2018年9月24日(欧州時間)、FIFA(国際サッカー連盟)より「FIFA年間最優秀選手賞」の発表がありました。…と、聞いた皆さんの中には、「あ~、それはもう聞かなくてもわかっているよ。あの2人のどちらかだろ!?」と呟いた人も少なくないでしょう。でも、2018年は違ったのです!
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もう写真で気づいていただいているかと思いますが…2018年の「FIFA年間最優秀選手賞」は、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド選手でもアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ選手でもありませんでした。そして、もう一つ驚いたことは、今から過去11年ものサッカー史の中で、この2人のいずれも受賞しないということはなかったのです。そう、これはひとつの時代の終焉を象徴する表彰式となったのです。とはいえ今回授賞した彼も、33歳という年齢なので「新たな風が…」とは言い切れませんが…。
この2人の牙城をついに崩したのが、クロアチア代表MFであるルカ・モドリッチ選手です。
すでにご存知の通りかもしれませんが、ロナウド選手とメッシ選手は表彰式には出席しませんでした。ロナウド選手は、最終候補まで残っていたのに…しかも、もと同僚の授賞なのに…欠席です。これはあまりに、敬意を欠いた行為ではないでしょうか。
もはや多くの関係者が、表彰式を欠席した2人に批判の声が上げています。かつてACミランやASローマの監督を務めていたファビオ・カペッロ氏は、2人の行動について「敬意を欠いており、フットボールの名誉を傷つけた」と非難。モドリッチ選手自身も失望を表明し、「もちろん、彼らにはここにいて欲しかったです。そうはいきませんでしたが」とコメントしています。
少し後味が悪いのは、2人の欠席が謙虚さと品位に欠けるから…だけではありません。このレアル・マドリードCF所属のミッドフィルダーの受賞は、長年、待ち望まれていたことなのに…だからです。
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サッカー界のプロ中のプロ、あるいは指導者の夢とも呼べるモドリッチ選手は、所属したすべてのチームで影の主役となり、ボールはもちろチーム、そしてゲームを操り、そのキャリアの中で数々のトロフィーも獲得してきました。
ロナウド選手がゴールを量産し、派手なパフォーマンスでヘッドラインを飾っては称賛を浴びる一方でモドリッチ選手は、多くの骨のある(わりと無口で通な…)サポーターたちから愛され、「レアル・マドリー最重要プレイヤー」として大切に見守られてきたのです。
このことはモドリッチ選手のチャント(観客が声をそろえてかける掛け声や応援歌)が、ほとんどすべての試合で歌われていることからも理解できるはずです。なにせ、悪名高く容赦のないベルナベウ(レアル・マドリーの専用スタジアム「エスタディオ・サンティアゴ・ベルナベウ」)のファンたちにさえ認められているのですから…。
試合のリズムを作り、カウンターアタックを巧みに指揮するモドリッチの能力は、アレックス・ファーガソン氏(元マンチェスター・ユナイテッド監督)やペップ・グアルディオラ氏(マンチェスター・シティ監督)、ジョゼ・モウリーニョ氏(マンチェスター・ユナイテッド監督)、ジネディーヌ・ジダン氏(元レアル・マドリ―監督)、ヨハン・クライフ氏(元バルセロナ監督)など、数々の名将や名選手たちに称賛されてきました。
この能力が最大に発揮されたのがW杯ロシア大会。彼はクロアチアに、「準優勝」という驚くべき結果をもたらしたのですから…。
W杯ロシア大会グループステージでのアルゼンチン戦では、見事な切り返しから決めた美しいゴールは「ゴール・オブ・ザ・トーナメント」にもノミネートされていましたし、重要なアシストやペナルティーキックでの得点、複数回受賞した「マン・オブ・ザ・マッチ」など、モドリッチの活躍は挙げればキリがありません。
ですが彼の最大の美点は、周りの選手たちに落ち着きとバランス、目的意識をもたらすリーダーシップなのです。ワールドカップにおいて、ロナウド選手やメッシ選手は「個としての活躍により、自らの国際的名声を確かなものとするために、必死に不毛な試みを繰り返した」とも評されますが、モドリッチ選手はこれまでと同じようにチームのためにプレーしただけなのです。
天才司令塔モドリッチ選手は、W杯の前には4度目のチャンピオンズリーグ制覇というもう1つの栄光も手にしていました。ロナウド選手がユヴェントスFC に移籍した今、レアル・マドリーでモドリッチ選手にかかる負担は、ますます大きなものとなるでしょう。とはいえ、このまま歳を重ねていっても、彼がこのプレッシャーに負けるとは誰も予想していません。
サッカー界での最高峰の栄冠を手にする表彰式では、過去10年以上にわたって毎度「メッシかロナウドか?」という退屈な議論に終始してきました。そうした中でこの2人が全盛期を過ぎつつある今、今回モドリッチ選手が受賞したということは、改めてサッカー界の賞争いが面白くなることを示唆しているのかもしれません。
それでは今回、「FIFA年間最優秀選手賞」に輝いたモドリッチ選手の活躍を写真で振り返ってみましょう。(わりと無口で通な…)サッカーファンの多くが、この事実に感極まっているはずから、これを機にその思いを共有(共鳴)してください。
【動画】ルカ・モドリッチ #1
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W杯ロシア大会決勝、フランス戦にクロアチア代表主将として出場したルカ・モドリッチ選手。味方へのパスコースを探す姿が、終始見受けられた一戦でした。強豪フランス相手に4-2で敗れましたが、モドリッチ選手は今大会のMVPを受賞しています。
W杯ロシア大会 決勝のハイライト動画はこちら!
ルカ・モドリッチ #2
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同じくW杯ロシア大会決勝でのルカ・モドリッチ選手。要注意選手として、フランス代表から激しいマークを受けていました。前半は、あまり身動きが取れませんでした。ですが後半に入ると、次第にモドリッチ選手本来の力を発揮し始めたのでした…。
ルカ・モドリッチ #3
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W杯ロシア大会準決勝、イングランド戦でのルカ・モドリッチ選手。あまり口数の多い主将ではありませんが、的確な指示と説明付きのパスでチームを勝利へと導きました。
ルカ・モドリッチ #4
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W杯ロシア大会 準決勝、イングランド戦に出場したルカ・モドリッチ選手。2-1で勝利を収めたクロアチア代表は、決勝戦に駒を進めることに…。このとき、多くのサッカーファンがクロアチアの初優勝を望んでいたことに違いないでしょう。
ルカ・モドリッチ #5
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UEFA チャンピオンズリーグ 2017-2018 決勝リバプール戦に駒を進めたのは、スペインの強豪クラブとして知られるレアル・マドリ―。クリスティアーノ・ロナウド選手やガレス・ベイル選手など、前線に素晴らしいタレントを誇るレアル・マドリーの司令塔として君臨するのが、ルカ・モドリッチ選手です。縦パスを入れたり、逆サイドにロングパスを供給するなど、この試合でも彼の存在感は際立っていました。
ルカ・モドリッチ #6
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UEFA チャンピオンズリーグ 2017-2018 決勝リバプール戦に出場したレアル・マドリ―所属のルカ・モドリッチ選手。非凡なパスセンスばかり注目されていますが、彼のもうひとつの特長は中盤を駆け回る無尽蔵のスタミナです。この試合でも、ピッチを上下左右に動き回っていました。
ルカ・モドリッチ #7
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UEFA チャンピオンズリーグ 2017-2018 決勝リバプール戦に、3-1で勝利したレアル・マドリ―。ガレス・ベイル選手の大活躍で、優勝という美酒を味わうことができたルカ・モドリッチ選手。主力選手としてフルシーズン戦った彼にとって、優勝トロフィーを掲げる瞬間ほど幸せなときはないでしょう。
ルカ・モドリッチ#8
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UEFA チャンピオンズリーグ 2017-2018で優勝を果たした、レアル・マドリ―当時監督のジネディーヌ・ジダン氏とルカ・モドリッチ選手。ジダン氏からの熱い信頼は、常にモドリッチの心に届いていたはずです。しかしながらこの後、ジダン氏はレアル・マドリ―から離れることを決意したのでした...。
ルカ・モドリッチ #9
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UEFA チャンピオンズリーグ 2017-2018で優勝を果たした、レアル・マドリ―の面々。モドリッチ選手(右から2番目)は、クロース選手やカゼミーロ選手、そして優勝の立役者となったベイル選手らとともに記念撮影を。
By Nick Pope on September 25, 2018
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ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。
編集者:山野井 俊