今月のワードは、最近増えているという結婚を毛嫌いする男性、“嫌婚男子”。
JUN MIURA
「浮気したときの相手の変貌ぶりが
わからない夫婦こそ、大揉めするのだ」
愛って怖い。この原稿を書いている時点では泥沼化まっしぐらの例の芸能夫婦。「裏切られました」とか「恨んでいます」なんて、愛がこじれた時の常套句がこれでもかとばかり噴出していて、ちょっとしたホラー映画ぐらいでは勝ち目がない。
“夫婦ゲンカ、犬も食わない”と、かつては言ったけど今はネットの時代。そのライブ感には犬すら食い付き兼ねない。
そもそも夫婦って何だ? 赤の他人が出逢って“好き”なんて感情が芽生え、デートを繰り返すうち、いや、その日のうちにエッチをしてしまう場合も有り、“こんな気持ちのいいことがこれからも続きますように”と願うわけだけど、困ったことにその気持ち良さは他でも得られることを既になのか、後になのか人は知る。「結婚しようよ」、どちらが言い出すかは所有欲の強い、弱いで決まってくる。
言われた方は優位で「だったらー」と、結婚の条件を出す。それも人によって様々だろうが、大概は「浮気しないこと」が第一。
相手の浮気、そのジェラシーを快楽に転換出来る輩もいると聞くが、まだ少数派。フツー、好きになった人は盗られたくないというのが本音である。
結婚式はそれを誓うイベントであり、親族一同、信頼のおける友人たちの前で、「この人以外とは今後、絶対にエッチしません」と真顔で言い合うわけだ。そこに登場する言葉が“愛”ってやつで、これはポップスで歌われるようなスウィートなやつと全然違って、愛着、さらには執着の意味合いが大きい。
私以外とした時はどうなるのか分かってんだろー! と、怖い怖い脅しなのである。それが分からぬうちに結婚してしまった夫婦は当然、揉める。要するに恋と愛は違うってことなんだ。
さぁ、結婚を損だと考える“嫌婚男子”よ。ますます結婚なんてしたくないと思うだろう。損は理屈で、本当は怖いんでしょ?
みうらじゅん
1958年生まれ。イラストレーターなど。いとうせいこうさんとともに仏像大使を務める、日タイ修好130周年記念特別展『タイ~仏の国の輝き~』が東京国立博物館で2017年8月27日まで開催中。Tシャツ、マスキングテープなどみうらさんのイラスト入り特製グッズも会場で販売します!