レックス・ティラーソン国務長官が更迭されるという報道が広がっていますが、これが本当だったとしても、前任のジョン・ケリーが退いたときほど残念に思うことはないでしょう。しかし、ティラーソン国務長官の後任にマイク・ポンペオ現CIA長官が就き、CIA長官にトム・コットン氏が就任するという話が本当なら、私はヤギの死体を燃やして邪神に祈りを捧げてでもティラーソン氏が戻ってくるよう願うことでしょう。

 存在感のないティラーソン氏に代えて、危険で愚かなこの二人を要職に就かせるのは、懸命な民主主義で下されるべき判断ではありません。

 ポンペオ氏は、2010年の(保守系の草の根運動である)ティーパーティ台頭の異常な流れを受けて当選した議員です。

 イスラム嫌いのフランク・ギャフニー共和党議員は、以前「オバマは、暴力的な斬首や磔、キリスト教徒殺しなどについては否定的であるにしても、少なくともISISたちがこのようなテロ活動に身を捧げている大義には親しみを抱いている」という馬鹿げた主張をしたことがあります。そして、これに同意したのがポンペオ氏です。また、ポンペオ氏は、ムスリムアメリカンの議員を「世界イスラム帝国のスパイの可能性がある」として、米諜報特別委員会から追い出そうとしたこともあります。 

 右翼監視サイトの『ライト・ウィング・ウォッチ』には、彼の以下のような発言が紹介されています。

 「カリフ制を拡大する取り組みは、中東やその他ムスリムが人口の大部分を占める地域に限定されているわけではありません。そして、議会のあらゆるメンバーがこのことについて同じように理解し、安全を保つためには必要な対策を取ることができるという考えをもつべきです。私は、防諜活動のリスクや諜報活動に何らかの影響を及ぼすリスクがあるときには常に危機感をもってきました。憲法で規定される責務をもつ議会のメンバーすべてが、このような危機感を共有する義務があるのです」とポンペオ氏。

 これが新たに国務長官に就任する可能性がある人物の発言です。

 しかしながら、世界が何より恐れるべき事態はコットン氏のCIA長官への昇進ではないでしょうか。

それは最も深刻で、最も危険な問題と言わざる負えない。

 コットン氏は、ポンペオ氏の当選をもたらした狂気とも言うべき潮流に乗って、アーカンソー州で当選した議員です。

 彼については「失言の絶えない酒場のろくでなし」といったイメージを抱く人もいるでしょう。コットン氏は自分が何でも知っている(と思っている)ことをあまりにも過信し、自分の意見に異を唱える相手に対しては、その知能をはっきりと見下すような傲慢な人物です。

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マイク・ポンペオ現CIA長官(中央)の今後の動向にも注目。

 コットン氏といえば、オバマ政権と核協議で合意しようとしていたイランの指導者たちに対し、連名の書簡を発表して邪魔をしようとした人物でもあります。この書簡では、全知全能の自らが合意を覆すとも言わんばかりに、「核協議での合意は、次期大統領決定後の米議会で白紙撤回される可能性がある」としています。

 またコットン氏は、水責めが拷問に当たらないと考えている人物でもあります。この考えの根拠については、自分が誰よりも優れていると考えている本人以外には理解できないものです。

 CNNは以下のように伝えています。

 「水責めは拷問ではありません。米軍では自軍の兵士に行うこともあるものです」と、コットン氏は『ザ・シチュエーション・ルーム』(CNNの報道番組)のなかでCNNのウルフ・ブリッツァー氏に主張しました。ブリッツァー氏はこれを遮るように、「しかし、米軍で水責めはもうしていません」と反論しました。

 このことに対しコットン氏は、「しかし、ベテラン諜報機関高官が米国大統領のもとにきて、『われわれはこのテロリストが非常に重要な情報をもっていると考えており、これを手に入れる必要があります。このためには水責めしかありません』と言えば、これは困難な決断です。しかし、大統領とはそもそも困難な仕事なのです。そして、このような困難な決断をする覚悟がなければ、大統領にはなるべきではありません。ドナルド・トランプ米大統領はとてもタフな男であり、このような困難な決断を下す覚悟があります」とコメントしました。

 一方で、ブリッツァー氏は同じ共和党議員で、ベトナム戦争時代に捕虜として拷問を経験したジョン・マケイン上院議員について言及しました。また、「拷問はジュネーブ条約と国際法に違反する」とも指摘しました。これにコットン氏は、次のように反論しています。

 「この点について、私の意見は異なります。米国の軍人が志願したことや、ラジオDJが志願したこと(「水責めは拷問ではない」と発言して、実際に水責めを体験したラジオDJのエリック・ミュラー氏のこと)は拷問ではありません。それが米国人の生活を守るために必要であったことならば、苦渋の決断というべきです」とコットン氏。

 これほど傲慢で根拠のない自信に満ちた人物は何が起ころうと、諜報機関のトップに就くべきではありません。

 そう、マイク・ポンペオ氏は適任ではないのです。

 誰もが逃げ出そうとしているトランプ列車に乗り込もうとしている…トム・コットン氏、彼のCIA長官就任については、深刻で危険な問題と言わざるを得ません。

Source / ESQUIRE US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。