2018年2月18日、平昌五輪のスピードスケート女子500メートルで小平奈緒選手は、「36秒94」のオリンピック新記録で日本スピードスケート女子初の金メダルを獲得。そして、その記録の裏には…。

Recreation, Ice skating, Sports, Speed skating, Individual sports, Competition event, Winter sport, Fashion design, Competition, pinterest

The PyeongChang 2018 Olympic and Paralympic Winter Games 

 小平選手の記録は、彼女一人の努力で生まれたわけではない…とも言えるではないでしょうか? 

 なぜ彼女がそこまで頑張れたのか? その裏には長年のライバルであり、バンクーバー、ソチオリンピックでの金メダリストである韓国代表の李相花(イ・サンファ)選手の存在がずっとあったに違いありません。大会で会っている以上に、日々の練習では常に二人はお互いを強くイメージしていたに違いないのですから…。

 そしてこのたび、2018年2月18日現在までの成果が具体的な時間となって記録されたのでした。李選手は「37秒33」という記録を生み、銀メダルを獲得することに…。ちなみに今回、小平選手が破れなかった世界記録「36秒36」の保持者はもちろん李選手。彼女が2013年11月16日に、ソルトレイクシティで出しています。

 そんな彼女たちが繰り広げた圧巻のスケーティングによる対話とともに、日本・韓国で注目を浴びているのが試合後の2人…これこそ、純度の高いスポーツマンシップ同士がベストバランスで融合した尊い友情ではないでしょうか。いや、それは凡人の我々の想像を遥かに超えた融点での結合したで絆に他ならないのでは…。想像はできても、正解までにはきっと至ることのできない神々しいほどの領域にあるものでは。

 
 韓国のメディアも2人が肩を抱き合い、歓声に応える姿が映された写真を大きく掲載しています。

facebookView full post on Facebook

  
 レースを終えた彼女たちがリンク上で交わした会話も、韓国メディアでは紹介。小平選手は李選手に、「プレッシャーの中、よく頑張ったね。あなたへの尊敬の念は決して変わらないわ」と声をかけると、李選手は「私はあなたを誇りに思っているわ」と、讃え合ったと伝えられています。これに対してSNS上では、「まるで姉妹のよう」「美しい」と称賛の嵐。

 平昌五輪では開催に至るまで、国ぐるみのドーピング疑惑でロシアの参加資格停止問題が騒がれていました。さらに現在は、韓国のネットユーザーによるカナダ選手への誹謗中傷などなど…五輪とナショナリズムの関係性は、いつも問題のひとつとして挙げられています。

 しかし今回、小平選手と李選手は「真のスポーツマンシップとは何か? 違う国どおしの交友の仕方」を世界中の人々に見せて(魅せて)くれたのです。国の違う者同士、互いに尊重し合い高め合う姿勢、その尊さ…。こんな日韓関係が政治・社会でも実現したら、どんなに素晴らしいことが待っているでしょうか!?

「スポーツと政治は違う、そう簡単に同じにはできない」、そう叫ぶ方も多いことでしょう。この2人を参考に、すぐさま根本的な解決などはできるものでもないと…。でも、我々ができる最初の一歩、その思いはここにあるのではないでしょうか。いつの間にかできた互いのトゲは、この思い・姿勢によって徐々に癒されていくに違いないのでは?と思うのです。

 この歴史に残る対戦は、記録以上に偉大なメッセージをくれたようにも思えるのです。もうすぐ東京オリンピック2020、さぁ、我々もマインドチェンジの時間です。

Text & Edit / Hikaru SATO, Kaz OGAWA