イングランド代表チームのキャプテンを務めるFWハリー・ケインが、W杯ロシア大会でゴールを量産中です。

Player, Sports, Team sport, Ball game, Football player, Soccer player, Sport venue, Soccer, Sports equipment, Football, pinterest

Getty Images

World Cup Diary: Harry Kane's Goals Were The Goals We Deserve - For Now

 イングランド代表のポイントゲッターであるハリー・ケイン選手が、ワールドカップ初戦となった対チュニジア戦で、アディショナル・タイムに決勝ゴールを決めました。

 そのとき、私は歓喜の波が押し寄せてくるのを感じたのです。そう感じたのは、イングランドにどうしても勝って貰いたいと私が思っていたからではありません(それは代表チームが少なくともグループ予選の3ゲームを戦った後でなくては、私は気持ち的に今回の代表チームに肩入れする気にはなれないから…)。そうではなく、むしろあのゴールがとても正しいと感じられたからだったのです。 

  
 私たちはひとつの国として、奇跡のようなゴールにはまだひとつも出会っていません。土壇場での40ヤードのフリーキック、あるいはヘディングシュートの叫びといったものは、どこかつくりものめいた感じがしますし、そして少々下品なところもあります。 

 ケインがあの試合で決めた2本のシュートは、いずれもコーナーキックから生まれたものです。コーナーキックの攻撃参加のために、ゴール近辺に上がったセンターバックたちからアシストされたものであり、そのボールをヘディングすることも理想的な方法でした。 

 ケインはこれから数週間の間に、私たちにたくさんのことを教えてくれるに違いないでしょう。それでも、イングランド代表があの試合に勝って、私はひそかに救われた思いがしたのです。 

 それまでの数日間、私はゆっくり過ごしていました。ですが、確実にワールドカップ熱に冒され始めたのです。私は4年ごとに必ずワールドカップ熱に冒されていましたが、そんな過去の大会のときと同じ熱に今回も冒されたわけです。それはヨーロッパ予選の間、あれほど必死で無関心を装うふりをしていたにも関わらずです…。(次ページへつづく)

重量級のサッカー選手がW杯ロシア大会に出場中! 彼のような存在こそがW杯の醍醐味なのかもしれない!


 W杯に吸い込まれないようにするのは、本当に不可能なことです。W杯は、どこに行こうとしたって避けられないこと。たとえば、メキシコがドイツに勝った日に私は保育園に子供を預けに行くと、メキシコのユニフォームを着ている女の先生を見かけました。私が「おめでとう!」と言うと、彼女はシリアルを混ぜ合わせながら、さも自慢げに顎を突き出してみせたのです。 

 私は、それまで彼女がメキシコ系であることさえ知らなかったのです。ですが、今では知っています。そして私はいま、「メキシコには少なくとも準々決勝までは勝ち進んでもらいたい」と思っているのです。 

 そして予選ラウンドが進むなかで、私は「W杯という大会をこれほどまでに面白くしているものは何か?」について考えていました。

 それはチームや選手の質(の高さ)や彼らの特異性ではなかったのです。それは、たとえば大会初戦でロシアに敗れたサウジアラビアのディフェンス陣が示していた混乱ぶりや恐れ…それは私がサッカーのピッチ上で目にしたなかでも、いちばん自分の人生と重ね合わせることのできる瞬間だったのです。「彼らと似たような立場になったことが何度もあったなぁ…」と、少し背筋が寒くなるくらい(笑)共鳴したのです。 

 そうして彼らの混乱ぶりや恐れを目にした私は、奇妙なことに元気づけられることになったのです。「明日から、さらに頑張ろう!」と…。また、パナマ代表DFのローマン・トーレス選手の体重が、100キログラム近くもあると知ったときにも同じような思いをしました…。トーレス選手は今大会に出場する全選手の中で、いちばん体重が重いのです。 
   

Player, Sports, Soccer player, Sports equipment, Football player, Team sport, Ball game, Sport venue, Football, Tournament, pinterest

Photograph / Getty Images 

 
 つまり私が言いたいのは、私の父親と変わらない体重のサッカー選手が出場していることに驚きを示し、それはスペインとポルトガルが3対3で引き分けるよりも、ずっとずっとエキサイティングだったのです。 

 予選リーグが進んで決勝ラウンドが視野に入るにつれ、私はもうパナマ代表の大柄なセンターバックやサウジアラビア代表の臆病者のディフェンス陣にお別れを言うのかと思うで、少しばかり寂しい思いになってしまうのでした…。そして、彼らpピッチ上にいる残りわずかな時間を大いに楽しみ、その有り難みを噛みしめようと思っています。  

 
 前置きが長くなりました…イングランド代表に関してです。

 ディフェンスを3バック体勢にしてから、初めてまともに戦った試合を観るのはとても興味深いことだったのです。それは休暇で(外国に)旅行に出かけて、自分の父親が普段とは反対側の車線を運転しているときの感じ…父親が運転に集中できるようにみんながしばらくの間、冗談を言わずにいるときの感じになぜだか少し似ていました。 

 例えば、DFハリー・マグワイア選手が相手のストライカーに、直接ボールをパスすることだってあるでしょう。それでも何日かすれば、彼は元気になっているのです。イングランド代表全体も、同じような展開になることを願っています。

 そして、マグワイア選手のために言っておきます。同点ゴールを決めようと、実際にチュニジアゴール目がけてドリブルしていったことによって、彼はそれまでに犯したミスをすべて埋め合わせしても余りある働きを見せてくれましたから…。
 

Player, Football player, Sports, Team sport, Soccer player, Sports equipment, Championship, Tournament, Gesture, Ball game, pinterest

Photograph / Getty Images  


 私はよく、「トータル・フットボール」と「サンデーリーグ」との区分できないときがあります。その境界戦は、4年の1度の祭典であるW杯のときにも…。もしイングランド代表が、私にその線を何度も曖昧にするようなプレーをしたのなら…、大丈夫です。「それはそれでしょうがないことだ」と、納得する準備をしている卑劣な自分がここにいいます。それが一番言いたいことでしょうか…。

 そう、私自身こそマグワイア選手のように、何日かすれば元気になっていることでしょう(笑)。

By Ben Machell on June 19, 2018
Photos by Getty Images 
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。
編集者:山野井 俊