アウディのハイパフォーマンス「RSモデル」の歩みを30枚の写真と共に振り返る【前編】
ポルシェのエンジンを搭載したワゴンからツインターボ仕様の超高速アウディまで。名車ぞろいのアウディスポーツ(Audi Sport)の歴史を紹介します。まずはその前編として、1994年から2012年のモデルまで15台を紹介します。
アウディスポーツ(Audi Sport)とは、BMWにとっての「M」、メルセデス・ベンツにとっての「AMG」同様に、アウディが展開するスポーツカーブランドです。
アウディスポーツの頂点と言えば、ミッドシップの「R8」ということで異論はないと思いますが、その歴史は「RS2アバント・クワトロ」、つまり、ポルシェとの共同開発で生まれたアウディ「80 B4」の派生モデル用に開発された5気筒エンジンで幕を開けました。
今回は過去から現在に至るまで、アウディ「RS」の全モデルを振り返っていきます。
Audi RS2 Avant (1994年)
史上初となる「RS」モデル(編集注:名前はRacing Sportに由来)を開発したのは、アウディの子会社に当たるクワトロ社(Quattro GmbH)ではありません。バイエルン州インゴルシュタットに拠点を置くアウディが自ら、やや意外とも思えるパートナー企業の協力を得て完成させたものでした。そう、あのポルシェとの共同開発です。このパートナーシップによって生み出されたのが、「RS2 アバント」でした。
スポーティなドアミラー、アルミホイール、ブレーキ、バンパーマウントの照明ユニットは、いずれもポルシェによるものです。リア部分の水平反射板もポルシェを想起させるデザインです。
そして何より、このワゴンについて忘れてはならないのは、あの「クワトロ」や「スポーツ・クワトロ」にも搭載されていた電鉄的な2.2リッター直列5気筒ターボエンジンから生み出される311馬力という驚異的なパワーです。
1990年代半ばの「RS2アバント」のパフォーマンスはまさに畏敬の念を抱くに値するものでした。アウディの資料によれば0-100キロ加速を5.3秒、最高時速262キロまで淀みなく加速し続ける見事なエンジン性能を誇りました。
Audi RS4 Avant(2000年)
「RS2」の成功に自信を深めたアウディは、その後継車となるべく「RS4アバント」を開発しました。
それはB5世代のアウディ「A4ワゴン」に、コスワース・テクノロジー社の375馬力の2.7リッターV型6気筒ツインターボを搭載するという壮大な計画です。6速マニュアルトランスミッションが駆動系を操り、そのパワーを4つのタイヤへと送り込みます。
Audi RS6 Sedan(2002年)
2002年に発売された「RS6」は、コスワース製の4.2リッターV型8気筒ツインターボエンジン(450馬力)を搭載し、まるで大地を切り裂くかのような走りを実現しました。
C5世代の「A6」をベースにつくられた「RS」モデルですが、その後の「TT」シリーズを思わせるスポーティなデザインで、「RS」のフェンダーフレアや大型タイヤがよく似合います。2003年の『Car and Driver』誌の比較テストでは、堂々の第1位を獲得しています。
Audi RS6 Avant(2002年)
C5世代の「RS6アバント」は、セダンよりも保守的な外観となりましたが、そのカルト的人気は瞬く間に高まりを見せます。「RS6セダン」と共通のV型8気筒エンジンを搭載した、当時としては最も挑戦的なステーションワゴンと言えるでしょう。
印象的な唸り声を上げるエンジンは、テールを引っ張りながら力強く走るような局面でさらにその音の心地良さを増し、その真骨頂ぶりを発揮します。
「RS6アバント・プラス・スポーツ」では、出力は473馬力まで高まります。1990年頃、非公式に少量生産されたアウディ「V8アバント」の系譜を継いでいるのが、この「RS6アバント」でした。
Audi RS4 Sedan(2005年)
B7世代の「RS4」により、アウディスポーツの歴史に高速回転自然吸気エンジンの新時代が書き加えられました。著名なエンジニアにしてポルシェの取締役も務めたヴォルフガング・ハッツ氏が開発した4.2リッターV型8気筒エンジンは、フルパワーにおける鮮烈なサウンドを世界に誇りました。
420馬力で6速マニュアルトランスミッションを介し、そのパワーの全てを余すことなく動力へと変えていきます。また、ワイドボディにリアスポイラーを装備したデザインは風景によく馴染み、格調高い風情を醸し出していました。
Audi RS4 Avant (2005年)
このB7世代の「RS4アバント」にも、当然のことながらアバントの伝統が継承されています。セダンやコンバーチブル同様に、自然吸気エンジンとマニュアルトランスミッションを搭載していますが、先代の「RS4」と同じく欧州限定モデルとなりました。
Audi RS4 Cabriolet (2006年)
アウディは2006年、プレミアム・コンバーチブルにも「RS」を投下しました。セダンやアバントとはデザインの異なるダッシュボードを持つ「RS4カブリオレ」は、ディテールにこだわる目の肥えたファンにとって注目の的となりました。
ちなみにこのカブリオレのAピラーに用いられているトリムのブラッシュメタルは、初代アウディ「80カブリオレ」以来の同社のトレードマーク的デザインに由来しています。これは決して、「RS」専用というわけではありませんでした。
Audi RS6 Avant (2008年)
セダンの発売より若干先に投下された「アバント」は、C6世代の「RS6」として、特にヨーロッパ市場において大きな成功を収めることとなりました。
テールパイプから華麗なサウンドを奏でるV型10気筒エンジンは、セダンのものと同じです。が、ワゴンスタイルの「アバント」にとって切っても切れない特別な関係にあることを、誰もが認めるところとなりました。
Audi RS6 Sedan (2008年)
2008年のモデルチェンジにより、「RS6」はV型8気筒ツインターボエンジンを80馬力の5.0リッターV型10気筒ツインターボに積み替えることになりました。
F1にインスパイアされたこのエンジンの設計は、あのウォルフガング・ハッツ氏の手によるものです。その構造はランボルギーニ「ガヤルド」の10気筒エンジンにもよく似ています。
Audi TT RS (2009年)
第1世代の「TT」には、「RS」のバリエーションは存在していませんでした。第2世代となる「TT」で、遂に「RS」仕様の1台が誕生しました
340馬力のターボチャージャー付き5気筒エンジンと6速マニュアルトランスミッションが、「TT RS」のずんぐりとしたボンネットの内部に搭載されています。
ちなみに、アメリカ用として送り込まれた360馬力にアップグレードした「TT RS」は、バージニア・インターナショナル・レースウェイのコースで行われたフリー走行では、なんと3分04.8秒という驚異のラップタイムを叩き出しています。
Audi TT RS Roadster(2009年)
「TT RS」のドロップトップ・バージョン(オープンカー)は、クーペに負けず劣らずの強い意気込みを感じる1台。ヨーロッパでのみ提供されたアウディは、このロードスターでした。
トランスミッションにはマニュアル、もしくはデュアルクラッチオートマチックのいずれかが装備されています。
Audi RS5 Coupe(2010年)
5年間という異例のロングセラーとなった「RS5クーペ」ですが、第1世代A5のラインナップの頂点に君臨する1台と呼べるでしょう。450馬力の自然吸気4.2リッターV型8気筒エンジンを搭載し、実力はその見た目を遥かに超えています。
Audi RS3 Sportback(2011年)
初代アウディ「RS3」は、「TT RS」の340馬力の2.5リッター5気筒ターボを搭載した5ドア・スポーツバックのみという設定でした。特徴として「RS3」のフロントタイヤには、リアタイヤよりも幅が広いものが使われているという点が挙げられます。
Audi RS5 Cabriolet(2012年)
「RS5クーペ」の発売から2年が経ち、「RS5カブリオレ」が新たなラインナップとして加わりました。クーペと同じ自然吸気450馬力のV8エンジンを搭載しています。クーペのスピードと、ルーフのない「A5カブリオレ」の融合とでも言えるでしょうか。
Audi RS4 Avant(2012年)
先行モデルより大型化したB8世代のアウディ「A4」ですが、「RS4」バージョンではさらにワイドな仕上がりとなりました。カール・ヴィトコフスキ氏をデザイナーに迎え、スポーツワゴンの大型フェンダーフレアと三角形のアウトボードインテークを備えた興味深いフロントエンドが生み出されることになりました。
ボンネットを開けば、「RS5」と同じく450馬力の自然吸気4.2リッターV8エンジンが鎮座しています。7速デュアルクラッチオートマチックトランスミッションについても同様です。
その後、ラインナップからセダンが外され、「RS5カブリオレ」が「RS4カブリオレ」に取って代わったことで「RS4」は結局、アバントワゴンを残すのみとなりました。
アウディのハイパフォーマンス「RSモデル」の歩みを30枚の写真と共に振り返る【後編】
Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。