2018年9月12日に発表された、新型iPhoneに世間は注目しています。今回発表されたスタンダードモデル、「iPhone XR」に妥協点があるのか調べてみました。
アップルは2018年9月12日に、iPhoneの最新モデルを発表しました。
とんでもなく高価な「iPhone X」の後継機種としては、「iPhone XS」、「iPhone XS Max」というラインナップに加わっています。ですが、より関心を引くのは、「iPhone X」同様にベゼルレスながらもいくつかの妥協を許している廉(れん)価モデルである「iPhone XR」も発表されたことではないでしょうか。
そこで疑問を抱くことは、そこにある妥協点は何かということです。皆さんも気になっていることかと思われますので、今回整理してみました。
Apple
By Eric Limer on September 13, 2018
Photos by Courtesy of Apple and Getty Images
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。
編集者:山野井 俊
OLEDスクリーン
「iPhone X」、「iPhone XS」および「iPhone XS Max」における大きなセールスポイントは、これらのモデルに搭載されているスクリーンです。
今回の最新モデルについて言えば、ベゼルレスなデザインが特別な特長というわけではないのです。重要なのは、これらのスクリーンがOLEDだということです。OLEDは「Organic Light-Emitting Diode(有機発光ダイオード、有機EL)」の略であり、「iPhone X」より前のiPhoneのスクリーンに使用されてきた技術とは異なるものです。OLEDスクリーンは1つ1つのピクセルが独立して動作するもので、これはつまり、黒を表示するときにはピクセルが発光しないということになります。
これには、いくつかの利点があります。まず、このスクリーンは黒のときにはまったく発光しないため、黒をよりはっきりと表現できます。また、スクリーンが黒を表示するときには、その部分は電気を消費しないということになるため、バッテリーの節約にも役立つわけです。サムスンの「Galaxy」シリーズ(何年も前からOLEDを使用している)のようなスマートフォンが、白黒の省電力モードを搭載しているのはこのような狙いのためでもあるのです。
そのような見地から言えば…残念ながら「iPhone XR」のスクリーンはOLEDではありません。このモデルは、これまでのiPhoneと同じLCDスクリーンを搭載しており、カラーフィルターの裏側からバックライトで照らすことで色を表現しています。そのため。ブラックの表現力に欠け(バックライトからの光漏れが問題になるためです)、スクリーンの色にかかわらずバッテリー消費量は同じということになります。
また、LCDにはOLEDのような明るさはなく、色彩表現のシャープさでも劣ります。よって、明るい太陽光のもとでは少し見にくいときがあるでしょう。とはいえ、すでに「iPhone X」を使っている人でないのであれば、あまり心配する必要もないでしょう。これまでのiPhoneと、そう違いは感じないことでしょうから…その意味から言えば、これはお得かもしれません。
Apple
望遠レンズ
「iPhone X」、「iPhone XS、「iPhone XS Maxや「iPhone 8 Plus」は、背面に2つのカメラを搭載しています。このうち1つは比較的スタンダードな広角レンズで、もう1つは光学ズームが可能な望遠レンズとなっています。後者のレンズは、画質の劣化なく2倍までのズームが可能なほか、iPhoneの「ポートレート・モード」の土台にもなっています。
これらのiPhoneは、片方がズーム機能を持つ2つのレンズを利用することで、擬似的な「ボケ」効果を表現できるのです。この「ボケ」とは、写真家たちが実際のカメラと特定のレンズ・設定を使って撮影したような、被写体の背景をぼかす効果のことです。デュアルレンズのiPhoneでは、ハードウェアとソフトウェアの活用により、擬似的ながらもこの「ボケ」効果を得られるのです。
「iPhone XR」に2つ目の望遠レンズはなく、このモデルではズーム機能のない広角レンズを1つ搭載しているだけになります。
とはいっても、「ポートレート・モード」が使えないわけではありません。「iPhone XR」にもこの機能はあり、このモデルではソフトウェアのみでこの効果を再現しています。こういったソフトウェアによる「ボケ」の再現度には、わずかに疑問符がつきます。ですがアプリケーションによっては、髪の周りの部分が不自然になることもあるので…、それらの出来の悪い競合のそれと比べれば、アップルのソフトウェアは優れたであることは確かと言えるでしょう。
また、前面カメラについて言えば、「iPhone XR」はiPhone X同様に「Face ID」「ポートレート・モード」が使える深度センサー付きカメラを搭載しているので、「iPhone XS」、「iPhone XS Max」とも機能面で変わることはないでしょう。
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小さな妥協点
メタリックカラー:「iPhone XR」のカラーバリエーションには、XSと同じゴールドとスペースグレー、シルバーはありません。このモデルは、イエロー、コーラル、ブルー、レッド、ホワイト、ブラックの6つのカラーバリエーションとなっており、人によってはこちらのほうが好みと言う人も少なくないでしょう。
サージカルグレードのステンレススチール:「iPhone XR」のボディは、ステンレススチールではなくアルミニウム製です。人によっては、これも重要な点かもしれません。
サイズの選択肢:「iPhone XS」は、5.8インチの通常サイズと6.5インチの大型サイズがありますが、「iPhone XR」は6.1インチのみになります。
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目立つデメリットはない
「iPhone XR」が他の最新モデルと同じ、「A12 Bionic」チップと前面カメラを搭載していることを考えれば、「iPhone XR」を選択しても失うものはそれほど大きくはないでしょう。
アップルはかなり緻密な計算をして、このモデルを作ったのではないでしょうか。というのも、大きなデメリットがない749ドル(約8万4000円)のベゼルレス端末であれば、価格に敏感なユーザーが「iPhone 8」や「iPhone 8 Plus」などの前モデルへと機種変更することを防げることにもなりますので…。また、これによって、ジェスチャーコントロールやFace IDといったホームボタンに代わる最新機能にも、多くのiPhoneユーザーに対して慣れてもらうこともできますので…。
「iPhone XR」は2017年の超高価な「iPhone X」とは違って、新たなスマートフォンが必要な人にとっては買い替えるのに十分な理由がある端末なのです。
「iPhone X」の持つあらゆるクールな機能を、比較的安価に手に入れることができるのですから…。もちろん、「携帯電話はデザインや機能面で少しずつ変化を積み重ねつつも、ユーザーと携帯電話の関係を大きく変えるような改良をもたらしてはいない」という現状には変わりありません。例えば、バッテリー寿命が伸びたり、修理がしやすくなって長年使えるようなものにはなっていませんので…。
とはいえ、新しいスマートフォンが必要な人にとって、やはり「iPhone XR」や「iPhone XS」が魅力的な選択肢となるでしょう。そして「iPhone XR」という選択に関しては、かなり堅実なチョイスだということは間違えないでしょう。
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