アウディのハイパフォーマンス「RSモデル」の歩みを30枚の写真と共に振り返る【後編】
ポルシェのエンジンを搭載したワゴンからツインターボ仕様の超高速アウディまで。名車ぞろいのアウディスポーツ(Audi Sport)の歴史を紹介。今回はその後編。2013年から2021年の最新モデルまで15台を紹介します。
アウディスポーツ(Audi Sport)とは、アウディが展開するスポーツカーブランド。その歴史は、1994年にデビューした「RS2アバント・クワトロ」によって幕が開けられました。以来、数多くの名モデルが誕生している中、その全モデル30台を一挙紹介するこの企画。初代モデルから2012年モデルの「RS4アバント」までを紹介した前編に続き、後編の今回は最新モデルまでの15台のアウディ「RS」を振り返ります。
Audi RS6 Avant(2013年)
C7型「RS6」はこれまで続いたエキゾチックなV10エンジンを4.0リッターV8ツインターボエンジンに積み替え、8速オートマチックと組み合わせた、やや控え目ともいえるアプローチになりました。
車重の軽量化には成功しましたが、その影響で出力は20馬力減の560馬力となりました。アウディはその後、605馬力のパフォーマンスモデルをラインナップに加えています。同時期の「RS4」と同様、この「RS6」からもセダンがなくなりました。
Audi RS7(2013年)
アウディは2013年、驚くほどに美しい「RS7」を生み出しました。C7型「RS6」のメカニズムと「A7」の低床ハッチバックを掛け合わせた「RS7」は、「RS6アバント」のことなど完全に忘れさせてくれるほどの印象的な1台でした。
インテリアには若干の変更が加えられたものの、ほぼ「RS6」をそのまま踏襲しています。アウディは後年、パフォーマンスモデルを追加し、出力を560馬力から605馬力へと引き上げ、「RS7」の0-100キロ加速は3.4秒から3.2秒に短縮されました。
Audi RS Q3(2013年)
アウディスポーツ初となるRSのバッヂを付けたクロスオーバーとなった「RS Q3」に搭載されたのは、「RS3」や「TT RS」用に開発された2.5リッター5気筒ターボエンジン(306馬力)でした。「RS」の系譜の中では、意外なほど控え目な仕様と言えるかもしれません。
コンパクトかつ高性能を誇るこのSUVは、その後335馬力にアップグレードされ、さらに362馬力のモデルも追加されています。
解(げ)せないのは、標準モデルの「Q3クロスオーバー」とその上位の「RS Q3」との中間に位置づけられる、「SQ3」のパフォーマンスモデルが存在しなかったことです。
Audi RS3 Sportback(2015年)
アウディもヨーロッパ市場に向けては、スポーツバック(ハッチバック)モデルの「RS3」をつくり続けています。
この新型「RS3」は367馬力の2.5リッター5気筒ターボエンジンを搭載し、後にエクステリア部分のマイナーチェンジが施された際、出力も400馬力へとアップグレードされました。このスポーツバックのトランスミッションは、7速デュアルクラッチオートマチックの一択です。
Audi TT RS Coupe(2016年)
3代目となる「TT」ですが、初代「TT」のあの緊張感のある外観を取り戻しています。フォルクスワーゲン・グループの会長フェルディナント・ピエヒ氏自らが、初代「TT」のテールデザイン復活を命じたという話です。
マニュアルトランスミッションはなくなりましたが、ラインナップには「RS」モデルが復帰。400馬力となった新型エンジンは、われわれの行ったテストで自足0-100キロ加速わずか3.4秒を誇りました。
Audi RS3 Sedan(2016年)
この「RS3セダン」は主に、アメリカ市場を念頭に置いて設計されたものでした。400馬力の新型2.5リッター直列5気筒エンジン、7速デュアルクラッチオートマチック、全輪駆動に加えてローンチコントロール(※編集注:停止状態のクルマを素早く発進させる自動制御技術】を搭載した性能は、まさに圧巻の一言。
ちなみに外見は、通常の「A3」や「S3セダン」と見分けるのが困難なほど似通っています。
Audi TT RS Roadster(2016年)
先代の「TT RS」と同様に、この新型「TT RS」にもまたオープンカーのデザインが採用されています。
Audi RS5 Coupe(2017年)
小型化の時代を迎え、新型「RS5クーペ」もまたB5型「RS4」に搭載されていたV6ツインターボエンジンへと回帰しています。
2.9リッターV6エンジンは、先代「RS5」の自然吸気V8エンジンよりわずかに低い444馬力となり、トランスミッションもまた先代の7速デュアルクラッチオートマチックから8速トルクコンバーターオートマチックへ変更されました。
そのためか極めて高性能の「RS5」ですが、やや熱量の低い、冷淡な印象となったことは否めません。
Audi RS4 Avant (2017)
この「RS4アバント」も「RS5」同様に、V8から444馬力のツインターボV6へとエンジンを乗せ換えています。「RS4」についてはこれまでアメリカ市場を回避したアウディでしたが、この5ドア「RS4アバント」で、アメリカでの販売に乗り出すことになりました。
Audi RS5 Sportback (2018)
「A5スポーツバック」をベースにしたアウディ「RS5スポーツバック」は、444馬力のツインターボV6に「RS」シャシーが基本となった1台でした。「RS4アバント」および「RS5クーペ」から外観が一新され、その大型ハッチの内部に大きく便利な荷台を隠しています。「A7」と同様、4ドアクーペのルーフラインを効果的に活かしたデザインは、まさに素晴らしいの一言でした。
Audi RS7 Sportback(2019年)
このA7型のファストバックのボディこそ、アグレッシブな「RS」モデルに適したものだと言えるでしょう。新型「RS」投下のタイミングとしては、これまでにない素早さです。
「RS7」に搭載された4.0リッターV8エンジンは、先代のパフォーマンスモデルより14馬力低い591馬力となりました。2代目となるこの「RS7」にも、パフォーマンスモデルが用意されることになりそうです。
アダプティブ・エアサスペンションに加え、ヨーロッパでは超高剛性のスチール製サスペンションのオプションも用意されており、曲がりくねった道ではまさに夢のような乗り心地を楽しめます。
Audi RS6 Avant(2019年)
自立心の高い人々にとっての究極の自動車と言えば、高性能なステーションワゴンもその一つとなるでしょう。メルセデス・ベンツはそれを熟知したメーカーですが、アウディもまた愛好家たちの声に耳を傾け、この「RS6アバント」をアメリカ市場で復活させています。
性能的には「RS7」とほぼ同等です。「A6」と「A7」が独自のフロントエンドパネルを採用しているのに対し、この体格の良い「RS6アバント」には「RS7」のフロントエンドパネルが用いられています。「RS7」の魅力を引き立てるノーズのシンプルなラインは、「RS6アバント」のデザインにも見事にマッチしています。
Audi RS Q3(2020年)
コンパクトで扱いやすいクロスオーバーモデルのアウディ「RS Q3」と「RS Q3スポーツバック」が登場しました。
バイアスタイヤを後輪に履いた全輪駆動システムの、直列5気筒ターボエンジンを搭載した400馬力のモデルです。時速0-100キロ加速は4秒強、最高速度は時速280キロという高性能を誇ります。
この「RS Q3」の持つ絶妙なバランス感覚は、もはやスポーツカーの領域と言えるかもしれません。唯一のライバルとなるのは、同じく高性能のメルセデスAMG「GLA45」となるでしょうか。
Audi RS Q8(2020年)
スポーティでアグレッシブなSUVこそが、「RS」シリーズに最もふさわしいモデルと言えるでしょう。この「RS Q8」には、ごく一般的な4.0リッターV8ツインターボエンジンが採用されていますが、出力は591馬力、トルクは590lb-ftと高性能です。セラミックブレーキを装備すれば、時速306キロまで最高速度を引き上げることが可能です。
ベントレー「ベンテイガ」、ポルシェ「カイエン・ターボ」、ランボルギーニ「ウルス」は、プラットフォームとパワートレインを共有する「RS Q8」の姉妹車です。
その中でも、このアウディが最も未来的なコックピットを備えており、スマートな仕上がりとなっています。
Audi RS e-tron GT(2021年)
2種類ある「e-tron GT」のうち、「RS」のバッチが付くのはアウディスポーツが総合的にプロジェクトを手掛けた一方のみです。
ポルシェ「タイカン」をベースに生み出された「RS e-tron GT」ですが、チューニングはそこまでアグレッシブではありません。しかしながら、(バッテリーがもちこたえる限り)あらゆる市販車に負けない走りが楽しめることは間違いないでしょう。
お蔵入りとなった「R8 e-tron」で培ったアウディスポーツの経験が、この「RS e-tron GT」の開発では見事に活かされています。
アウディのハイパフォーマンス「RSモデル」の歩みを30枚の写真と共に振り返る【前編】
Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。