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◇「空飛ぶ円盤(フライング・ソーサー)」の歴史
Getty Images 1947年6月24日、民間のパイロットであるケネス・アーノルド氏は、太平洋岸北西部を自家用機で飛んでいました。
そして突然、その空を飛行しているのは自分だけではないことに気づいたのです。ワシントン州にあるレーニア山の上空で、アーノルドさんは近くを飛行する「青白くまばゆい光を放つ9つの物体」と遭遇したのです。そのうちの8つはディスク型、9つ目は大型の三日月型だったそうです。それら9機の物体が、V字編成で飛行していたということです。
アーノルドさんの計算によれば、それらの物体はおおよそ時速2,000キロ(マッハ2)で飛行しており、軍事訓練のようなものを行っていたというのです。
「まるで“円盤(小皿=ソーサー)”で水切りをするときのような動きをしていた」とも、彼は証言しています。当然のことながら、そのような形態の飛行機は開発などされておらず、さらに当時においては、マッハ1.5以上での編隊飛行が可能な飛行機も存在していません。
◇UFO(未確認飛行物体)とは謎の飛行物にすぎず、それをエイリアンの存在と関連づけるのは飛躍でしかありません…。
Air Force Test Center History Office チャック・イェーガー氏(アメリカ陸軍及びアメリカ空軍の軍人。退役時の階級は、空軍准将)が音速の壁を破ったのは、この2カ月後のことですから…。
メディアは、この「円盤」という言葉を曲解しました。そして、その飛行物体に対し「空飛ぶ円盤(フライング・ソーサー)」という呼称を与えたのです。 急造のUFO専門家たちは、人間のテクノロジーを超越した物体を指して、それが宇宙から飛来してきたものであるに違いなく、つまり、地球外生命体の存在を証明するものだと騒いだのです。
しかしその言葉通りに捉えれば、UFO(未確認飛行物体)とは謎の飛行物にすぎず、それをエイリアンの存在と関連づけるのは飛躍でしかありません…。
「他の星で生まれた異なった生命体が、地球で生命活動を継続することは可能なのか? 彼らは我々人類より高度な生命体なのか?」…もしエイリアンが実在するのであれば、この宇宙空間を瞬時にひとっ飛びできるほどの彼ら。人類などはるかに超越した存在であるに違いない…と、UFOに魅了された人々は想像を膨らまし続けたのでした。
◇UFOの目撃に取って変わったのは、エイリアンと遭遇
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Pilot Kenneth Arnold 1977 still angry about disbelief
Watch on ケネース・アーノルド氏の太平洋岸北西部での目撃証言が空飛ぶ円盤マニアを生み出し、やがて、同様の目撃情報が世界中で報告されました。
以降、10年ほどの間にプロペラ機はジェットエンジンを搭載した戦闘機に変わり、音速の壁を突き破り、さらには核兵器までが開発されるに至り、そのようなテクノロジーの急激な発展が、UFOへの関心をさらに後押ししたのです。
折しも宇宙を目指すアメリカ合衆国はNASAを立ち上げ、月への飛行を目的に掲げていました。あらゆることが起こりえた時代なのです。エイリアンの存在していても、不思議ではない…「むしろ説明がつくのではないか」と考える人も少なくなかったようです。
そして、1970年代になると環境問題が熱を帯び、政治への不信感が高まりだしました。さらに核戦争の危機が叫ばれるようになります。
すると、UFOの目撃に取って変わって、「実際にエイリアンと遭遇した」という証言は増えてきます。「人間が地球に対し、いかに不適切な存在となっているのか」という忠告のメッセージを、エイリアンが人類に伝えるようになったのでした。
さらに1990年台に入ると、エイリアンとの直接的接触がより過激化してゆきます。「エイリアンに遭い、生体実験を受けた」という「アブダクション(誘拐)」めいた証言が相次ぐようになるのでした。
◇政府は何かを隠しているのか?
Getty Images そのような体験談が「真実である」と認めるのなら、この議論は必然としてある結論へと導かれます。
そして、「合衆国政府は公表しているよりも遥かに多くの情報をもっているはずだ」と噂が囁かれるようになります。また、「合衆国政府は情報を隠しもっているのみならず、エイリアンと積極的に手を結んでさえいる」と確信するUFO研究者も出現します。
「ニューメキシコ州ドゥルセの地下、もしくはネバダ州のエリア51付近の山岳地帯に、連邦政府がエイリアンのために用いることを約束した土地がある」との陰謀説も現れました。
「合衆国政府は秘密兵器の開発を極秘裏に行うなか、いくつもの飛躍的な技術革新に成功している。それはエイリアンから地球外のテクノロジーの指導を受けているからだ」という、よりもっともらしい説も出てきました。
この説を支持する人々によれば、「その技術が極めて高度であるがゆえ、政府はそれを公表せずに秘匿している」と言うのです。仮にそうだとすると、ケネス・アーノルド氏が1940年台に目撃したというトップシークレットの軍用機を、米軍はなぜ70年以上も経った今も、実用化していないのでしょうか?
◇ニューヨーク・タイムズも未確認飛行物体を報道
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Go Fast: Official USG Footage of UAP for Public Release
Watch on この目撃は、極めて高度な訓練を受けたパイロットによるものであり、さらに、最先端のセンサーによっての確認であることから、この海軍からの報告はかなり有力な情報と言えるでしょう。
目撃された物体がもし本物であり、また、合衆国政府に帰属しない何物かであるというのであるなら、その比類なきテクノロジーの存在は我が国の国防に対する脅威ともなり得るわけのです。
ところが海軍から追加報告はなされることなく、また、この件についてさらなる調査が行われた様子もありません。それ自体も謎…まさに謎が謎を呼んでいるのでした…。
◇疑惑の減少
Getty Images 海軍によるUFOとの遭遇事例については、過去のUFO目撃事例の傾向とは異なる法則が働いているのです。これは特筆すべきものです。しかしながら、もしUFOが実在するのであれば、スマートフォンの登場に伴って、その目撃件数がより大きな話題となって然るべきです。が、実際にはそうなってはいません。
数えきれないほどの人々が日々、高性能のカメラをポケットに入れて持ち歩いているにも関わらず、UFOの写真や動画の撮影件数が増えたという話がないのもまた不思議なものです。
インターネットやSNSにより、私たち市民が触れることのできる情報が飛躍的に増加したにも関わらず、「宇宙人によるアブダクション(誘拐)」というような話は、この10年間でむしろ減少してさえいるのです。
いやむしろ…インターネットやSNSの普及の拡大から、こうした情報を大切にしている人通しの間だけでシェアしてるだけなのかもしれませんね…。
◇明確とも思えるさまざまな事実はさておき、もし、それを自分自身が目撃者となってまったとしたらどうでしょう。
Courtesy of @To The Stars Academy of Arts & Science(via Youtube) 1987年5月、私(筆者カイル・ミゾカミ氏)の通っていた高校の生物学の授業の一環として、カリフォルニアのユバ・パスを通るルートでサンフランシスコ州立大学シエラネバダ校への一泊旅行がおこなわれました。そのとき、私も目撃したのです。
門限の後、私を含む10名ほどが木造の屋根に登り、静かに、心地よく冷たい夜の空気を吸いながら、上空に瞬く星空を眺めていました。
そのとき、私たちのひとりがそれを発見したのです。
指差す方向に目をやると、白く、点滅する光が見えました。人口衛星の光とは違います。もっと明るいのです。見たこともないほどの速さで動いているのです。しかし、衝撃的だったのはその後です。まるでビリヤードの手玉がクッションで跳ね返るかのようなジグザグ飛行が、2回も目の前で繰り返されたのです。やがて、その物体は地平線の彼方へと消え去りました。
あれは一体なんだったのでしょうか?
何度も自問自答を繰り返しました。極秘の軍用機だったのでしょうか? 折しもナイトホークという通称をもつ「F-117」、世界初のステルス戦闘機が極秘の飛行訓練をしていたころです。今でこそ、ネバダ州のエリア51付近のレイク・タホの上空で夜間訓練がおこなわれていた事実が知られていますが、当時、そのことは発表されていませんでした。電子光学ターゲットシステムを用い、湖に浮かべたボートをピンポイントで捉える演習です。
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SR-71B Blackbird Pilot Trainer Aircraft
Watch on しかし「F-117 ナイトホーク」(最高速度マッハ0.85)と言えども、もしくはその30年以内に開発されたどのような戦闘機をもってしても、その夜に私が目撃したような飛行演習をおこなうのは不可能です。その飛行物体のスピードと高度を図ることなどできませんでした。「SR-71 ブラックバード」を除いて、あのような飛行速度を出すことはおよそ不可能ですし、「SR-71」だとしても、あのような軌道を描いて飛ぶことなどできはしません。
もし低空を飛んでいたのだとすれば、私たちの耳にはエンジン音やソニックブームの衝撃音が届いたはずです…が、完全な無音状態だったのです。
あれから31年が経過した今、私が言えることは、「それがなんであったのかが、未だに不明である」ということだけなのです。
◇UFOにまつわる現在の状況
Getty Images ケネス・アーノルド氏がUFOを目撃してから71年が経った今日になっても、UFOがいかなる現象であるのか、人類はその真実に迫っていません。
現象があることは確かですが、それが集団的幻覚によるものなのか? 政府の極秘プロジェクトなのか? もしくは本当に他の惑星から飛来した何かであるのか? まるで解らないのです。
『The Outsider’s Guide to UFOs(アウトサイダーのためのUFOガイド)』の著者であるジェームス・アボット氏は、次のように言っています。
「真にオープンな意識をもつ人であれば、UFOという特異な科学的成果をア・プリオリ(経験によって得られたのでなく、かえって経験が成り立つ基礎になるような概念)に察知することができるのです。あの不可解な物体が何であるのか、私たちは適当な理解に至っていません。しかし、その目撃件数、その信憑性、そして多くの事例における科学的根拠の不確かさを考慮すれば、この現象そのものを科学的問題として認識しないわけにはいきません。科学的視点に立って、長期に渡って真剣に取り組まなければならない課題なのです」と…。
一方に目をやれば、この問題について懐疑的な姿勢を保つ科学者たちの大きなコミュニティーもあります…。
エイリアンの存在や、空中での直角ターンを可能にした極秘戦闘機という説を前に懐疑論者たちは、「超常的な現象に対しては相応の、超越的な根拠が示されるべきだ」と譲りません。
これは当然の要求とも言えるでしょう。それが何であるかを示すだけの根拠や証拠は蓄積されておらず…ですから。この謎が明らかになるには、まだまだ長い時間が掛かりそうです。
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Source / POPULAR MACHANICS
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。