「Louis Vuitton and Nike "Air Force 1" by Virgil Abloh(ルイ・ヴィトンとナイキ『エア フォース 1』 by ヴァージル・アブロー)」展が、ニューヨークのブルックリンで開催されている。
これはルイ・ヴィトン2022年春夏メンズ・コレクションのために、メンズ アーティスティック・ディレクターであった故ヴァージル・アブローがナイキとのコラボレーションによってデザインしたビスポークの「エアフォース 1」。全47モデルが公開されている。
グリーンポイントの倉庫を会場として、会場前に設置されたルイ・ヴィトンのロゴ付きキャップをかぶったブレイクダンサーが逆立ちしている巨大なオブジェが、ヒップホップ文化に対するオマージュを感じさせる。
会場内は架空の都市の設計図を上空から見たところをイメージしたもので、来場者は鏡張りの天井に映し出された巨大なロゴの上を歩きまわる。
2018年から2021年までルイ・ヴィトンのメンズ アーティスティック・ディレクターを務めたヴァージルは、「ハイ & ロー」の意味を問い続け、ヒップホップが築いてきたストリートファッションとメゾンのハイファッション、そのふたつの領域の境界線をなくしたと言える。
47モデルのスニーカーは機能的なコードに、ルイ・ヴィトンのシグネチャーを融合させたスタイルとなっている。スニーカーはあたかも壁の上や横を重力なくして歩いているような躍動感あるスタイルで展示されており、またホログラフィのイメージをモニターで流していて、360度の動きでスニーカーを眺めることができる。
さらにインタラクティブなホログラフィ展示では、モニターの前で手を動かすことによってスニーカーを回転させたり、構造をバラバラにしたり、またひとつに合体させることもできるという没入体験ができる。
アイテムはすべて、ヴェネツィアのフィエッソ・ダルティコにあるメゾンのシューズアトリエで製作されていて、メゾンが誇る最高品質の素材を使用し、巨大なモニターでは職人がスニーカーを作っていく卓越した職人技を目にすることもできる。
会場を見下ろすように作られたツリーハウスは、ヴァージルの少年時代の心を表現しているかのようだ。
内部には、ヴァージルのオフィスだったパリのポンヌフ通りに面するルイ・ヴィトンのスタジオとアトリエの空間が細部まで再現されていて、彼の創造を支えたサヴォアフェール(匠の技)を体感できる。
この展覧会を見てあらためて感じるのが、ヴァージル・アブローのファッション界における巨大な足跡だ。
ヴァージルが黒人として初めて最高峰のメゾン、ルイ・ヴィトンのメンズ アーティスティック・ディレクターに指名されたときは、まさに時代を塗りかえたほどのインパクトだった。ことにアメリカでは黒人ミュージシャンやアーティストたちの歓喜ぶりがすごかった。それほどの革命だったのだ。
ヴァージルが持つ、ヒップホップやストリートカルチャーに対する愛着。それがメゾンのラグジュリアスな品質と職人のスキルによって、ビスポークのスニーカーとして昇華している。グラフィティが施されたダミエパターンのスニーカーや、ロゴをちりばめたブラックのスエードスニーカーなどに目を奪われる。
ヴァージルがわずか10年の間に、ファッション界に与えた影響の大きさに感銘を受けるし、その死を心から悼む。
同展は2022年5月20日から31日まで、グリーンポイント・ターミナル倉庫で開催。また期間中、ニューヨーク市内各地でガラスボックスが設置され、本展のテーマに沿って地球儀の形をしたスカルプチャ―が展示される。これはグランドセントラルターミナル、サウスストリートシーポート、コロンバスサークルなどで体験することができる。
このうち9モデルが2022年6月よりルイ・ヴィトンの公式サイトを通じて発売される予定だ。一般販売向けに厳選された9モデルはミッドトップ(税抜38万7000円)とロートップ(税抜31万円)で、ナイキサイズの3.5から18(日本サイズの22.5cm ~36cm)までのサイズで展開される。
ルイ・ヴィトンのモノグラム・モチーフをあしらったクラシカルなオールホワイトバージョンや、同一デザインをブラックのスエードで表現したスタイルも含まれる。メタリックゴールドカラーのスニーカーは、ヴァージル・アブローのルイ・ヴィトンのデビュー・コレクションへのオマージュ。
ツートーンカラーバージョンは、ルイ・ヴィトンにおけるヴァージル・アブローのキー・モチーフとなっているレインボー・モチーフを彷彿させるデザインとなっており、さらにアーティスト グスト・レオンによる「Louis Vuitton」のグラフィティ・モチーフがあしらわれた「ダミエ」エディションも含まれる。
◇詳細
Louis Vuitton and Nike "Air Force 1" by Virgil Abloh
住所:73 West St, Brooklyn, NY 11222
Greenpoint Terminal Warehouse
期間:2022年5月20日〜5月31日
Ellie Kurobe-Rozie
東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業後、ライターとして活動開始。『Hot-Dog-Express』で「アッシー」などの流行語ブームをつくり、講談社X文庫では青山えりか名義でジュニア小説を30冊上梓。94年にNYへ移住、日本の女性誌やサイトでNY情報を発信し続ける。著書に『生にゅー! 生で伝えるニューヨーク通信』など。