ある委員会とは、米証券取引委員会(SEC)のこと。アメリカにおける株式や公社債などの証券取引を監督・監視する連邦政府の機関であるSECは、マスク氏の問題ツイートを受けて彼を上場企業のトップの座から永遠に追放することを連邦地裁に求めていたのでした…。
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The Bombshell Elon Musk Lawsuit That Could End His Career: Explained
「テスラ」や「スペースX」などを手がけるイーロン・マスク氏のソーシャルメディア、「ストラテジー(戦略)」はこの半年間、サボテンとネズミ取りがあふれているスイミングプールに飛び込むかのように自滅の一途をたどっていたとも言えるでしょう。
マスク氏はタイの洞窟行方不明事件の際には、救助に参加していた男性を「小児性愛者」と根拠なく罵倒し、「なぜ自分を訴えないのか」と挑発していました(その後、この男性からは実際に訴訟を起こされています)。また、ラッパーのアジーリア・バンクスとの一件では、バンクスはマスク氏の家の前で延々と待たされていたようです(彼女はInstagramのストーリーを次々に投稿しながら、マスク氏とそのパートナーであるアーティストのグライムスを批判しました)。
そして極めつけはジョー・ローガン氏のポッドキャストで、マスク氏はマリファナを吸いながら番組に出演して物議をかもしたのですから…。
とはいえ、今回ばかりは本当に厄介な問題に発展しました。
2018年8月7日、マスク氏はテスラの非公開化の準備ができたことを強く示唆し、同社の株価を急上昇させた「(非公開化のための)資金は確保された」というツイートで、米証券取引員会(SEC)から詐欺の疑いで捜査を受けることになったのです。
以下がそのツイートです。
マスク氏のツイート:
「1株あたり420ドル(約4万8000円)でテスラの非公開化を検討している。資金は確保された」
この件については、軽微な罰で済むような話ではありません。最悪の場合マスク氏は上場企業のトップの座に就くことを禁じられ、自身やテスラに重い罰金が課される可能性もあるのです。
米証券取引委員会(SEC)が提訴した理由について
スペースXの民間人初の搭乗者となったZOZO前澤氏を紹介するマスク氏
米連邦地裁に米証券取引委員会(SEC)が提出した訴状によれば、SECはマスク氏のツイートについて「彼が決断すれば、当時の株価に大幅なプレミアムを乗せた価格でテスラを非公開化できるのがほぼ確実であり、そのために必要な数億ドル規模の資金が確保されている。唯一の不測の事態は株主の投票のみという誤解を招くもの」と指摘。
実際には、マスク氏はどの潜在的な資金提供者とも価格などの取引条件について、確認はおろか協議さえしていませんでした。
また、この訴状はさらに「マスク氏は株式市場に重大な混乱を引き起こし、結果として投資家に損害を与えた」とし、問題のツイートについて「虚偽で誤解を招くものであった」としました。
このほか訴状のなかでは、「マスク氏はテスラが数カ月間生産目標を達成できなかったことで、空売り筋のターゲットになっていたことを感じていた」と。また、「マスク氏は以前、自分の失敗に賭ける空売り筋について『焼かれる』だろうと言っていた」などの指摘もなされています。
自身の資産を拡大させるためにツイートした可能性が浮上
SECは、マスク氏が同日に投稿した別の3つのツイートについても、「非公開化の準備が整っているという印象をさらに強めるもの」と指摘。
これらのツイートは、「非公開化したとしても、現在の『すべての』株主がテスラとともにあってくれればいいね。特別なファンドを立ち上げ、誰もがテスラをサポートできるようにするとか」、「株主は1株あたり420ドルで売ってもいいし、株式を保有したまま非公開にすることもできる」、「投資家はサポートを同意済み。また、確実と言えない唯一の理由は、非公開化は株主の投票次第だからだ」といったものでした。
では、SECを怒らせたのは何だったのでしょうか?
それは今回のツイートによって、同日、テスラの株価が11%も上昇し、同社の時価総額が63億ドル(約7180億円)も拡大したことによるものです。またマスク氏の純資産も、1日で12億ドル(約1360億円)増加していましたので…。
テスラ株が下がると予想していた空売り筋にとって、これは痛烈な一撃でした。
またテスラが、2018年8月1日にリリースした2018年第2四半期の収益報告はやや先行きが怪しく、一部のアナリストは同社の現金が尽きかけているとの結論を出していましたから、今回のツイートはこれを根拠に、テスラの下落に賭けていた投資家たちにも損害を与えました。
しかしその後明らかになったのは、マスク氏はサウジアラビアの政府系ファンドから資金を得られる可能性が高いと過信し、有頂天になってしまっていたということです。この非公開化の提案は2018年8月24日に、正式に白紙撤回となりました。
テスラ「Model X」の発表会で、特長を説明するマスク氏
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SECの主張は基本的に、「マスク氏は、テスラの株価を膨らませて空売り筋を叩きのめすと同時に、テスラの時価総額と自身の資産を拡大させるために当該ツイートを投稿した」というもので、「彼自身、ツイート時点で資金が確保されてなかったことはわかっていた」としています。
「マスク氏が自らの発言で株式市場を操ろうとした」と糾弾する訴訟は他にも起こっており、SECの提訴は投資家の誤解を招いたマスク氏に対し、罰金の支払いのほか、今後上場企業の幹部あるいは取締役に就くことを禁止するよう求めているのです。
今回の一件について、マスク氏は明らかにがっくり来ているようです。
彼の声明の中で、「SECによる今回の不当な提訴に深く悲しませられ、失望しました」としており、「私は常に真実と透明性、投資家の利益を最優先して行動してきました。私の人生で最も重要な価値は誠実さであり、この点で私は決して妥協したことはないという事実が今後明らかになるでしょう」と語っています。
テスラの新型電気自動車の投入やスペースXの宇宙旅行計画など、あらゆることで注目を浴びているマスク氏。そこで、それらの計画を効率よく実現するために、今回のテスラ株問題を起こしてしまったのだという見方が強くなっています。
そして、ある解答が出ました。
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マスク氏は2018年9月29日(現地時間)、2000万ドル(約22億8000万円)の制裁金支払いと同社取締役会会長からの辞任という条件で、SECと和解しました。ですが、テスラCEOには留まります。マスク氏は9月29日(土)から45日以内に、テスラの取締役会から退くことになります。
地裁に対して提出された和解の条件には、マスク氏は向こう3年間会長職に就任ないし就任の試みを行わないこと、そしてこの間、独立の人物が選定され会長職に任命されることが含まれています。
SECによれば、これと別個にテスラ社も2000万ドル(約22億8000万円)の制裁金を支払うということ。そしてこの和解には、マスク氏がSECの告訴内容に関して認否を明らかにしないことが含まれています。また、テスラ社は独立の取締役2名を新たに任命し、新しい取締役を含む独立委員会がマスクによるコミュニケーションを監督することになるということです。
上の文書は、和解条件全文になります。
今後のマスク氏の動向には、目が離せません。われわれの夢と希望を打ち砕くのではなく、さらに英気とそして鋭気も養うほど磨き上げていってほしいものです。
By Tom Nicholson on September 28, 2018
Photos by Getty Images
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。
編集者:山野井 俊