人間誰しも嬉しい日もあれば、
辛い日もあります。
しかし、常に冷静沈着、
私感を見せることなく
視聴者にニュースを届けるアナウンサー。
この仕事は、なんてタフな職業であるのかと
世界中の人が改めて知ることとなりました。
ニュース速報を読み上げるスプリート・カウル氏(Supreet Kaur)、28歳の姿。
Supreet Kaur
インドのニュース番組『IBC24』でアナウンサーを務める女性、スプリート・カウル氏(28歳)。彼女はある土曜日の午前10時に、いつものようにニュースを読み上げていました。
すると、インドのマハサムンド郡で、乗用車にトラックが背後から突っ込むという悲惨な交通事故のニュース速報が舞い込んできたのです。カウル氏は、(平然を保ちながら)現場に駆け付けた記者に詳細を伝えるよう話かけました。その現場記者は、車種と車内にいた5人のうち3人が死亡したことを伝えましたが、犠牲者の名前は公表しませんでした。
その瞬間、カウル氏は、「自身の夫が死亡したことを悟った」とのことです。なぜならその日、彼女の夫はその地域に旅行していたこと、そして、その夫が乗っていたクルマの車種、そして人数。複数の条件が一致していたからだそうです。さらに、そのニュース速報を彼女に読み上げるよう指揮した『IBC24』の番組責任者には、死亡した人の名前に関する情報はすでに入っていたのですが、あえて彼女には伝えなかったとのことです。
そのニュース速報を読み終えた後も、番組はまだ続きます。それゆえ、(夫の死を察していてもなお)彼女は別のニュースを約10分間読み上げていたのでした。
「番組が終わり、カメラがオフになった瞬間、カウル氏は親戚に電話して泣き崩れた」と、インドのニュースサイト『The Indian Express』に番組関係者にコメントしています。
表情がリラックスしている、普段のスプリート・カウル氏。 @supreetmedia via Twitter
カウル氏は一年前に結婚したばかりで、娘がひとりいます。彼女がそのニュースを視聴者に伝えているとき、いったいどんな気持ちだったのでしょうか。想像するだけで心が痛みます。そして、彼女の仕事に対するプライドには、尊敬の念を抱かずにはいられません。アナウンサーというジャーナリズムの世界に従事する人がもつ仕事に対する姿勢には、頭が下がるばかりです。そして、死亡者がカウル氏の夫であることを知りながらも、カウル氏にアナウンスを続けさせた『IBC24』の番組責任者の仕事に対する姿勢…、ジャーナリスト魂を感じざる負えません。
《次ページより、そのニュース速報が視聴者に届けられた瞬間を動画でご紹介》
まさにジャーナリストの鏡。勇敢な女性に胸が打たれます
実際に流れたニュース速報。
Mirror『TV news presenter learns of husband's death live on air during breaking news report on his car crash』参照
The Indian Express『Chhattisgarh: India finds a new hero in news anchor Supreet Kaur; calls her ‘braveheart’, ‘woman of courage’』参照
Text & Edit/Hikaru SATO