五輪を目前に注目のスニーカー

フランスの首都パリでオリンピックが開催される今年(2024年7月26日~)。アディダスは今から52年前、1972年に開催されたミュンヘンオリンピックの記憶を振り返ります。その中でも、とりわけその歴史的なスポーツの瞬間を記念して発売されたスニーカー「アディダス SL 72」に焦点を当てています。

「『SL 72』は私たちが大会前に発売したオリンピックカタログに初めて掲載されたスニーカーで、ストリートランナーのためにつくられた1足です」

そう話すのは、私たち(Esquire英国版)がドイツのヘルツォーゲンアウラッハにあるアディダスのグローバル本社を訪問した際にお会いした、アディダスの歴史管理シニアマネジャーのサンドラ・トラップさんです。「SL 72」は昨年ひっそりと市場に再登場し、現在もランナー向けの靴として理想的なモデルに他なりません。

adidas sl 72 archive
Joseph Furness

その特徴は何と言っても、スニーカー自体の軽さにあります。

「SL」という略称は、「Super Light」の頭文字に由来します。発売当時、その軽さはまさに革命的でした。今でも、ライフスタイル市場のスニーカーの中では最も軽い部類に入ります。素材は主にナイロンとスエード、そしてレザーからなり、ローカットのモデルとなります。

2023年にかけてアディダスの「サンバ」が世界的に大流行しましたが、履き古した「サンバ」に替わる新たな1足としても理想的な選択肢となるでしょう。発売当初の1970年代には色はブルーのみの限定販売でしたが、現在日本でグリーン、オールモーストピンク、ナイトインディゴ、など、多くのカラーをラインナップしています。

adidas sl72 summer 2024
Adidas
Adidas SL 72 – 'Maroon / Almost Yellow / Preloved Brown'
Adidas SL 72 – 'Maroon / Almost Yellow / Preloved Brown'
¥13,919
End Clothing で見る
Credit: End
Adidas SL 72 – 'Night Indigo / Semi Green Spark / Royal Blue'
Adidas SL 72 – 'Night Indigo / Semi Green Spark / Royal Blue'
¥11,135
Credit: End

レトロ顔ながら技術はモダン

そして今回、新たに「SL 72 RS」としてレトロモデルが登場。ちなみに「RS」は、“再形成された”という意味の「Re-Shaped」に由来しています。

現代のユーザーを念頭に置いて設計された RS は、優れた柔軟性とクッション性を提供する厚い EVA ミッドソールを採用し、柔軟性とクッション性が向上しています。その結果、オリジナルモデルよりもがっしりとした分厚さが際立つとともに、よりストレートで現代のアディダスオリジナルスのスニーカーに合わせたデザインになっています。

adidas sl72 summer 2024
Adidas
Adidas SL72 RS  Green
ADIDAS ORIGINALS Adidas SL72 RS Green
¥13,930
Credit: MR PORTER
Adidas SL72 RS  Yellow
ADIDAS ORIGINALS Adidas SL72 RS Yellow
¥13,930
Credit: MR PORTER

ボブ・マーリーと「SL 72」の関係

実はオリンピックが間近に迫っていることだけが、今回「SL 72 RS」が集中投下された理由ではありません。イギリスの俳優、キングスレー・ベン・アディールがレゲエ界の英雄ボブ・マーリーを演じた映画『ボブ・マーリー: ワン・ラブ』の影響もあります。

マーリーは70年代、ジャマイカのキングストンやロンドンの自宅近くで、このスニーカーを履いているところを頻繁に目撃されていました。アディダスはこの夏、ボブ・マーリーとのコラボモデル「ボブ・マーリー × アディダス SL 72」を発売することで、このレゲエの神様とこのスニーカーとの関係を正式に認めることになるでしょう。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

また、ウェールズ・ボナーと言えばスニーカーコミュニティではアディダス「サンバ」の人気を復活させた仕掛人の一人として有名です。イギリス人とジャマイカ人の血を引くこのファッションデザイナーは、イギリスとカリブ海の文化に絶え間なく敬意を表した作品を発表していて、この「SL 72」のファンであることも公言しています。

その理由の一つに、マーリーとアディダスのトレーナーの関係性があることは間違いないでしょう。2020年以降、彼女はアディダスとの継続的なコラボレーションの一環として「SL 72」をフィーチャーしています。

Adidas Originals x Wales Bonner SL 72 – 'Dark Brown & Collegiate Orange'
Adidas Originals x Wales Bonner SL 72 – 'Dark Brown & Collegiate Orange'
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¥14,640
Credit: End
Adidas Originals x Wales Bonner SL 72 – 'Team Green & Collegiate Gold'
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Credit: End

「デザイナーとのコラボレーションに臨むとき、私たちアディダス側としては、ある特定の時代を調査し、自然な流れの中でパートナーにスニーカーの情報を提供することが多いです。ですが、今回のコラボではボナーさんが最初に70年代に注目し、『SL 72』を選ぶことになりました」と、アディダスのフットウェアデザイナーは語りました。

この事実は、ボナーのフォロワーにとって大きな驚きではないでしょう。彼女はキャリアを通じて、ウィンドラッシュ・ジェネレーション(※編集注:イギリス連邦加盟国となった西インド諸島から最初の移民としてやってきた人々を指す)のフュージョン・ファッションにオマージュを捧げてきました。

その中には、ジャマイカ人である彼女の父親とその友人たちの20世紀風のファッションも含まれています。彼女はアディダスがデザインしたコレクションのインスピレーションを探しながら、時折彼らのワードローブを調べていたことを認めています。

adidas wales bonner sl72
Adidas

ボブ・マーリーとパリオリンピックの存在を前に、「SL 72」は大きな1年を迎える準備が整っています。手頃な価格で汎用性が高く、耐久性にも優れ、時代を超越したスニーカーです。それに街中で、1日に何足もの「サンバ」を見る毎日に飽き飽きしている事実も認めないわけにはいきません。

さらに白状すると、アディダスに眠るアーカイブの中から発見した、より大胆にひねりをきかせた兄弟作となる「SL 72 ミュール」の復活を切望しているからに他なりません。90年代のY2K(=2000年前後のテイストを取り入れたカジュアルなスタイル)のバイブスを感じさせるような、スニーカーとサンダルの間を行くようなフットウェアです。

これが復活するには、「SL 72 RS」の成功が大前提となるはずです。

adidas sl 72 archive
Adidas

※上の写真の下段右側が「SL 72」のミュールタイプ(皆さんも、きっと気に入るはず)。

Edit & Translation / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です

From: Esquire UK