テスラのCEOを務めるイーロン・マスク氏が、潜水艦や地下トンネルの掘削に夢中であるのはよく知られていることです。彼はロサンゼルスの地下に自動車専用道路をつくるという計画に、多くの時間と労力を注ぎ込んでいました。そして、洞窟の中に取り残されたタイのサッカーチームを巡る救出劇に関する大騒ぎもありました…。 

 あの信じられない話のことに思いを巡らすとき、皆さんは、どんなことを思い浮かべますか? 岩の上に並んで立つメンバーたちの写真、そして彼らを救出したダイバーたちの勇気とスキルのこと…を思い出すことでしょう。しかし実際には、皆さんが真っ先に想像するのはおそらく長靴を履いたマスク氏の姿ではないでしょうか⁉ 膝まで波に浸かりながら海中に立っている彼の姿と、その脇で無視されたロボット潜水艦が悲しげに音を立てながら、「なぜ自分が落胆を感じるようプログラムされたか」と自問自答しているところではないでしょうか。 
 
 このタイのサッカーチームの話に関して、もう忘れてしまっている方も多いかもしれません。が、マスク氏の潜水艦に関するファンタジーは、この救出の企てが一度頓挫したくらいで消えてなくなるほど浅いものでないことが、このたび明らかになりました。

 彼はカリフォルニア州マウンテンビューで行われたテスラの株主総会で、「同社が水中も航行できる自動車を設計したこと、この自動車は陸上だけでなく水上もしくは水中も進めること、そしてこれが『007 私を愛したスパイ』に登場する、水陸両用に改造されたロータス『エスプリ』に触発されてつくられたクルマであること」を明らかにしていました。

Elon Musk
Getty Images
常に新しいビジョンを考えているイーロン・マスク氏。

 

 オンラインメディア「electrek.co」の記事によると、マスク氏は水陸両用車の開発について尋ねられると、「私たちの手元には、実際に水中航行可能な自動車の設計(図)がある。これは映画『007 私を愛したスパイ』に出てくるボンドカー…そう、例の潜水艦に変身するロータスのようなものだ」と語っていたそうです。

 さらに、「あのロータスのボンドカーは、私にとっていちばんクールなものだった」とマスクは続けて語っています。そういえば彼は、2012年にあの映画の中で使われたロータス「エスプリ」を約90万ドルで手に入れ、現在も所有しています。 
 
 このテスラの水陸両用車の計画が、実際に日の目を見るかどうかはまだわかりません。しかしながらマスク氏は、空飛ぶ自動車の開発にも取り組んでいます。それでも彼は、水陸両用車は技術的には実現可能と考えているのです。

 「私の考えでは、水陸両用車の市場は小さい。ただし、とても熱狂的は市場ではあると思うね」と、マスク氏は語っています。 
 
 水陸両用車と空飛ぶ自動車は、どちらも魅力的なものです。よって、「ぜひ両方とも手がけてもらいたい」と多くの人が思っているに違いありません。そうして本格的に製造されることとなれば、テスラは本当の意味でクルマ業界を大きく変えたことになるでしょう(いまは「嘘の意味で…」と言っているわけではありません…)。 

 

 
 

From Esquire UK
Translation / Hayashi Sakawa 
※この翻訳は抄訳です。