「エディジャパン」、そして「ブレイブブラッサムズ(勇敢な桜の戦士)という愛称も、いまでは一般に定着されてたラグビー日本代表。彼らがまたまたやりました!

 RUGBY WORLD CUP 1次リーグB組に属する日本代表は、10月3日(土)、ロンドンの北西約80kmにあるミルトンキーンズにて第3戦となるサモア代表と対戦しました。サモア代表は世界ランキング11位。日本代表は世界ランキング12位と、僅差ながら格上のチームとの対戦に世界の注目が集まりました。

 そして結果は…、26-5で日本代表の勝利!! 残り試合をひとつ残しながら、この2勝目でベスト8進出の可能性を大きく(希望)つなぎました。そして、この勝利自体、日本のラグビー史に残る偉大な結果でもあったのです。日本代表がワールドカップで初勝利を遂げたのが、1991年第2回大会。その大会結果を上回る2勝目となったのでした。そして勝ち点は8に。


試合を振り返ってみましょう。

  
 初戦で、優勝候補でもあった南アフリカ代表から歴史的金星を挙げた日本代表。中3日で臨んだ第2戦のスコットランド戦には、借敗という結果に…。総当たり戦では、一番の勝負どころとなる1勝1敗の五分で迎えた第3戦目。そして対戦相手は、ランキングでは1つ格上のサモア代表です。互いに1勝1負で迎えたポイントの試合とあって、キックオフ早々は両チームとも緊迫した試合運びにも見えました。が、すぐにその拮抗は、音を立てて崩れ始めたのでした…。

  
 前半7分、相手陣内に攻め込んだ日本は、中央から左に展開。最後は五郎丸選手のトライ!!! かと思ったのですが、その前のプレーで相手ファウルが…。これがラグビーの不思議なところであり、面白いところでもあります。いわゆるアドバンテージってやつでしょうか? でも、こちらのアドバンテージになるわけですから、そのままこちらがトライすれば認められるはず…。アドバンテージではないようですね。 

 この辺、ルールに精通していないので、スルーさせていただきます…。そうしてペナルティゴールを得た日本代表。安心してください、蹴るのは五郎丸選手です。いつものルーティーンから冷静に決め、日本が3点を先制したのでした。そして、この得点からサモアはいきなり崩れ始めたのでした…。ラグビーというスポーツで大切な、「規律」というものがなくなったように見えたのです。

 
 それからというもの、サモア代表はファウルが目立つようになったのです。そうして前半24分のこと、サモア代表は2人がシンビン(10分間の一時退場)となっているとき、数的有利となった日本代表はジリジリと相手陣内に攻め込みました。そしてゴール手前まで継続しスクラムに。そこでサモア代表は、痛恨のファイルを犯すことに…。スクラムを故意に崩したとみなされ、日本代表は認定トライを得たのでした。もちろんコンバーションゴールも五郎丸選手がキッチリと決め、リードを広げたのでした。 

日本代表の勝利を決定づけたのは誰!?

ラグビー,WTB山田選手
Michael Steele(Getty Images)
前半終了寸前の41分。右のWTB山田選手がトライ!このタイミングでのトライにより、 サモア代表の覇気を大きく崩れた…。

 シンビンで退場していたサモア代表選手2人が戻ったあとも、日本代表の猛攻は衰えず…。前半34分には、五郎丸選手が再びペナルティゴールで3点獲得。サモア代表がさらに動揺の色を見えてきたところ、日本代表はさらなるダメ押しをしたのでした。前半40分も終わり、13-0のまま終わろうとしているロスタイム41分。WTB山田選手により、右サイドラインぎりぎりからトライを奪ったのでした。

ラグビー、ロスタイムに試合を決定づけるトライを奪った山田選手
Richard Heathcote - World Rugby(World Rugby via Getty Images)
前半終了間際、ロスタイムに試合を決定づける トライを奪った山田選手。 もはや“ロスタイムの魔術師”として命名したいと思います!

 トライ寸前の山田選手のプレーが圧巻でした。身長194cm体重111kgのアレサナ・ツイランギ選手のタックルを受けながらも、体を回転させることでタックルを巧みに外してのトライ! このスピン(回転)のテクニックは、アメリカンフットボールのボールキャリアがよく実践するテクニックです。山田選手は2012年のシーズン、日本のアメリカンフットボールの社会人Xリーグ所属のノジマ相模原に所属し、スポーツ二刀流を実践した経歴の持ち主。もしかすると、そこで得たテクニックがこの土壇場で発揮させたのかもしれません。

 そしてトライのあとのコンバージョンゴールも、角度のある難しいところでもありましたがさすが五郎丸選手、難なく決め20-0で前半を終えることになったのでした。  

ベスト8進出の望みをつなげど、課題アリ!

サモア代表WTBのケン・ピシ選手にタックルする日本代表バックロー(フランカー)のホラ二選手
Stu Forster(Getty Images)
サモア代表WTBのケン・ピシ選手にタックルする日本代表バックロー(フランカー)のホラ二選手。恐れをしらないオフェンスばかりでなく、果敢なタックルの連続を見せたディフェンスも見応えアリ。

 このように前半、日本代表が主導権を握ってゲームスト―リーを展開することができたことで、サモア代表の覇気を徐々に奪っていけたのではないでしょうか。その後のサモア代表の試合運びも乱雑そのもの、ファウルを繰り返すことに…。

 後半も主導権はそのまま日本代表のものでした。五郎丸選手、田中選手、ホラニ選手らによる要所での効果的なタックルをみせた日本代表。サモア攻撃陣の芽は摘まれるばかりで、どう攻撃していいのかわからなくなっていたかもしれません。後半、特に目立ったのは主将リーチ選手のタックルです。後半開始早々ピンチをしのぐリーチ選手のタックルは、この試合のモメンタムは大きく日本代表に傾いたと言っていいでしょう。

 
 そして後半24分、サモア代表のこの試合初のトライを許し、失点となりました。が、もはやあとの祭り感濃厚。不安感もありませんでした。こうして最後まで高い集中力を見せた日本代表が終始リードし、それを守り抜いたのでした。FB五郎丸選手は、後半も得点を積み重ねました。後半8分、19分とペナルティゴールは成功。この試合で五郎丸選手は16得点を挙げて、通算45点に。再び得点ランキングトップ(10月4日の時点)に浮上したのでした。

ノーサイドのホイッスル後、観客席に対し勝利の報告とともに応援のお礼をするラグビー日本代表
Michael Steele(Getty Images)
ノーサイドのホイッスル後、観客席に対し勝利の報告とともに応援のお礼をする日本代表。

 しかし、喜ぶのはまだ早い、それが現状です。南アフリカ代表に勝利したからといっても、現時点ではプールB3位。なんと日本代表が勝利した南アフリカが代表が、現在勝ち点11で1位になっているのです。この大会では、勝てば勝ち点「4」が入り、さらに、【1試合で4トライ以上を挙げた場合】と【7点差以内で敗れた場合】 は、それぞれボーナスポイントとして勝ち点「1」ずつが上積みされるという大会ルールによるためなのです。

 プールBの戦況は、かなりの混戦模様となっています。現時点(2015年10月4日)での成績を整理しましすと、1位は南アフリカ代表(勝ち点11)、2位スコットランド代表(勝ち点10)、これに次いて日本代表(勝ち点8)が3位。まさに三つ巴の状態です。3チームが2勝1負の同勝敗であるところ、ボーナスポイント獲得の差でこの順位となっているのでした。

 
 日本代表は3試合を終えて、ボーナスポイントを獲得できていません。よって、同じ勝敗数でも3位になってしまうのです。準々決勝に進むことができるのは2位まで。…ということは、日本代表は次の第4戦でアメリカ代表に勝つのは当たり前となります。その上でさらに4トライを奪うこと、そうなれば勝ち点「5」を加えることとなり、最大で 「13」まで勝ち点を伸ばすことができるのです。つまり、課題はトライです!!

 ここで現実を知っておいたほうがいいですね。日本代表の試合の前に、南アフリカ代表はアメリカ代表と対戦します。スコットランド代表もサモア代表と対戦します。ここで両チームともに勝ち点3以上を挙げれば…。現状の勝ち点数に足し算してみてください。日本代表は南アフリカ代表に上回ることは不可能。そして、スコットランド代表とはどうでしょう。スコットランド代表がボーナスポイントを得ずに勝利し、勝ち点「13」で終了したとします。日本は勝ち点で同点となりますが、なんと直接対決で敗れているわけです。つまり、スコットランド代表が2位となるのでした…。

 日本のラグビーの歴史を塗り替えた大いなる2勝を得た日本代表ですが、まだまだ困難な道のりは続きます。しかし、何が起こるのかわからないのがスポーツの醍醐味。まずは南アフリカ代表、スコットランド代表の試合に注目したのち、アメリカ代表戦の勝利を祈ることにしましょう!  

 それにつけても今回のラグビー日本代表の活躍は、素晴らしい限りです。代表のみんな感動をありがとう! そして、さらなる活躍を期待しています!!



◇ラグビー日本代表、予選組プールBでの予定
9月19日(土) 対南アフリカ   34 - 32Win
9月23日(水) 対スコットランド10 - 45 Lose
10月3日(土) 対サモア  26 - 5  Win   
10月11日(日) 対アメリカ(世界ランキング15位)

・Rugby World Cup公式サイト
>>> http://www.rugbyworldcup.com/  

Rugby World Cup公式サイト内動画
“Match highlights: Samoa v Japan”
>>> http://www.rugbyworldcup.com/video/104725