時間。その間、新生児の活動の中心は目覚めているだけです。歩くどころか、ハイハイもできません。もちろん座ることもできず、何かを求めることもできません。あなたのテレビを独創的な漫画で独占することもできませんし、ナイフが入っている引き出しを開くこともできません。

あなたの携帯電話をつかんで、アプリを使って何百ポンドも浪費することもできません。赤ちゃんとは人格を育むまで、ただただ待っている自力で何もできない小さな塊なのです。ある意味、新生児の面倒を見るということは、小麦粉の袋を見ているようなものなのです!

もちろん、育児中にこのように感じることはないでしょう。

父親たちにとって育児とは、世界で最も壊れやすい卵の殻とガラスによって複雑に構成された人工物に対して、絶え間なく注意を向けながら取り扱うことと同等に感じてしまうことでしょう。

もし、自分が1つでも間違った行いをしてしまうと、それが原因で「ある日、修復不可能なおかしな性的フェチが発症するかもしれない」と、戦々恐々とすることもあるでしょう。誰もが育児中は、赤ちゃんの面倒を見ることほど難しいことは過去になかったと感じるかもしれません。

しかし、赤ちゃんは成長します。

赤ちゃんたちは動くことを学び、突然ベッドを転がり、床に落ちます。話せるようになると突然、「Old MacDonald Had A Farm(アメリカ民謡のマクドナルド爺さん)」を爆音で流され、考えことすらできなくなります。

さらに、歩くことも学ぶと、あなたがトイレに行こうとしたとき、突然玄関のドアを開き、路上に出て歩き回ることもあるでしょう。これらは「育児は楽勝!」と思わせてくれていた繊細で頑固な幼児が、あなたが携帯電話を手にした瞬間にするであろう、いくつかの事例にすぎません。

育児, 赤ちゃん, 父親, ライフスタイル, エスクァイア, esquirepinterest
Getty Images

こんなことが続けば、確かにあなたは疲れるでしょう。

あなたの睡眠に当てるべき6時間が、赤ちゃんが目を覚ます6時間と重なると、数週間ですっかり疲れ果ててしまいますし、そんなとき、あなたが仕事に戻った場合、睡眠不足による疲労が、仕事に対するパフォーマンスの低下に影響してしまうかもしれません。

さらに家に帰れば、ネットフリックスの前でも疲れ果て、グロッキー状態になることでしょう。しかし私自身は、最初の子供が生まれたときに2週間しか育児休暇を取得しませんでしたが、その間、過去10年間に見逃したすべての映画やテレビ番組を全部身終えることができました。

ステルスゲーム「アサシン・クリード」すら、赤ちゃんを膝の上に乗せながらやり終えることができました。そんなことを、私の赤ちゃんは全く気にしていなかったどころか、私のことを見ることすらありませんでした。

父親の育児休暇は、あなたの子供たちと一緒に過ごす最も貴重で、最も平和な瞬間です。

確かに父親が育児休暇を取得すること自体は、財政的負担もあり、非伝統的で危険でもあります。しかし一方で、屋根の上で人々をやっつけるコンピュータゲームをするために十分な時間も与えてくれるのです。

それこそ、実は最も重要なことだとは思いませんか?

Source / ESQUIRE UK
Translation / Nana Takeda
※この翻訳は抄訳です。