「Lock Her Up !(あの女を逮捕しろ!)」ードナルド・トランプを大統領候補者として支持した人々は、彼とその名代であったマイケル・フリン氏のような人たちが考え出したこのフレーズを、米大統領選の最中、各地で開かれた集会や共和党全国大会で繰り返し口にしていました。 

「あの女」とはヒラリー・クリントン氏のこと。彼女が国務長官時代に、「私用のメールアカウントを使って仕事のメールをやりとりしていたことが違法行為にあたる」というにより、このフレーズの生まれたのでした。しかしトランプらのこの言い分が、とんでもない偽善であることが今になってはっきりとしてきました。それはいまトランプ自らに対し、大統領選でのロシアによる選挙干渉の可能性など、複数の調査が進められているからです。 

 
 また彼の名代のうち、フリン氏を含む複数の人物が連邦当局による捜査で、有罪であることを認めています。 

 トランプのアドバイザーのうち少なくとも6人が、ホワイトハウスでの仕事に私用のメールアカウントを使用していたのです(ヒラリーが刑務所送りに価するとトランプが示唆していた、まさにそれと同じ行為があったことを私たちが知ったのは、ずっと昔のことではなかったでしょうか…)。しかし今は、「恥知らずの時代」です。なので、そうした罪さえ十分とは言えません。 

 政治メディア「ポリティコ」が報じたところによれば、トランプ大統領は通信の機密を保護するためのセキュリティ機能が不十分な携帯電話を使っているそうです。

 彼が通話用に使っているスマホにはマイクロフォンとカメラ機能が付いており、また、この端末がどれくらいの頻度で新しいものと交換されているかは明らかではありません。そのため、米国の大統領がハッキングされたり、監視されたりするリスクにさらされている可能性があるのです。

トランプはセキュリティ面を気にせず、ずっと同じスマホを使用中です

 大統領は、もうひとつ別のスマホも使っています。

 こちらのほうは、ツィッター・アプリとそれにいくつかのニュースサイトがプリロードされているだけのものですが、これをもっと頻繁に交換して欲しいという側近の懇願に対して大統領は、「それは、あまりにも不便すぎるだろう」という理由で抵抗してきています。「あまりに不便すぎる」というのは、ヒラリー・クリントン氏が私用メールの濫用を容赦なく非難されていた際に使っていたのと、まったく同じ言い訳です。 

 
<引用> 
「私は便利さを優先して私用のメールアカウントを使ったが、そうしたのは仕事のメールと私用のメールとでそれぞれ別の端末を使い分けるよりも、ひとつの端末を持ち歩くほうが簡単だと思ったからだった」 

  
 最近では、「それほど重要ではないだろう」ということが重要なのです。

 クリントンのメールの一件では、「便利さを選ぶこと」は、おそらく大統領候補者としての資質を疑われる「セキュリティ・プロトコル軽視」の証拠でした。ヒラリー・クリントン氏の選挙戦に関する報道では、この話題が圧倒的に大きな部分を占めていました。偏りがないようにみせることに熱心な政治記者たちが、この話題をトランプのふざけた振る舞いと同様のものとして報道していたこと…それによって、ことの次第を大きくしたのでしょう。 
  

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Photograph / Getty Images 

 しかし、このケースでは、それは話の半分に過ぎません。「ポリティコ」によれば、大統領は彼の「ツイッター用スマホ」を何カ月も交換せずに使い続けているそうです。 

<引用> 
大統領は最長で5カ月も、自分のスマホをセキュリティ専門家にチェックさせずに使い続けていた。トランプの通話用スマホ(実質的にフィーチャーフォンとして使われているもの)が、どれくらいの頻度で交換されているかは明らかでない。 

  
 実際のところ、トランプが電話をかけるのに使うスマホがどれくらいの頻度で交換されているのかは、私たちにはわかりません。そして、そのことから、セキュリティ機能の不十分な端末、誰かに監視されたりハックされる恐れのある端末を使って、大統領が友人たちに電話をかけているという可能性も残ります。 

 もっとも、口が堅いことで知られるドナルド・トランプ大統領のことですから、深夜の電話でショーン・ハニティー(保守系政治評論家)に国家機密を漏らしたことや、それを他の誰かに聞かれていたことなどといったことは一度もなかったことでしょう。 

 
 トランプがうっかり口を滑らせ、トップシークレットや機密度の高い情報を誤った文脈で漏らしたことは、未だに一度もありませんから…。 

 
 しかし、トランプのツイッター用スマホについては、私たちもよく知っています。あるホワイトハウス高官は、「ポリティコ」に対して次のように言ってのけていますし…「ツイッター用スマホやツィッターのアカウントのセキュリティを、コントロールするのために、定期的なチェンジ・アウトを行う必要はない」と…。

 
 それでは彼らが正しいこと、そして、どこかのハッカーグループが「大統領のツイート」を乗っ取り、たとえばインドネシアに対して宣戦布告するといったことのないよう願いましょう。そしてもし皆さんが、そんなツイートを目にしたときは、まず真っ先に「大統領のツイッターがハッキングされたか」と思ってください。 

 
 まさか大統領が、ツイッター専用のスマホを使用していたとは、誰もが思っていなかったことでしょう。そんな、皮肉に満ち溢れたトランプ大統領のツイッター専用スマホに今後も要注目です。


From ESQUIRE US 原文(English)
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。