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気候変動~人類を救う新植物 ― ジョアン・チョリー博士の展望

大気から大量のCO2除去が期待できる植物の開発を研究するJoanne Chory(ジョアン・チョリー)博士。いま彼女に対して、世界の注目が高まっています!

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気候変動 新植物 ジョアン・チョリー博士
Getty Images

 カリフォルニア州サンディエゴ郊外のラホヤに位置する私立の非営利法人「ソーク研究所(Salk Institute for Biological Studies / Howard Hughes Medical Institute)」のジョアン・チョリー博士は、2018年もっとも活躍が期待できる科学者とひとりです。 

 なぜなら、彼女は2017年12月に開催されたブレークスルー賞授賞式において、その3部門の中のひとつである「生命科学部門」を授賞した未来の旗手の一人だから。

 ブレークスルー賞をご存じない方に説明しますと、米グーグルやフェイスブックの創業者らが出資する財団「Breakthrough Prize」が主催するもので、優れた科学研究に贈る科学界のオスカーと言われています。 

 そんなチョリー博士が研究するのは、驚くべき革新をもたらす生き物…。その生き物とは、いたってシンプルな植物であり、生息するために必要となるのは、わずかなCO2と水、そして酸素になります。 

 それにも関わらず、この植物はとても多様な適応性があるのです。そして「どれくらいの日光を浴びたか?」など、いくつかの単純な要因がそろっていれば、大きくても小さくても、太めにも細めにも成長をコントロールできるとこと。 

 そこでソーク研究所のチョリー博士は、その植物にとって必要な要因を明らかにしました。 

「単純なルーティンで育た上げた植物の遺伝子を操作すれば、大きな進化をもらすでしょう」と、この一言で、何年にも及んで植物のさまざまな種類や適応方法などを研究してきた片りんをのぞかせました。

 どの遺伝子が植物の成長に対し、どう影響を与えるかについて…多くの答えをこれまで出してきたのです。

もし、その植物がたくさん育つようになったら…。

気候変動 新植物 ジョアン・チョリー博士
Getty Images

 彼女はいま、これまで集めていた情報を大いに利用して、大量のCO2を大気から取り除いてくれる新たな品種の植物を生み出そうとしています。 

 それによって、今後の地球における気候変動の影響を劇的に減らそうとしているのです。そんなチョリー博士の仕事ぶりに対し、このたび「2017年生命科学ブレイクスルー賞」が贈られたというわけなのです。

 このチョリー博士の研究で重要なのが、植物が産生するロウ質の物質「スベリン」。「スベリン」とは、多くの人が目にしたことのある「コルク」の構成成分でもあります。 

 なぜ「スベリン」に注目しているからというと、「スベリン」は大気からの炭素を貯蔵するのに有効な珍しい特性をもっているから…。

「化学的には、炭素数22の長鎖のヒドロキシ脂肪酸やジカルボン酸を構成要素とする重合体と考えられる「スベリン」は、生分解性(化合物が無機物まで分解されること)ではないため、数千年は生き続けることができるでしょう」と、チェリー博士は語ります。  

 また「スベリン」は、多くの植物の根でも少しだけ生成されているのです。そこでチョリー博士は、シンプルな交雑育種法を使用することによって、「スベリン」を生成する植物を容易に育てることができる策を研究し続けてきたのでした。 

 現在、博士の研究室では、「スベリン」の生産量を高めたヒヨコマメなどの収穫植物を育成することを検討しています。

地球上のCO2、約50%が排除可能!?

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 「私たちが目指すように、もし、このような植物が大量に育てられるようになり、そして、さらに多くの植物に対し、より深く根づく能力を高めることができたなら…通常の植物が生成することのできる『スベリン』の約20倍の量の『スベリン』が手に入れることができるでしょう」とチョリー博士。

 前述のとおり「スベリン」は生分解性ではないので、CO2を取り除くのに対し非常に適しています。植物の根で「スベリン」が成長すれば、大量のCO2を地中に閉じ込めることができるのです。そして「スベリン」は何千年もそこにとどまっているとなれば、大気中の炭素は徐々に少なくなっていくわけです。

「スベリン」を生成する植物は、人間がはき出すCO2を循環させ、大気のバランスをより良くしてくれるのです。

 では、どのくらいのCO2の除去を目指しているのでしょうか?

 チョリー博士は次のように述べています。

「数値でいうと世界の農地の約5%に、高濃縮の『スベリン』植物を栽培することを目指しています。これが実践されたあかつきには、私たちが地球に放出したCO2の約50%が、排除可能となる数値だと見込んでいます」

「スベリン」の研究は、最も安くおさまる環境解決策

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
2018 Breakthrough Prize in Life Sciences Awarded to Joanne Chory
2018 Breakthrough Prize in Life Sciences Awarded to Joanne Chory thumnail
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 世界の農地の約5%といっても、実はとても広範囲におよびます。ですが、彼女の計算が正しければ、これは世界的にみて、かなり経費を抑えた技術となるでしょう。 

 多くの人々が大気からCO2を除去するための効果的な方法を安価に開発しようと試みてはきましたが、今までの技術はすべて試験段階にあり、市場に出て購入できる段階になるまでに数十年かかると言われてきました。

 現在、市場に出ている炭素捕捉システムで成功している前例は、一つだけ存在しています。この研究は、スベリン生成作物が気候変動に対する完全な答えであることを意味するものではありません。

 チョリー博士は植物に対し、ある一定のレベルを超えた量の「スベリン」生成ができるよう強制してしまうと、作物を生産する能力自体を低下させる可能性があることも認めています。

 ですが、これらの改良された作物が「スベリン」の生成だけをし、作物の生産には全く役に立たないとしても、今まで提案されてきた気候変動対策のなかで最も安くおさまる解決策にはなるようです。  

 この偉大な開発を粛々と推し進めるチョリー博士。彼女の研究に対し、今後さらなる期待とともに注目を!

BY Avery Thompson
Dec. 4, 2017
Popular Machanics(原文:English)
Photograph / clémence liu(Getty Images)
Translation / Mirei Uchihori
※この翻訳は抄訳です。
編集者 / 小川和繁

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