2018年4月、英保守党所属の政治家マイケル・ゴーブ環境相は、「プラスチックゴミを減らして海洋環境や海洋生物を守るため、プラスチック製のストローやマドラー、綿棒の使用を禁止する」という計画を政府代表として打ち出し、その後、われわれは焼けつくような夏を実際経験しながら(そして、それは間違いなく前年よりも増しているとも実感しながら…)、われわれは映画『マッドマックス 怒りのデスロード』で描かれているようなディストピアへと、着実に向っているのではないか…と実感している人も多いことでしょう。

そしていま、国連のIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change 、気候変動に関する政府間パネル)は、われわれが悲劇的な生態系の崩壊へといかに近づいているかを示す新たな報告書を発表しているのです。

このレポートを見る限り、事態は非常に深刻なようです。実際に、「かなり」という言葉が4回つくほど、それはそれは深刻な事態なのです。

同レポートによると、私たちは地球の気温上昇幅を摂氏1.5度以下に抑えられる状態とはほど遠く、そして「急速で広範かつ前例のない変化が社会のあらゆる部分で生じる」ことがなければ、地球の気温は摂氏3度近く上昇するだろうとのこと。

さらに私たちには、そうした気候変動に対処するための時間に関して、「最悪の場合は12年ほどしか残されておらず、それができなければ、あらゆるものが崩れ去っていくだろう」というコメントも含まれていたのです。

同レポートに記された他のポイントを以下に記しましょう。

◇摂氏2度の気温上昇が手に負えない影響を及ぼす可能性が明らかに 

「地球の気温が2度上昇すると、1.5度の場合に比べてはるかに大きな悪影響が野生生物に出ます(たとえば、珊瑚礁は2度の気温上昇で完全に消滅する)。そして海面の高さは10cm上昇し、洪水の影響を受ける人が1.5度の場合に比べて1000万人も多くなるのです。2度の気温上昇は、小麦・トウモロコシ・米のような農作物を育てる人類の能力にも影響を及ぼし、飢饉や難民の危機が生じる可能性がはるかに高まる」とのことです。

◇人間にとって残された時間は、
これまで考えていたよりもずっと短い(少ない)

「気候変動になんとかうまく対処しようとするなら、二酸化炭素の排出量を2030年までに2010年比で45%削減する必要がある」と、同レポートは述べています。排出量削減のための計画は、劇的なスピードで実行される必要があります。

2047年までに世界をカーボンニュートラルな状態に持っていき、気温上昇を1.5度以下に食い止める3分の2の可能性を手にすることを視野に入れて、計画を進めなくてはなりません。そして、大気中の炭素を1000億トンから1兆億トン取り除く必要もありますが、「これはカーボンキャプチャー関連のテクノロジーを実装することと植樹をすること、さらにバイオ燃料生成用として『エネルギー作物』を約700万平方キロメートル植えつけすることで可能になる」と同レポートは示唆しています。

なお、700万平方キロメートルというのは、オーストラリアの国土よりわずかに狭いくらいの面積になります。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Secretary-General António Guterres calls for global action on climate change
Secretary-General António Guterres calls for global action on climate change thumnail
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◇各国政府は多大な金銭的負担を迫られる

「世界の国々が、化石燃料に頼らない未来の実現のためにそれぞれの産業と社会のあり方を完全に作り変えるためには、20年間にわたってGDP(国内総生産)の2.5%にあたる金額を予算として割り当てる必要がある」と同レポートは示唆しています。

ちなみに世界全体でのエネルギーに対する投資額は、年間およそ2.4兆ドル(約269兆円)です。

◇石炭燃料の終焉

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中国は今すぐに対応すべき問題が山積みとなっている。

同レポートでは、主要な推奨事項のひとつとして、石炭をエネルギー産業からフェイズアウトさせることを挙げています。

しかも、これまで想像されていたペースよりもはるかに速いペースでフェイズアウトさせ、今後30年間に再生エネルギーによる電力の供給を全世界の発電量の85%まで引き上げるように推奨しています。英国には7つの石炭発電所が存在していますが、現時点でそのうちの3つは今後も現状通り稼働し続けるとみられています。

ただし、他の石炭発電所は燃料源をバイオマスに切り替えるか、あるいは全面的に閉鎖されることになりそうです。

◇どうしてこれまで十分な対策が打たれなかったのか

この疑問に対する答えのひとつは、世界的に見られる政治の右傾化です。

トランプ大統領はもっと真摯に環境問題に取り組むべき

トランプ米大統領がオバマ元大統領時代にできた排出規制の施策を廃止したり、気候温暖化対策についての国際的な枠組みを定めたパリ協定から(米国を)離脱させると脅しをかけていたりすること、あるいはブラジルの次期大統領候補と目されるジャイール・ボウソナロ氏(極右政治家)やアマゾンの熱帯雨林を開墾してアグリビジネスを振興するという彼の計画、あるいはスコット・モリソン豪首相が「自分は温暖化に関するグローバル・カンファレンスや、その他すべてのナンセンスなことに金を使ったりはしない」と発言していたことを思い出してみてください。

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オバマ前米大統領は温暖化現象の深刻さを理解していたが、トランプ米大統領は真摯に世界の現状を受け止めていないようです。

2050年までに、世界の炭素排出量が酸素生成量と等しくなるカーボンニュートラル状態にならないと「壊滅的な気候変動が避けられない」と、多くの科学者たちが強く警鐘を鳴らしている現在。「全世界全人類による取り組みが必須な時期だ」と、声を大にして言いたいのです。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。