2018年9月17日に公開された「nytimes.com」の記事によれば…「現地時間2018年9月17日(月)、米国ロサンゼルスにある本社で行われたスペースX主催のイベントでスペースX社の共同設立者およびCEOのイーロン・マスク氏は、2023年に世界初となる民間人による月周回ミッションのチケットを手に入れた人物を発表した」ということなのです。そして、そのリストの中には…そう、いま日本でも大いに注目されているあの人がいたのです!

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 以前「ESQUIRE UK」からの転載として公開した、「新ロケット「BFR」で、民間月旅行実現を目指すスペースX」の記事内で触れた日本人搭乗予定者の代表でもある前澤氏に関して、追加情報を得たのでこちらで報告します。

 同じスペースXからの発表では、彼はまず、こう叫びました。「ついに、月に行くという選択をしたことを皆さんに伝えることができます!」と…。その声の主が、日本では既にさまざまな分野から注目されるオンラインアパレルショッピングサイトを運営する、株式会社スタートトゥデイ社長・前澤友作氏です。 

 1968年にアポロ8号によって、人類初の月面着陸を果たしたアメリカの宇宙飛行士たちに次いで、神聖なる月周回軌道という旅路への参加する意志を、ロサンゼルスにある本社で開催されたイベントで発表したのです。そして、前澤氏自身もツイートしています…。   

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 この高価な旅行には、少なくとも数千ドルがかかります。

「2億ドル(約220億円)までの価格はしないだろう」とは言われていますが、その後も正確な価格はまだ公表されていません。イーロン氏も前澤氏も、いずれも価格の開示をしていませんでした。ですが前澤氏は、すでに5億円の前払い金を支払っているとのこと…。この月周回ミッションには、およそ1週間程度かかると言われており、「BFR」と呼ばれる現在も開発中となっているロケットに搭乗予定となっています。

「ロケットに関して言えば、2023年まではこの旅行の準備は整えることはできないだろう」と、イーロン氏は述べています。またさらに、「開発には20-100億ドルかかる。前澤氏の決断が、このプロジェクトの完成に有意義な貢献をするだろう」とも話しています。

 日本人にとって、ZOZOTOWNの前澤氏は知名度の高い存在かもしれません。ですが、「海外ではどうなの?」と思う方は多いことでしょう。ですが2017年に、1981年に描かれたジャン=ミシェル・バスキアの絵画を1億1000万ドルで購入したなぞの日本人なのです。この件で彼はアメリカで大きな注目を浴び、その名は広く知られるようになっていたようです。このアーティストの妹であるリセイン・バスキアさんは彼が支払った額について、「言葉もない…」とインタビューで話していましたし…。 

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 熱心なアートコレクターとして有名な前澤氏は、「#dearmoonと呼ばれるプロジェクトの一環として、地球を代表する画家・写真家・音楽家・映画監督・ファッションデザイナーなど5~8人のアーティストたちを、この月周回ミッションに同行したい」と表明し、このロケットの定員である9名分の座席をすでに自身が確保していることも公表しました。

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 一方、この月周回ミッションの発表により浮彫りになってきたのが、イーロン氏の先見性の乏しさです。スペースXの技術成果は重要ですが、イーロン氏のスペースXに関する予定表の組み立ては、あまりにも楽観的すぎるということが指摘されています。

 例えば、2018年2月に行われたスペースX社が開発した宇宙飛行用の大型ロケット「ファルコンヘビー」の初飛行テストに関して言えば、イーロン氏の予想よりも4年以上長くかかっているのです。そしてそれ以前に発表された「BFR」は、「2022年には火星への旅の準備ができる」と豪語にも近い発表をしていたにも関わらず…、同イベントでは「2023年よりも先になる予定だ」と述べていたのですから…。

 2018年夏、イーロン氏は彼のもう一つの会社である電気自動車メーカーであるテスラの開発に注力し、多くの時間を過ごしていたと漏らしています。Twitterでイーロン氏は、上場している自動車会社の株を非公開にする予定だと述べたのち、その3週間後に気が変わったことも発表しています。テスラは「モデル3セダン」の生産目標を達成するために苦戦しており、ときにイーロン氏は工場で寝泊まりもしていたという話もありました。

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 さらに2018年6月から7月にかけて起きたタイ洞窟の遭難事故では、12人の少年たちとそのコーチを救出する潜水艦のようなエスケープボートを製造するよう、エンジニアを募ってもいました。結果的にその潜水艦は使用されず、少年たちはダイバーの助けによって、泳いで救出されたのでした。

 彼がこの潜水艦の製造に関して名乗り出たとき、少年らの救出活動に貢献した英国人ダイバーのバーノン・アンズワース氏はその取り組みに対して軽視とも言うべき発言をしています。これにイーロン氏は反発し、バーノン氏を「彼は小児性愛者である」と証拠なしに罵ってしまったという事件もありました。

 そして同年9月17日には、今度はバーノン氏のほうが「名誉棄損でイーロン氏を訴えている」と発表しました。この発表がなされたのは、このイベントを行った日と同じ9月17日のことでした。テスラ社では波乱に満ちていますが、これと比較してスペースX社は、イーロン氏にとって穏やかなオアシスであり、これまでほとんどの年に事故なく、衛星と宇宙船を打ち上げてきたのです。

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Getty Images

 そんな経緯のもと、この日、スペースXは「招待客を乗せて月周回ミッションを行う」という内容の発表を行ったのですが…実は、この内容と同じ内容の発表会はすでに過去行っているのです。つまり、この発表会は2回目になるわけです。

 それは2017年2月のこと。「乗客2人を月周回ミッションに参加させる」と発表しており、前払い金もすでに支払われていたのです。その飛行は2018年後半に予定されていました。そしてイーロン氏は、2018年2月に「有人での飛行ミッションに注力するため、『BFR』の開発に専念する」という意向を明らかにもしたいたのです。

 これには電子機器の近代化に伴って新型「ファルコン9ロケット」の需要が高まり、小さな衛星を運ぶ「ファルコンヘビー」のような小さなロケットの市場が縮小化していることも起因しているとも読み取れます。そして2018年2月にスペースXは、「『ファルコンヘビー』に人間が搭乗できるような費用をつぎこむことや努力は行わない」と宣言したわけです。

 それと同時にスペースXは、NASAがアポロミッションに使用した「サターンⅤ」よりも強力な、次世代の巨大ロケット「BFR」の製作に取り組み始めたのです。

 このロケットは、「ファルコン9」と「ファルコンヘビー」ともに代用できることを目的としており、最終的には火星への旅で100人を搭乗できるように設計されています。(スペースXの社長兼最高執行責任者(COO)を務めるグウィン・ショットウェルさんは、「Big Falcon Rocket」という名前を公表しています。イーロン氏と同社のニュースリリースでは、「『B』はBIGで、『R』はROCKETからくる」としており、『F』の略語については曖昧でした。

「BFR」は、「ファルコン9」や「ファルコンヘビー」よりもはるかに野心的なのです。より大きく、より強力で、再利用も可能となります。それはつまり、技術的な問題に遭遇する可能性が、さらに高くなるということも意味しているのです。そして、「BFR」の設計は未だに進化しつづけているのですから…。

 2016年イーロン氏は、幅30フィートのスリムな「BFR」を発表する前に、「惑星間輸送船」と呼ばれる直径40フィートの巨大なロケットの解説を行っています。

 今回、スペースXがリリースした「BFR」の画像は、以前に公開されたものよりも大きく、NASAを引退したスペースシャトルを彷彿とさせる外観になっています。この外観に対しイーロン氏は、「以前のデザインを反復したものです」と記者会見で話していました。

お時間のある方は、2時間弱のイベントの様子も閲覧ください

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First Private Passenger on Lunar Starship Mission
First Private Passenger on Lunar Starship Mission thumnail
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 これまで7人もの人が、ロシアの「ソユーズロケット」に乗って、国際宇宙ステーション(ISS)での短期滞在に費用を支払ってきました(Intentional Software会長兼最高技術責任者であるチャールズ・シモニー氏は2度も滞在しています)。

 2023年には、このような歴史的な民間人として初の月周回ミッションは実際に行われることとなるのでしょうか。そして前澤氏は、誰を同行して行くのか? 今後の展開に期待が高まるとともに、歴史的な瞬間が楽しみで仕方ありません。

Source:The New York Times(原文:English)
Translation / Mirei Uchihori
※この翻訳は抄訳です。
Edit / Kaz Ogawa