レーシングカー専門のショップを運営するイギリスのTour de Force(TDF=トゥール・デ・フォース)社が、「トラックデイ(Track Day)と呼ばれる走行会用に手直しを加えたF1(フォーミュラーワン)用のレーシングカー5台の販売を計画している」というニュースに、世界中が騒然となっています。

 そうです、車種によっては最高速度時速350km/h以上で走る、あのフォーミュラワンのクルマです。

 今回販売対象となるのは、F1チームの「マルシャ」で使われた3台と「ザウバー・モータースポーツ」の2台。2011年から2012年のシーズンを戦った計5台ですが、販売用には公道での走行に対応させるための改造が加えられています。勇気(もちろん、それ相応のお金も必要ですが…)があれば、誰でもステアリングを握り走らせることが、“理論上では”可能な仕上がりとなります。

F1モナコグランプリを走るF1カー
Paul Gilham//Getty Images

 そこで気になるのが、「公道走行に向けて、どのような手直しが施されるのか?」ということではないでしょうか。TDF社によりますと、もともとサーキットを高速で走っていたクルマに備わっていたエンジン性能の90%程度は維持されるとのこと。

 具体的には、本来2.4リットル自然吸気V8エンジンが鎮座していた場所に納まるのは、1.7リットルの直列4気筒ターボチャージャーエンジンとなります。そのエンジンは、9000rpm(rpm=1分間あたりの回転数)で600馬力を生み出します。6速シーケンシャルギアボックスへと動力を送るエンジンは、シャシー構造に組み込まれた設計となります。また、1860マイル(約3000km)の走行ごとに、オイル交換などのメンテナンスを受けることが望ましいとのことです。

 また、ステアリング周りのコントロール機能も簡素化されています。ドラッグリダクションシステム(DRS=電子制御によってウイングなどの可動型エアロパーツの働きを弱め、車体が受ける空気抵抗を低減させるシステムのこと)も、ステアリングやブレーキからの信号を受けて、自動的に稼働するように変更されています。

 TDF社によると、スターターやラジエーターファンのオプション装備によって、アシスタントの補助を受けることなく、ドライバーが運転できる仕様になっているとのことです。サーキットで目にするF1チームのピットクルーの数の多さを思えば、なかなか画期的な仕様と言えるのではないでしょうか。

マルシャのF1カー
RICK NOEL / TDF

 各車両とも、燃料やオイルなどの重さを除いた重さは1322ポンド(約600kg)。最大4.5gsでコーナリングが可能です。コース上における総合的なパフォーマンスは、新車性能の約95パーセントに達するとTDF社は見込んでいます。

 あなたがマクラーレンやフェラーリなどで活躍したあのフェルナンド・アロンソ氏でもない限り、これはかなり驚異的な数字と言えるでしょう。

 一般のクルマからすると、あまりにも規格外な性能のため購入者には特別なトレーニングプログラムが用意されます。Wシリーズ(女性ドライバーに限定したフォーミュラーカーによるレース)で活躍するジェシカ・ホーキンス氏をはじめとするテストドライバーによる個別指導や、F1基準のドライビングシミュレーターを用いたトレーニングなど、豊富な受講内容となっています。

 では気になるお値段ですが…。

 販売価格は税別で150万ポンド(日本円で約2億1300万円)を予定しているとのこと。まさに、目玉が飛び出るような値段のオモチャということになるかもしれません。しかしながら、実物のF1カーに私たち一般人にも操縦可能な改造の手が加えられた逸品なのですから、理不尽な金額とは言えないのではないでしょうか。

これはpollの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

Source / Road and Track
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。