2023年8月2日、トヨタは新型「ランドクルーザー250」ならびにヘビーデューティーモデルの「ランドクルーザー70」を発表しました。アメリカでも「ランドクルーザー250」が販売されることも発表され、「ランドクルーザー200」以来3年ぶりとなる新型「ランクル」の登場となります(編集注:アメリカでは「ランドクルーザー300」が未発売)。

新型「ランドクルーザー250」はこれまでの「200系」のモデルから、あらゆる意味で大きく生まれ変わっています。コンパクトな「ランドクルーザープラド」(編集注:アメリカでは「レクサスGX」という名で展開)をベースにしてはいるものの、「200系」の希望小売価格が8万7000ドル(約1260万円)であったのに対し、今回の新型「ランドクルーザー250」は5万ドル台半ば(800万円前後)になるという話です。まさに、トヨタの熱狂的支持者が求める車となることは確実でしょう。そして今のトヨタが、その期待を裏切るはずなどないでしょう。

現在は会長の座に就く豊田章男CEO(当時)が、「退屈な車はもう終わりだ」と宣言したのは2017年のことでした。それから今日に至るまで、トヨタは何台もの熱狂的支持者が愛してやまない車を世に送り出し、さらに彼らの声に耳を傾けては素晴らしい仕事をしてきました。

2017年以降に、アメリカ市場に登場したトヨタ車をざっと見てみましょう。「GR86」はあらゆる面で先代モデルを上回る完成度ですし、「GRカローラ」の投入は「GRヤリス」「GRヤリス」への喝采に応えたものです。「GRスープラ」には、トヨタマニアの期待どおりにマニュアルトランスミッションを搭載。そして今回の新型「ランドクルーザー250」とプラットホームを共有する「レクサスGX550」のニューモデルも、忘れるわけにはいきません。

「レクサスGX550」デビューのニュースが報じられると、すぐに人々の注目を集めました。流行の箱型スタイル、優れたオフロード性能、壊れないことで有名なトヨタの車など、あらゆる意味で完璧な調和を奏でる1台です。決して偶然の産物などではありません。

見事な調和という面では、今回の新型「ランドクルーザー」についても同様ですが、こちらはさらにベース価格が低く設定されています。需要への対応に追われ、トヨタが大騒ぎになるのは間違いないでしょう。また、ディーラー側も1台でも多く仕入れるために大変な苦労を強いられることは確実でしょう。

確実かつ安全な投資という一面

トヨタ「grスープラ」
DW Burnett

トヨタにはかつて、非難を浴び続けていた時期があります。ときには興味深い車も生み出しましたが、どちらかというと家電メーカーにも似た雰囲気で、特にアメリカでは、熱狂的な車好きたちからは冷ややかな目で見られることもありました。

それが今日では興味をかき立ててやまない、車マニアが絶賛するブランドに変身を遂げ、あらゆるタイプのカーマニアに向けた、驚くほど幅広いラインナップを提供するまでになりました。大衆車もぬかりなく展開しながら、これほど魅力的な車づくりをしている自動車メーカーなど、ほぼないのではないでしょうか。

「GR86」「GRスープラ」「GRカローラ」といったモデルが、トヨタの売り上げの中核をなす存在ではないというのはお察しのとおりです。しかしこの新型「ランドクルーザー250」では、話が少し違ってきます。

プラットホームには「GX550」や「ハイラックス」を原型に持つ北米仕様車のピックアップトラック「タコマ」、北米トヨタが製造するフルサイズSUVの新型「セコイア」、そしてすでに投入されているフルサイズの「ランドクルーザー」と同じく、GA-Fプラットホームが採用されています。

高い収益性を誇る人気モデルに共有されているGA-Fプラットホームだけに、開発コストはすでに償却されているはず。豊田章男会長が自ら率いるTOYOTA Gazoo Racing(トヨタ・ガズー・レーシング)で展開する「GR86」や「GRスープラ」、「GRカローラ」は多少のリスクを背負った小規模展開かもしれませんが、この新型「ランドクルーザー」は確実かつ安全な投資と見て間違いないでしょう。

「ランクル」もまたレガシーを引き継ぐ

トヨタ「ランドクルーザー250」
Toyota

昨今のカーカルチャーを象徴するノスタルジックな流れには、トヨタもしっかり乗っています。レクサスのラインナップはさておき、GRは全モデルが過去の名車の遺伝子を何らかの形で引き継いでおり、新型「ランドクルーザー250」もその例に漏れず、過去のモデルに対する敬意を示すものです。

今回北米に投入されたグレード「ランドクルーザー・ファーストエディション」と「ランドクルーザー1958」の各モデルに採用された丸型LEDヘッドライトは、「ランドクルーザー40系・FJ40」の正統なる後継車の証し。標準グレードには名車と謳(うた)われたあの「ランドクルーザー60系・FJ62」をほうふつとさせる、角型ヘッドライトが採用されています。

さらにツートンカラーの「1958」グレードには、「FJ40」を思い起こさせる「TOYOTA」の文字が記されたヘリテージグリルが搭載されています。「ランドクルーザー」の旧車の人気がこれまでになく高まっている今日では、それも当然の選択と言えるかもしれません。

もちろん、熱狂的な自動車ファン・トヨタファンの希望ばかりに耳を傾けていれば、ときには落とし穴が待ち受けているのも事実。あの「GRスープラ」のルーツが、BMW「Z4」であることは明らかです(編集注:トヨタとBMWが2011年に技術提携を締結し、その第1弾モデルとして誕生)。しかし、そのことで引き起こされた批判は、トヨタもよく承知しています。

ですが、新型「ランドクルーザー」に文句を言う人が現れることはないでしょう。このマーケットを誰よりも熟知しているのがトヨタなのです。米国仕様の「ランドクルーザー」の登場まで、いよいよもう秒読みです。

Source / Road & Track
Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です