[目次]

▽ブラッドリー:モデルから俳優へ…多才な活躍

▽真逆の方向に進んだブラッドリー、それは成功

▽ブラッドリー(肉体整備士)ハミルトン、30歳

▽興味は女の子、セックスが僕の人生の全て

▽今ではこの決断を「素晴らしいもの」と確信

▽人生最後の日までこの生活が続くことを祈る

▽女性と親密になることが愛を感じる唯一の方法


ブラッドリー:モデルから
俳優へ…多才な活躍の始まり

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幼い頃から俳優を目指していたブラッドリー・ハミルトンは、大学卒業後カナダ・オタワでモデル業界に入ります。この試みは大成功を収め、彼はかつて抱いていた俳優への想いが再熱。その後、パートタイムで演技も始め、すぐにタレント・エージェントと契約します。モデル活動では2017年にFaces Magazine Awardsで最優秀男性モデル賞を受賞し、雑誌のモデルを務めながらコマーシャルにも起用されるなか、さまざまな映画やテレビにも出演するように。まさに、順風漫歩に日々をおくっているように思えます。

ですが、いきなり彼はメインストリームで活躍する俳優としての本業を捨て、大金を稼ぐため自力でポルノ興行主になりました。そしてそんな彼は今、「この上なく幸せだ」と話します。

真逆の方向に進んだ
ブラッドリー
それは成功の始まり…

アメリカでは、アダルト産業のポルノ俳優が別の業界に進出しようとするとき、メインストリームのエンターテインメント業界にチャレンジすることはよくあることです。ですが、ブラッドリー・ハミルトンの場合はその真逆の軌道をたどりました。

2022年彼は、俳優として大きく芽生えようとしていたキャリアを思い切って捨て、ポルノ実業家としての生活に飛び込むことを選びました。彼はポルノを中心に扱う定額制プラットフォームの「OnlyFans(オンリーファンズ)」にアカウントを作成し、この仕事に専念するようになったのです。

この決断は見事に実を結びました。The Flesh Mechanic(訳すなら、「肉体整備士」あたりでしょうか)の名で活動するブラッドリー・ハミルトンは、女性が圧倒的優位となる「オンリーファンズ」というプラットフォームで、男女を問わず最も成功したポルノ俳優の一人となりました。主に女性からなるファンベースを持つ男性ポルノ俳優は珍しく、ハミルトンの支援者のうち「60%は女性」と推定されています。

なぜ「正統派」俳優のキャリアを捨ててまで、タブー視されがちなポルノ業界で芸能活動をするのでしょうか? そこでどのように、そしてなぜそのような行動に出たのかを理解するため、Esquire US版のシリーズ「The Secret Lives of Men」で彼にインタビューを行いました。


Bradley “The Flesh Mechanic” Hamilton, 30, Ottawa

ブラッドリー(肉体整備士)ハミルトン、
30歳、オタワ出身
bradley hamilton
Siren Obscura
ハミルトンはモデルとしてキャリアをスタートし、その後は俳優として、ネットフリックスの映画からクリスマス映画までさまざまな作品に出演していました。

僕は友だちにいつも笑われるんだ。「普通ポルノの世界へ行くのって、失敗した俳優が行くものだろ。なんでお前は俳優としてうまくいっていたのに、そっちの方向に行ったんだ?」て彼らは言うんだ。

だからって、子どもの頃から過度な性的欲求に悩んでいたわけでもないんだ…。初めてポルノを見たのだって、11歳のときだよ。友だちがテレビのポルノ閲覧用パスワードを知っていたんだ。そして彼がパスワードを入力して映像が映し出されたわけだけど、そのとき、ハーレーダビッドソンのバイクの上でセックスしている2人が映し出されたっけね。僕は昇天したよ。「この2人、なんてことしてるんだ」って感じで、全く信じられなかった。だからその後、それに執着することもなかったというわけさ。むしろ、不快な気分になった感じだね。そうして14歳の頃に、童貞を卒業したんだ。で、そのときの女の子とは3年間付き合ったよ。

私の興味は女の子たち
毎日セックスをし、
それが私の人生の全て

すると22歳になると、急成長して全てが変わったんだ。身長がぐんと伸び、身体も引き締まって、そのタイミングで歯の治療もした。すると、女性のほうから遊びに誘われるようになって、やがてくれジーになってしまった…。そう、女性と寝ることが趣味になったんだ。

酒もタバコも、ドラッグもパーティーも一切やらない。(もう違うけど…)僕の趣味は女性だったんだ、毎日セックスしていたよ。セックスが僕の人生の全てだったのさ。一日中、毎日、「次は誰にしよう?」って考えていたね。そのせいで、友人関係も悪くなったんだ。なぜって、僕がパーティーに行けば、そこらにいる女の子全員といちゃつくことを知っていたからさ。みんな僕を、パーティーに誘わなくなったよ。

僕自身早い段階から、「自分は依存症だな」って気づいていたよ。母はずっと断酒会に通っていたので、私は依存症の特徴や依存症がどのように人々の人生を台無しにするかもね…。母は私と弟を乗せた車で事故を起こしたのをきっかけに断酒を決心し、それ以来、一度もお酒を飲んでいなんだ。

だから自分は飲酒を避けていたんだけど、セックスに関して断つことができなかったんだ…。悪い影響があるともわかっていても、気がつくとセックスをしてしまっていたんんだ。例えば女の子のお兄さんが知り合いだったり、彼氏がいる女の子だとわかっていても、寝ていました。下の住人に聞こえてしまうとわかっていても、 Airbnbのホストと寝ちゃったこともあったね…「そこから生まれる潜在的な悲劇とも言えるドラマよりも、セックスで得る開放感のほうが価値がある」と思っていたんだ。

「1週間誰とも寝ていないときもあるのだから、まぁ、そこまで悪い人間ではないだろう」と自分を正当化してもいたね。でも、こんな考えに至った時点で、それはもっと深い問題があるという証拠にもなったんだ。

僕は大学に進学して、ビジネスマネジメントと アントレプレナーシップ(起業家精神)を学んだ…でも、1年後に退学することにしたんだ。型に嵌(は)められた教育だったので、起業家精神とは真逆だと。「大学で学ぶべきことはないな…」と思って、それで退学したんだ。

モデルの仕事を始めたのはその頃。2015年、友だちがモデル事務所に私の写真を送り、契約することになったんだ。その後、自分で俳優事務所にも応募し、そこでも契約を結ぶことになったよ。そして、いろんな種類の仕事を受け始めたね。Netflix映画やAmazon Primeのシリーズもの、クリスマス映画に子ども向けテレビ番組、CMなどなど…なんでもやったよ。

そうして2020年4月に、セフレの1人が「一緒に『オンリーファンズ』用に動画をつくってみない?」って言ってきたんだ。以前から、セックスしているところをよく撮影したしね。彼女は、「腰から下のみの撮影だから視聴者が顔を見ることもないし」って言ってきたし、「匿名なら大丈夫よ」って言ってくるから――これはいわゆる、性行為を撮影する際の代役を務める男性俳優優「stunt-cocking(スタント・コッキング)」って呼ばれているやつさ――僕は、「なんだっていいよ、まずはやってみよう」ということで始めたというわけ。そして、そこで完成したビデオは36分間もので、2000ドルも稼ぎ出したのさ。まさか…「それだけ稼ぐには、1カ月はかかるだろう」って思っていたしね。そんなわけで、その一夜にしてこの活動が僕らの生活そのものになったってわけさ。ちょうど新型コロナウイルス感染症が流行り始めた頃だったんで、家に転がってカメラの前でセックスすることなんて簡単なことだったよ。

それを3年間続けたわけさ。公に出ることもないまま、この業界について学べたのはよかったよ。すると、よく一緒にしていたパートナーの女の子が、他の「オンリーファンズ」で活躍しているポルノ俳優の僕をすすめてくれたりしてね。子ども向けのNetflix番組を撮影したと思ったら、どの翌日にはgang bang(ギャングバング=1人が中心となって複数の人々と連続的あるいは同時に行なう性行為)ジャンルのものを撮影したりしてね…。

ある日、オンリーファンズを一緒に撮影するパートナーに、「なんで、ありのままの自分をあまり出さないの?」って聞かれたので、「本業のエンタメ業界は、ポルノに対してあまり寛容じゃないんだよ」と伝えたんだ。 でも、「オンリーファンズ」のギャラがあまりにも良かったんで(スタント・コッキングで、年間20万ドル以上稼いでいた)、「もうやっちゃえ!」って、そのノリで自分のページをつくることを決めたんだ。

自分のページを持つことで、出演した作品へもっと視聴者を誘導したかったわけさ。それを始めたら、メインストリームの演技が単なる業務にした思えないようになったんだ。クリスマス映画やモチベーションが上がらないプロジェクトへ参加することにも、うんざりしてきて…。この心境の変化は、ほんの7カ月前の出来事になるけど、今思えば「素晴らしい決断だった」って思っているよ。

僕は「オンリーファンズ」のおかげで、自分の性生活をより健全に把握できるようになったんだ。ポルノ俳優としてキャリアを築き上げることは、自分の性の健康と評判に責任を持たなければならないわけで、心身共に自らの生き方を丸く、平穏なものにしてくれた感じだね。

ポルノは小さい業界なので、もし関係者に失礼をしたり態度が悪かったりすれば、その噂はすぐに広がる。自分の身体を危険に晒(さら)したり、不健康な生活をすることも避けるようになったんだ。そんわけで今の僕なら、セックスを断ることだってできるぐらい成長したよ。以前は、四六時中バーで女性を口説いたり、マッチングサービスのバンブル(Bumble)で女の子を見つけたりしていたのに、そこに全ての時間を費やすこともなくなったね。今思えば、「オンリーファンズ」をやる前は自分の人生をリラックスして楽しむことなんてできていなかったね。

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House of Debauchery
ハミルトンは「オンリーファンズ」で自身のページを設ける前に、スタント・コッキングとして年間20万ドル以上を稼いでいました。

セラピーを受けたら、「自分が依存症になった原因は、幼少期に人に構ってもらえなかったせいだ」って気づいたんだ。父は母がお酒をやめた途端、家から出ていったんだ。なぜかって、それはシラフの母の前では自由に行動できないし、行動しても言いくるめることはできないって気づいたからさ。

その後、母は僕たちの生活のためフルタイムで仕事をしてくれていたんで、僕たち兄弟には自由な時間がいっぱいあったんだ。でも、「尊敬」「愛」「礼儀」「良識」などに関しては、母はガイドラインを示してくれたよ。「もし私があなただったら、そんなことはしないわ」という感じで…。幼い頃から、耳元で吠えたり生き方を指図したりはしなかったんだ。

そんな僕にとって
女性と親密になることが
愛を感じる唯一の方法

女性と親密になることが、唯一「愛」を感じられる時間だったね。だから、女性たちを自分とのセックスに夢中にさせるために、もっとセックスが上手になるよう努力したよ。関係を持った女性たちの半分は僕という人間には全く興味がないようだっけど、僕自身もそれより、僕を肉体的な面から求めてくれていることに喜びを感じていたんだ。

この仕事をしていくうえでの対処法としては、自分の存在、そして行っていることをより強く意識することかな。自分が今何をしているのか? これをしっかりと意識できていれば大丈夫さ。1日に撮影が4本あったとしても、自分自身の存在を見つめる時間をちゃんとつくっておけば、それはあくまでも仕事であって純粋に快楽を求める行動ではないことを思い出させてくれるからね…。

この仕事を始める前は映画やテレビの俳優だったので、匿名という選択肢はなかったからね。その点で僕はちょっとダメなんだ。ときどき、もう一度俳優エージェントをつけて、僕に興味を持ってくれる人を増やしたいって思うんだ。でもそこで、「名声や富を得たい」なんて思っているわけじゃない。単に、興味を持ってくれる人を増やしたい…今になって、「多くの人に構ってもらいたい」って思っているのかもしれないね。

僕ははこの地球上で、必要とするものが全てを持っているって思っているよ。貧乏な環境で育ったんで、自分の好きなときに飛行機に乗ってどこでも行けるってことは最高なことさ。もしこの生活が人生最後の日まで続くのなら、僕は幸せ者だね。

Translation / Miki Chino
Edit / Minako Shitara(Esquire)
※この翻訳は抄訳です

From: Esquire US