NBAサンアントニオ・スパーズのグレッグ・ポポヴィッチ・ヘッドコーチは、チームに優勝トロフィーをもたらすために雇われており、その手腕は確かなものです。ですが、ポップ(ポポヴィッチの愛称)は単なるバスケット指導者ではありません。     

 2016年、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、彼がサンアントニオ・スパーズにもたらした、ある種のマインドについて特集しました。ポポヴィッチのもとで選手たちが学ぶよう求められたのは、単なるバスケットの技術やコンディション調整の方法だけではありません。歴史や時事問題を知り、民主主義国家の市民として力を尽くすための方法を学ぶよう導かれてきたのです。ポポヴィッチはなぜこのような選手の啓蒙に目を向けたのか。 

 その1つの理由について彼は「バスケットを教えるだけなら、すぐに退屈してしまいますから」と語っています。しかし、現代の米国が直面している未曾有の危機について、彼が強く意識しているのも確かです。 

 米国は瀬戸際に差し掛かっています。そして、ポポヴィッチは現在の社会的・文化的・経済的状況が、ローマ帝国の末期を思わせるものとなってきていることに繰り返し懸念を表明してきました。彼はドナルド・トランプについて、「大統領としての立場をゲーム番組のように扱っている」と非難し、国内の混乱や国際的な事件をリアリティ番組「アプレンティス」の新たなエピソードになぞらえました。

 黒人歴史月間がNBAや米国にとって 重要であることをポポヴィッチが語る

 また、トランプを「魂のない臆病者」、「病的な嘘つき」、「誰もが知る不適任な大統領」と呼んだこともあります。ですが、ポポヴィッチは単にトランプ批判をしたいわけではありません。彼は米国にこのような政治をもたらした歴史的背景があること、だからこそ人々が人種差別問題に改めて直面しているということを十分理解しているのです。 

 ポポヴィッチは以前、コリン・キャパニックやNFL選手たちによる人種差別への抗議についても率直な意見を述べました。そして、2018年2月12日にそんな彼が、「黒人歴史月間がNBAや米国にとってなぜ重要なのか」という質問への答えのなかで、この国の根本的な問題をストレートな言葉で語ってくれました。 

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これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。


「米国は差別主義者の国です」とポポヴィッチは語りました。このショッキングな指摘は、残念ながら必要とされていたものです。最近では、司法長官のジェファーソン・ビューレガード・セッションズ3世でさえ「南北戦争は、州の権利や関税、ある種の生活様式の維持のために争われたものではなく、奴隷制度をめぐるものであった」とはっきり認めており、権力の座にある白人男性からのこういった発言が増えてきたことはポジティブに捉えるべきかもしれません。アメリカ国民たちは「米国はまだまだ人種差別の国である」という事実に向き合う必要があります。けっしてごまかしたり、目をそらすことはできないのです。 

 もし、国民が現在の米国社会の構造を取り繕い、事実に直面することから逃げれば、米国は遅かれ早かれ、ローマ帝国と同じ運命を辿ることになることでしょう。

From ESQUIRE US 原文(English)
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。