敵対的な外国勢力による干渉は容易なのかもしれません。今回、政治ジャーナリストのチャールズ・P・ピアースが、アメリカ国民の視点で自動投票機について語ってくれました。

アメリカの民主主義は、われわれが思うほど揺るぎないものではないのかもしれません。2017年7月30日配信のCBSニュースで、次のような内容が報じられています。

「『コペンハーゲンIT大学カーステン・シュールマン助教授は、ラスベガスで開催している「デフコン(世界的ハッカーの祭典)」のなかで、およそ1時間半で自動投票機のハッキングに成功した』ということを「CNET」が公表。シュールマン氏は、Wi-Fiシステムを通じてアドバンスド・ヴォーティング・ソリューション社の「2000 WinVote」マシンに侵入し、そこで2003年のWindows XPのエクスプロイト(ソフトウェアのバグを利用して侵入を可能にするプログラム)を利用し、このマシンへのリモートアクセスに成功した」 

そう、それはわずか1時間半でハッキングできてしまったのです。

ですが、この記事の続きを読めば、「シュールマン助教授が指あるいは手首を痛めていた、もしくは左手でゲーム『フォートナイト』をプレイしながら右手で自動投票機をハッキングしていたのかもしれない…」とも思うかもしれません。

さらにCBSは、次のように続けて述べています。

サンフランシスコのセキュリティプラットフォーム企業であるシナック社は、このコンベンションの数カ月前に「WinVote」マシンに深刻な欠陥を発見していました。シナックのチームは、マウスとキーボードを接続し、【Ctrl】キーと【Alt】キー、【Delete】キーを同時押しするだけでこの投票ソフトウェアを迂回したのです。

そしてシナックの共同創業者であるジェイ・カプラン氏は、「5秒ほどUSBドライブを差し込むだけで、その時点で投票マシンは完全に危機的状況に陥ります」とも言います。さらに、「これだけでリモートアクセスが可能になるのです。本当に単純です」と、カプラン氏はその危険性に警鐘を鳴らすのでした。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Voting Machine Hacking Village DEF CON 25
Voting Machine Hacking Village DEF CON 25 thumnail
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「Voting Machine Hacking Village DEF CON 25」の様子を動画でご覧ください。0:53あたりにシュールマン助教授が登場しています。

911の同時多発テロ以来、米政府は各種の法案を可決していた

投票機の「リモートアクセス」が、これまで懸念の対象になることはありませんでした(最近になって、電子投票機メーカーの職員が、一部の顧客向けに遠隔操作ソフトウェアを提供していたことを認めたのです)。とはいえ、幸いにも米国大統領はこの対策に取り組んでいます。

「NBC」は以下のように伝えています

元あるいは現職の政府職員によれば、トランプ大統領の就任から19カ月が経った今も「同政権には外国勢力による選挙への干渉に対抗するための一貫した戦略はない」と言い、この責任を負う人物や政府機関も存在しないとも述べています。
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これに対しホワイトハウスは、声明の中で反論しています。「トランプ氏の大統領就任以来、このための戦略が始動している」と主張したのです。とはいえ、このような戦略は公表されておらず、以前に言及されたことさえありませんでした。

「911」の同時多発テロ以来、米政府は各種の法案を可決し資金を投入し、このような攻撃が2度と起こることのないよう組織の改革を進めてきました。ですが、2016年の選挙にロシアが干渉した疑惑が浮上し、一部の議員から戦争行為と呼ばれるようなサイバー攻撃が取り沙汰されてから2年半が経ても、抜本的な改革は行われてこなかったのです。

この重大な過失の原因はさまざまです。

この原因のリストには、トランプ大統領の変わることのない「プーチン好き」や民主的な規範を歯牙にもかけない姿勢も含まれることでしょう。ですが、このリストの下の方にあるのは、「政治の主役たる市民としてのわれわれが、選挙に無関心である」というシンプルで明らかな事実です。

この証拠として多くの人々は投票に行かず、州務長官や地方選挙委員会の選挙に行く人に至ってはさらに少数です。結局のところ、われわれはブッシュ対ゴア事件(連邦最高裁が2000年12月12日に判決を下した訴訟事件。この判決により、2000年の米国大統領選はジョージ・W・ブッシュの勝利に終わった)をもたらした卑劣な行為を曖昧に済ませ、あの非常識な決定を不問にしてしまったのですから。

またわれわれは、米最高裁判所長官が長年敵対視していた投票権法の条項(投票における人種差別禁止を目的として1960年に制定された条項)に違憲判決を下したときにも黙って見ていました。

国中の人々が積極的に、選挙権を抑圧してきた州議会議員や知事たちに投票してきたのです。そしてわれわれは、もっとも基本的な民主主義活動を支える整合性(自動投票機のことです)を、国家安全保障上の深刻な問題と捉えることにも失敗してしまったのです。なにせ、わずか90分でハッキングされてしまうようなシロモノなのです。

今や米国という炭鉱は、その行く末に警鐘を鳴らす数千のカナリアたちの死の悲鳴に溢れているのでした。

Source / ESQUIRE US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。