2023年2月12日(日)の日本経済新聞が報じたところによると、 アメリカ・カリフォルニア州では2022年のBEV(バッテリーEV)販売台数が21年比で62%増の28万5199台に伸び、ハイブリッド車(HV、PHEV)の販売台数23万3496台を初めて上回りました。ハイブリッド車は2021年比で10%減…。これは半導体不足の影響があることも考慮に入れるべきですが、それでもBEVがハイブリッド車を上回ったのは初めてのこととなります。

さらにアメリカの州内全体の新車販売台数は166万7831台で、全体におけるBEVのシェアは17.1%。これは2021年から7.6ポイント上昇しています。テスラの主力BEV「モデルY」が初めて、カリフォルニア州内のベストセラーともなったこともつづられています。

確かにこれはあくまでも、「環境意識が高いとされるカリフォルニア州内の話」かもしれません。例えそうであったとしても、アメリカでBEVへのシフトチェンジに向けた足取りが確認できることは事実です。それゆえ、「BEVでロードトリップを楽しむには?」といった企画もカーメディアを賑わしています。

そこで今回は、アメリカのカーメディア「Road & Track」による企画「BEVでロードトリップへ出発する前に確認しておくべきこと」をお届けします。数年後には日本国内でもBEVの所有率が高まり、こういった企画が今以上に組まれるようになるのでしょうか?


EV化への不安を解消するために…

アメリカではすっかり身近になったBEVでのロードトリップ。BEVでの長旅がアメリカの日常風景となって、もう数年が経ったでしょうか。とは言え、オール電化の冒険に出るのですから、ガソリン車と同じように計画することはできません。予期されるいくつかのBEVならではの事態に、あらかじめ備えておく必要があるのです。

充電設備はどこに? 事前チェックを
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当然のことですが、これが最大のポイントです。

事前の充電計画が必要であることは、もはや誰もがよく知っていること。しかし、そこにはいくつか考慮しておかなければならない点があります。まずは充電ネットワークの確認から、旅支度を始めましょう。

テスラ車であれば、他メーカーの急速充電サービスにも接続可能かもしれません。しかしながら、それには専用の(CHAdeMOまたはCCSアダプターの)アダプターが必要になることを念頭に入れておきましょう(日本においても、全国に設置されている公共の充電設備を使ってどこでも充電が可能。さらに詳しくはこちら)。

それがアウディのBEV「e-tron」になると、テスラのスーパーチャージャーにはいまだ接続できないことは所有者であればよくご存知のことでしょう。テスラ社は2021年にノルウェーでスーパーチャージャーを他社EVに開放し、現在はEUの多数の国と英国で利用可能にしています。これら地域では充電コネクタが共通になっていますが、北米においてはいまテスラ車のコネクタは異なっています。

ですが、2023年2月15日(現地時間)にバイデン政権は、米テスラのEV向け高速充電器「スーパーチャージャー」のネットワークの一部をTesla以外のEVにも開放し、2024年末までに少なくとも7500器を利用可能にすると発表したところでもありますので、今後は期待できるでしょう。

また、道中をより快適にするために各メーカーはもちろん、充電ステーションの検索アプリなどのインストールおよび各種充電サービスのアカウント登録は済ませたほうがいいでしょう。そして、その旅の途中にある充電ステーションを事前にチェックし、料金に支払い方法と経路にそれぞれの充電スピードとコストについても前もって知っておくことも重要です。

さらに、不測の事態を想定しておくことも必要です。

BEVでロードトリップに出る場合、道中の充電器が必ず空いているとは限らず、情報どおりの出力で稼働中とも限りません。テスラの充電ネットワークを除くアメリカ国内における充電設備の場合には、ところによって性能や稼働状況が少なからず異なるというのが現状における一般認識となっています。高速で便利な充電設備が予定どおりに使用できない場合に備え、代替となる充電オプションを計画に加えておく必要があるでしょう。これは日本においても言えることです。

気候や標高差なども考慮して
 
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仮にEPA(アメリカ環境保護庁)が定めた燃費基準において、航続距離200マイル(約322キロ)のBEVに乗っているとしましょう。その場合、充電区間を195マイル(約314キロ)として計画するのはとても大きなギャンブルとなります。

車に重い荷物を載せていたり、標高差のあるルートの走行もしくは路面が凍結していたりする場合など、みるみるうちに充電が減っていくのを目にして驚くことになるでしょう。さらに氷点下の環境の中になると、航続距離は少なくとも20~30%は減るもの…と覚悟しておくのが賢明となります。

ミシガン大学で機械工学教授を務めるアナ・ステファノポウロウ(Anna Stefanopoulou)が2019年に発表した「極端な寒さが車とバッテリーに与える影響」の資料につづられた言葉を借りれば、「バッテリーは人間と似ています…低温環境では放電時に得られる電力が通常より少なくなります。さらに充電したいときの状況は、より一層悪くなるのです」ということ。よって冬、そして寒冷地でのEVの使用は、さらなる注意が必要ということです。

BEVに適した運転と冷暖房の設定に気を配りましょう

BEVで冷暖房を稼働させれば、それだけで航続距離に大きな影響が及ぶことは想像がつくはずです。できるだけ長い航続距離を求めるのであれば、寒冷地でのドライブでは車内の暖房をガンガンに効かせるのではなく、シートヒーターの暖気だけでなるべくやり過ごしたいところ。暑い日であればサンシェードを下ろし、太陽熱の侵入を極力減らして効果的にエアコンの恩恵を受けてください。

いずれの場合においても、大きな寒暖の差が生じる可能性のあるエリアを事前によく把握しておき、あらゆる場合の航続距離を考慮しておくことが肝心でしょう。BEVの多くが、家庭用充電器に接続中に車内の温度調整を行う(冷暖房の)機能を備えています。

極端な温度差の調整ではなく、あらかじめ一定の温度にしておくことがエネルギーの消費量を抑えることへとつながるでしょう。つまり、出発前に車内の温度を快適なレベルに整えておくことで、アドバンテージを確保できるというわけです。

バッテリーの事前準備もぬかりなく
 
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BEVの中には、充電停止に近づくと充電時間を短縮するためにバッテリーを事前調整するものもあります。そのとき、瞬間的なエネルギー消費量は増えてしまいます。ですが、バッテリーの充電速度を引き上げるための措置なので十分な価値があると言えます。前述のようにバッテリーにとって理想的な環境ではない寒冷地では、その効果は十二分な価値を感じさせてくれるはずです。

充電時間の活用法

充電時間の長い車種や、また超急速充電非対応の車種での旅ということであれば、短くない充電時間を賢く使うべきでしょう。長距離のロードトリップは疲れるものですし、さまざまな不便がつきもの。車を充電しながら、自らも回復に努める貴重なタイミングとも言えます。

その時間の「無駄」と考えないように…。充電中はどうせ車を動かすことができないのですから、「その間は何をしていてもよい」と頭を切り替えてしまえばいいのです。充電設備のために少しばかりの遠回りを強いられたとしても、そこで質の高い食事ができたり、気分転換できる娯楽施設や買い物などの用事を済ますことができたりするスポットがあるのなら、遠回りするだけの価値があるというものです。充電に1時間を要するのであれば、ついつい先送りにしてしまっていた郵便物の処理や契約更新の事務手続きなどを進めてしまう絶好の機会かもしれません。自宅でなくてもできる作業は、いくらでもあるでしょう。

高速で飛ばしながら片手でビーフジャーキー(日本であれば、コンビニのおにぎりなど)をほおばるのではなく、ゆっくり落ち着いて腹ごしらえをできるのはありがたいことではないでしょうか。駐車した場所の近くで美味しいレストランを探したり、自宅から積んできた高級食材のランチバスケットを持って出かけたり…。そのためにも、スーパーで新鮮な食材を買いだめしておくことも大切となります。

それでも、充電中に多くの時間を無駄にしてしまうというのであれば、充電器を備えたホテルなどの宿泊施設を見つけ、その時間を睡眠時間に当てるといいでしょう。

Source / Road & Track
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です