米国の民間刑務所は、搾取と虐待の温床になっています。

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  America's Prisoners Are on Strike. They're Right to Be.

 米国で今起こっている最も異常なことは、トランプ大統領のことばかりではありません。つまり、ロシアのハッカーやポルノ女優への口止め料の支払いについてや、ダチョウ革のコートなどの話題に勝るとも劣らないニュースで盛り上がっているのです。

 それは…2018年8月21日に起こったストライキに関する話題です。というのも、このストライキは刑務所で展開されたからです。そう、収容者数が世界一を誇るこの国では、なんと受刑者たちがストライキを行うのです。

 以下、「ガーディアン」紙からの引用を 

米国では受刑者を中心としたメンバーが主催する、19日間の平和的抗議が各地で計画されています。このストライキは受刑者向けに相互扶助の促進や法的研修といったサポートを行っている囚人グループ、「ジェイルハウス・ロイヤーズ・スピーク」の収監メンバーが指揮を執るものになります。同団体は数日前、刑罰によってかなりの報復リスクも被る可能性のある今回の抗議呼びかけについて、以下のような匿名の声明を発表しました。 

「これは基本的に人権問題です。受刑者らは、自分たちが動物と同じように扱われていると思っています。米国の刑務所はまさに戦場です。彼らは現在の収監状況に対し、毎日苦痛を感じています。一部の受刑者にとっては、現在の状況は死んでいるも同然と言えるでしょう。そんなわれわれには、失うものなどありません」。

収容所での受刑者たちの様子を動画で確認

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Here's Why Inmates In The U.S. Prison System Have Launched A Nationwide Strike | TIME
Here's Why Inmates In The U.S. Prison System Have Launched A Nationwide Strike | TIME thumnail
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 今回のストライキは、断固としたものながら平和的な抗議になる見込みです。とはいえ、この声明の最後の一節には、過去に起こった刑務所での暴動を思い起こさせる恐ろしい警告がなされています。

 1971年、アッティカ刑務所の受刑者は、所内の待遇改善をめぐって暴動を起こしました。これによって、39人が死亡しているのです。そして現在の状況も、当時のように爆発寸前になっているということなのです。このストライキの主催者の一人は、ニュースサイト「ザ・インターセプト」のナターシャ・レナード記者に対して次のように語っています。 

「ザ・インターセプト」引用: 
「われわれのメッセージは、『状況が変わらなければ、アッティカの暴動の再来になるようなリスクがある』ということです」と、D氏は語りました。

  
 主催者たちが掲げている要求の数々は、無茶なものではありません。彼らは1971年以来歪められてきた、刑務所環境のさまざまな変化に言及しています。 

 たとえば、彼らが求めているのは「過去数十年で定められた受刑者に不利な各種法律の廃止」、「犯した罪の内容にかかわらず、希望するすべての受刑者が更生プログラムを受けられるようにすること」、「受刑者向けのペル・グラント(米政府による奨学金)を復活させること」などです。「刑事司法改革」を目指す超党派的な取り組みが実際に存在するなら、この要求のリストは交渉の出発点にふさわしいのではないでしょうか。 

 ですが、このストライキが勃発した本当の理由には、米国の囚人労働システムに根深くはびこる搾取と虐待の問題があります。 

 
さらにつづけて引用:
受刑者らが最も強く要求していることの1つは、「わずかな賃金と引き換えの強制的な労働の即時終了」です。これは米国の刑務所に広く行き渡った慣行であり、ストライキの主催者は「現代の奴隷制度」と呼んでいます。全米では、80万人以上の受刑者が毎日掃除や調理、芝刈りなどの仕事をさせられており、これは一部の州では強制的に行われています。 


 こういった労働の対価は極めて低く、たとえばルイジアナ州では1時間あたりわずか4セント(約4.5円)に過ぎません。20億ドル産業における、このような低賃金労働は奴隷制度に等しいものですが、これは合衆国憲法修正第13条によって支えられているのです。

 憲法では、奴隷や自発的ではない隷属を禁止されているのです。

 ですが、「適正な手続を経て有罪とされた当事者に対する刑罰の場合を除き」という重大な例外があります。これは言い換えれば、受刑者には憲法上の権利がなく、露骨に搾取することができるということなのです。

   
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写真:受刑者たちの寝室。Photograph / Getty Images  

 
 民間の刑務所は、ほとんど無法地帯。「聡明なる」政治家たちが考案して以来、ずっとこのような状態なのです。この場所では、米国社会を脅かす「精神的な債務」とも言うべきものが積み重ねられています。極めて人種差別的な状況において、人間を金儲けの道具にすることは奴隷制度と同じ悲しい歴史をもたらすのではないでしょうか。

 これでは、決していい結果になるとは思えないのです。

By Charles P. Pierce on August 23, 2018
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ESQUIRE US 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。 
編集者:山野井 俊