W杯ロシア大会に出場するイングランド代表について、さまざまなメディアが事細かに報告されています。が、選手たちが試合以外の時間に、どうしているかといったことは未だによく知られていません。

 この点について、元イングランド代表のスティーヴン・ジェラード氏ほどよく知っている人間はいないはずです。

 ジェラード氏は2006年ドイツ大会に出場し、2010年南アフリカ大会と2014年ブラジル大会では、それぞれ代表チームのキャプテンを務めました。彼がプレイしたワールドカップの試合数は合わせて12試合に上り、この記録を上回るイングランド選手はたった5人しかいません。

 そんなジェラード氏に、スポーツの世界で最大のイベントに参加したときの思い出や、W杯ロシア大会に出場する現イングランド代表チームがどんな経験をするか?について話を訊きました。


編集部:どうやってチームをまとめていましたか? 

ジェラード氏:みんなでゴルフをしたり、映画を観に行ったりなどしました。また、卓球やビリヤード、そしてスヌーカーができるゲームルームも作りました。各選手の負けず嫌いなところをひとつにするのはそれが効果的でした。 


編集部:ビリヤードがいちばん強かったのは誰でしたか? 

ジェラード氏:正直な話、どの選手もかなりの腕前でした。ただ、われわれの代表チームでは、ウェイン・ルーニーがみんなのまとめ役でした。ルーニーは冗談を口にして、みんなを笑わせていました。また、チームの士気が常にかなりよい状態であるように気を配るのも、彼がいちばん上手でしたね。 

  
編集部:ルーニーの結婚式を撮影したビデオをジャーメイン・デフォーとルーニーが一緒に観ていましたが、あの場にあなたもいたのですか? 

ジェラード氏:ウェイン・ルーニーの結婚式のビデオは観たことがありませんね。間違いなく、とてもいいビデオだと思います。が、残念ながら私はまだ観ていないのですよ。

PKを蹴るときは
絶対に途中で考えを
変えてはならない

編集部:クラブチームごとの派閥みたいなものは、どう対応したのか? 

ジェラード氏:通常の代表チームでは、選手が一緒に過ごす時間はあまりありません。代表招集期間は、たとえば10日間くらいですからね。そして、そんな状況では同じクラブチームから選ばれた2、3人の選手が一緒に行動するのが普通です。ただ、ワールドカップの場合は、選手同士が一緒にいる時間がたくさんありますので、選手は自分だけのコンフォートゾーン(居心地のいい場所)ばかりにとどまるばかりでなく、外へ出て交流を図ることも多いかもしれません。 


編集部:試合会場へ向かうチームバスのなかでは、どんな感じなのですか? 

ジェラード氏:とてもワクワクしていますよ。そうですね、「キックオフが待ち遠しくてたまらない!」といった感じです。しかし、同時にプレッシャーも少しあります。ないと言っては嘘になるでしょう。

 なぜなら、国全体そして世界中の人たちが自分たちの試合を観るとわかっているからです。つまり、「そんな2つの心境が入り交じった感じ」と言えるのです。でも、いまの私の立場から言わせてもらえば、代表チームの選手たちが羨ましくてたまりませんよ。

 自分も「チームの一員として参加し、試合に出場できたらどれほどいいだろう」と思いますね。ワールドカップの試合でプレイするのは、最高の気分ですからね。 
 

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編集部:PK戦でキッカーを務めるのは、どんな気分ですか? 

ジェラード氏:キッカーに選ばれたときには、信じられないほどの重圧を感じます。私はPK戦のキッカーを2回務めたことがあり、1回目は失敗、2回目は成功しました。

 2回目のときに関しては、(その前に)リヴァプール(ジェラードの所属クラブ)の試合でPKキッカーを務めており、大観衆の前でPKを蹴る経験をしていました。その経験がワールドカップでのプレッシャーに対する準備として、役に立ったと思います。それに対してミスした1回目のときには、私は生まれつきのPKキッカーではありませんでした。

 あの瞬間に対する準備が、何もできていなかったわけです。PKを蹴るときには「絶対に途中で考えを変えるな」というのが、PK戦のキッカーへの私のアドバイスです。私は1回目のとき、助走の途中で考えを変えました。

 そんなわけで、大きな代償を支払うことになったわけです。でも、あの失敗は、経験不足のせいが大きかったと思いますよ。2回目のときには、私は落ち着いていてゴールを決められるという自信がすでにありましたから。 

 
編集部:今回のイングランド代表チームについてどう思いますか? 

ジェラード氏:チームにまとまりがあり、選手たちは笑顔で嬉しそうです。現時点でいちばん大きいのは、今回の代表チームには大したプレッシャーもかかっておらず、期待もあまりないということだと思います。

 そしてそのことは、チームが戦う際にプラスに働くと思います。私たちの場合にはプレッシャーや期待の大きさが足かせになったことが何度かありましたので。

■編集後記

 スティーヴン・ジェラード氏は、2018年W杯ロシア大会の公式ビールである「バドワイザー」のアンバサダーを務めています。バドワイザーはイングランドが優勝した場合、お祝いとして18歳以上の成人全員にビールを無料で振る舞う予定となっています。

 イングランドが今大会でどこまで勝ち進むことができるのか? 今後も注目してください。もちろん大前提として、日本代表の応援の二の次のことになりますが。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。