「AirPods」は、今までのイアホンよりも失くしやすく、失くしたときの代償も高くつくのです。

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BBC / Baby Cow

  Why AirPods Were Apple's Biggest Mistake

 アップルは2016年、当時の最新iPhoneともに新たに高価なアクセサリーである「AirPods」を発表しました。

「真のワイヤレス」を謳うこのイアホンは、そのデザインやひどい音質という意味では、アップルがもともと提供していた白のプラスチックイアホン「EarPods」とも共通していましたが、いくつかの違いもありました。 

 まず、AirPodsにはケーブルがないので、トイレに落としたり、犬や赤ちゃんが飲み込んでしまう恐れがあります。ユーザーはこのイアホンを両耳に差し込み、奇妙なアンテナのようなものがイヤリングのように、耳たぶの横にぶらさがる形になります。

 次に、アップルのステータスシンボルであったオリジナルのイアホン(2000年代のシルエットが踊る広告が記憶にあるでしょうか?「iPod」が売れたのはあのイアホンがあったからであり、あのイアホンなしでiPodの成功はなかったでしょう)とは違い、AirPodsはアップル製品に無料で付属するわけではなく、その価格は160ポンド(日本では1万6800円)なわけです。 

 耳にフィットするわけでもなく、付けている姿が間抜けに見えるこの数cmのプラスチックに1万6800円ですから…。アップルはiPhoneのヘッドホンジャックを廃止しましたから、ユーザーはこのイアホン、あるいは他社のワイヤレスイアホンを買う必要があるわけです。 

 一人前の大人が、電動歯ブラシのヘッドのようなイアホンを耳に差し込み、誇らしくもストリートを闊歩する姿は威厳があるとは言えませんね。

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AirPodsには、音量を調整する簡単な方法がない

 ですが、この状況は最近さらに悪化しました。

 というのも、この頃はAirPodsを片方だけつけるのがクールだと思われていたようなのです。「ソロ・ポッディング」あるいは「ワン・ポッドをする」とでも呼ぶべきでしょうか…。この流行は、音質があまり重視されないポッドキャストがブームになっているためかもしれませんし、AirPodsがあまりに不快なので、ユーザーが片方だけつけることで、その不快さを半減しようとしている可能性もあります。

 あるいは、誰もがすでに片方を失くしてしまったのかもしれませんし、単に片方だけでも動作するからかもしれません(AirPodsは左右それぞれが独立して、iPhoneと接続されます)。 

 いずれにしても、これはAirPodsに関する悲しい真実を明らかにするものです。

 その真実とは、アップルのトレードマークであるミニマルな成型樹脂(AirPodsの微妙なデザインは間違いなく偶然ではありません。アップルは偶然でものを作りませんし、AirPodsはオリジナルのEarPodsと同様に人目を引くようデザインされているのです)の下にあるのは、単なるBluetoothイアホンに過ぎないということです。

 AirPodsを支える技術は、『アラン・パートリッジ:アルファ・パパ』の中でフォード「モンデオ」に乗ったアラン・パートリッジがつけているイアホンと何も変わるところはありません。アップルは「これぞアップル」というスタイルで、絶望的な時代遅れのアイディアを「洗練」させ、高い値段で売りつけようとしているとしか思えないのです。

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 私は決してアップルが嫌いなわけではありません。2001年からはiPod、2007年からはiPhoneの各モデルを使ってきましたし、この原稿はMacBook Airで書いています。iPod Nanoだって持っていました。

 しばらくして、子どもたちが起きてくれば、私は自分のiPhone 8のプレイリストをHomePodで流し、朝食を作るでしょう。そしてアップルが、イアホンの音質を改善するために手を打ってきたことも事実です(でなければ、さらにひどい音質だった可能性もあるでしょう)。…とはいえ、私はAirPodsとは一線を引きますし、このイアホンを片方だけつける人とも関わりたくはありません。 

 今までのイアホンと同じように、いやそれ以上に、人々はこのイアホンを失くすことでしょう。

 このイアホンは失くしやすく、失くしたときの代償も高くつくことを忘れずにいてください。また、これまでのケーブルが付いたイアホンと同じように曲を切り替えたり、音量を調整する簡単な方法がありません。何をするにも、Siriを使う必要があります。AirPodsをダブルタップして音楽を止め、Siriに音量を上げるよう伝えなければなりません。道端で独り言のように、Siriに話しかける様子は気が狂ったかのようです。 

 そんなことにも関わらず、AirPodsはヒット製品になっています。
 

最後に、このAirPodsのCMソングに選ばれた、Marian Hill の「Down」をどうぞ。

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Marian Hill - Down
Marian Hill - Down thumnail
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 アップルの店頭在庫は売り切れていることが多く、デヴィッド・ベッカムやクリステン・スチュワート、元ニューヨーク市長のランドルフ・「ルディ」・ジュリアーニといったセレブたちも使用してきました(ちなみに、ジュリアーニは自らが最新ガジェットに通じていることを示すためにAirPodsをつけていたようですが、撮影された写真では上下逆につけるという間抜けなミスを犯していました)。

 アップルは、「AirPods 2」も開発中のようです。またますます、多くのオーディオ企業がAirPodsのような耳に差し込むタイプのワイヤレスイアホンを年内にリリース予定です。 

 2017年のクリスマス、ヘッドホン市場の75%はワイヤレス端末で占められ、これは前年から25%上昇していました。

 
 もちろん、このカテゴリーの覇者はアップルです。映画『her/世界でひとつの彼女』のように、将来的には間違いなくワイヤレスイアホンが主流となることでしょう。そのころには、ネズミのゴルフクラブのようなデザインのイアホンを受け入れる必要がなくなればいいのですが…。

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 Are you down, d-d-down, d-d-down, d-d-down, down, down? ーどうでしょう?

By Johnny Davis on July 17, 2018
Photos by BBC/Baby Cow and EsquireLucky If Sharp
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。 
編集者:山野井 俊